このコーナーではお金にまつわる情報や保険の選び方などをご紹介しています。
今回は全国の自治体に広まりつつある「自転車保険」の加入義務化をテーマに、2回にわたり自転車保険の加入促進に関する条例や自転車事故がもたらす社会問題、自転車保険の加入の必要性や各種保険のチェックポイントなどについてお届けします。
第1回目は各自治体が取り組んでいる「自転車保険の加入義務化」と「自転車事故がもたらす社会問題」です。
目次
自転車保険の加入義務化への背景とは
身近な乗り物である「自転車」。通学や通勤で利用するだけではなく、趣味としてサイクリングを楽しんだり、ロードバイクやスポーツバイクなどでの高速走行を楽しんだりする方が増えています。また、最近では高齢者ドライバーによる高速道路での逆走や、アクセルとブレーキの踏み間違えが原因の建物への衝突や人身事故が連日のように各メディアで報道されています。場合によっては尊い人の命が失われてしまうことも。これを機に運転免許証の返納をした高齢者の方々が自転車を利用するようになったと耳にすることがあります。
日常生活や趣味で必要不可欠となっている自転車の利用者の増加に伴い、自転車と歩行者の衝突事故や自転車の転倒事故などの発生も増加しています。自転車の利用マナーやルールが守られないことで起こる不幸な事故が多発していることもあり、自転車の利用者に対して、全国の自治体で自転車保険への加入義務化が進んでいるようです。
国土交通省が各自治体に対して自転車保険の加入促進を進めている背景や条例の制定状況などを見ていきましょう。
いつから自転車保険の加入義務化が始まったの?
2015年10月に兵庫県が自転車保険の加入を全国の自治体で最初に義務化しました。これを皮切りに、数々の自治体で自転車保険の加入を義務化する制定する動きが出来てきました。
2019年12月末現在の条例制定状況については、国土交通省の自転車活用推進本部が発表しています。
■自転車保険の加入を義務化しているのは、6府県5政令市
※6府県=埼玉県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鹿児島県
※5政令市=さいたま市、相模原市、名古屋市、京都市、堺市
■自転車保険の加入を努力義務としているのは、10都道県3政令市
※10都道県=北海道、群馬県、千葉県、東京都、鳥取県、徳島県、香川県、愛媛県、
福岡県、熊本県
※3政令市=千葉市、静岡市、福岡市
(出典:国土交通省 自転車活用推進本部 「自転車損害賠償保険の加入促進について」)
各地の観光地では自転車で神社仏閣やカフェめぐりをしている方をよく見かけます。自転車を列車内に持ち込み、旅を楽しむという方も増えています。自転車を取り巻く環境の変化に伴い、今後も自転車保の加入を義務化する自治体が増えてくることが予想されます。
自転車事故がもたらす社会問題
兵庫県が自転車保険加入の義務化を制定したきっかけと言われているのは、2008年9月に神戸市内で発生した、当時小学生が運転していたマウンテンバイクによる事故でした。
当時小学生だった児童が帰宅時に自転車のライトを点灯させた状態で、坂道を時速20キロ~30キロで走行していたところ、散歩中だった当時60代の女性と衝突。この女性は頭蓋骨骨折で意識不明の重体だったそうです。
事故当時、この児童が自転車運転時にヘルメットを着用していなかったことで、「保護者が児童の自転車運転に対して、十分な注意や指導をしていなかったことで監督義務を怠った」と判断され、2013年の裁判で神戸地裁が児童の保護者に対して、約1億円の損害賠償を支払うよう命じました。
また、2018年4月には札幌市中央区で大学生が運転する自転車がコンビニエンスストア前にいた小学生の児童に衝突してケガを負わせました。大学生はその場を立ち去り、自転車でひき逃げをしたと判断された事件がありました。この時は防犯カメラの映像が決定的な証拠となり、事件に発展しました。
このように、自転車の運転者が起こす事件や事故によって、被害者の方だけではなく、自転車の運転者本人、更には双方の家族の人生まで変えてしまう可能性もあります。
自転車事故による経済的損失が大きいのです。
自転車保険加入の義務化の目的
各自治体が取り組み始めている自転車保険の加入義務化の目的は、万が一、自転車事故を起こしてしまった場合の「被害者の救済」や、損害賠償責任を負った場合の「加害者の経済的負担の軽減」を図ることにあります。
自転車は子どもから高齢者まで、年齢に関係なく、誰でも気軽に乗ることができる乗り物です。「もし、家族が自転車事故を起こしてしまったら・・・」ということについて、是非一度、ご家族で話し合う時間を持つことも大切かもしれませんね。
第2回目は「自転車保険の加入の必要性」や「各種保険のチェックポイント」についてお届けします。