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保険を学ぶQ&A
このコーナーでは、保険の選び方やお金にまつわる情報をお届けします。
さらに、「お金に関するネタ」や「季節のネタ」、「ちょっぴり気になる女子の疑問や悩み」について、全国の男女にアンケート調査を行った結果や解説もご紹介。あなたの「知りたい!」に答えます。このコーナーを読めば、お金や保険、ライフプランについて詳しくなれるはず。
「健康保険」「厚生年金保険」は、「雇用保険」「労災保険」も含め、いわゆる「社会保険」といいますが、自営業者等が加入する「国民健康保険」「国民年金」も合わせて、いざというときのセーフティ・ネットとして機能する社会保障制度で、国など公の機関が管理・運営しています。「健康保険」と「厚生年金保険」はセットで、法人企業はもとより一定の基準を満たした個人事業も加入しなければならないことになっていて、このような会社、事業所を「強制適用事業所」といいます。(適用基準を満たさないが任意で加入する任意適用事業所もあります。)
厚生年金の遡及加入はできますが、遡り時期の指定はできません
適用事業所に雇用されると、フルタイム勤務の場合は入社時から厚生年金と健康保険に強制的に加入します。加入、非加入を個人が選択することはできません。短時間勤務者の場合は、次の条件を満たした場合は加入しなければなりません。
1.1日又は1週間の労働時間が正社員の概ね3/4以上であること。
2.1ヶ月の労働日数が正社員の概ね3/4以上であること。
ご相談者の場合は、当初の雇用契約が夫の被扶養者の範囲の短時間勤務だったことで、上記の条件を満たしていなかったため加入していなかったわけです。その後、だんだん勤務時間数が増えたそうですが、雇用契約はどのようになっているのでしょうか?ご相談からは外れますが、労働条件を変更する場合は、雇用契約書の変更をキチンとしておくことが、トラブルの未然防止にもつながります。
さて、このように加入、非加入の基準が定められているので、個人が任意で遡り期間をきめることはできません。雇用契約書で労働条件が変更になったことが確認できれば、原則、その時に遡って加入になりますし、ご相談のように、だんだん増えたような場合で、雇用契約書がない場合は、出勤簿や賃金台帳などによる勤務実態等から、加入の時期を判断します。ただ、ご相談者のように過去のある時期から勤務時間数が徐々に増えていったような場合は、遡及加入はあまりなされていないようで、ご相談者の事業所のように、将来に向かって加入しているのが実態のようです。
遡及加入は、厚生年金保険だけ考えますと、将来の年金額増額につながりますし、保険料は事業所も半額負担してくれますので、確かに国民年金に加入しているより有利です。しかし、セットで遡及加入する健康保険では、少々面倒な手続きが生じる場合があります。
遡及期間中に国民健康保険(医療費7割)を利用していた場合は、先に返還し、新たに健康保険に請求し直すことになります
健康保険が遡及加入した期間は、国民健康保険ではなく健康保険の加入期間となりますから、その間、病気やケガで国民健康保険の保険証を使用していた場合は、国民健康保険が負担した医療費は、遡及加入した健康保険が負担することになります。健康保険と国民健康保険の間で精算してくれれば何の問題もないのですが、そうはいかず、順序としては、給付を受けた分(医療費の7割)を先に国民健康保険に全額返還して、その支払証明書をつけて、健康保険に請求し、給付を受けることになっています。
手術を受けたり、持病で定期的に薬をもらうなど医療機関のかかり方によっては、数十万円単位の返還にもなり、一時的な立替えとはいえ、なかなか厳しいものがありそうです。また、厚生年金保険・健康保険の過去の保険料を一括で支払うので、こちらも結構な負担になりそうです。もちろん、遡及加入した期間の支払い済み国民年金・国民健康保険の保険料は後から還付されますが、2,3ヶ月かかるようです。
国民健康保険を利用していた場合は、立替えのことも踏まえて、慎重に判断された方がよいでしょう。
(出典:保険クリニック「厚生年金は、過去に遡って加入することはできますか?/ファイナンシャルプランナー 守屋 三枝」、年金や相続、老後資金をFPに相談、2015年8月掲載、https://www.hoken-clinic.com/teach_qa/pension/)