自分を愛する力を育むために必要な「共感」とは?<子どもが「自分を愛する力」を育むために親ができることVol.3>

【コラム】暮らしをワンランクアップ

このコラムでは、小学生2人の子育てをしながら、学童保育施設3校舎を運営し、一人ひとりの才能を引き出し・活かすためのワークショップ、自己肯定感アッププログラム、キャリア教育プログラムを提供している赤井友美さんに伺い、子どもが「自分を愛する力」自己肯定感を育むために親ができるポイントを紹介していきます。

第1回目は「自分を肯定する感覚」自己肯定感について、
第2回目は「自己理解が大事」であること、感情の価値を認知して、感情に関わる言葉がけを変えていきましょう!ということを教えていただきました。

3回目となる今回は、子どもたちが自分を愛する力を育むため、お母さんお父さん自身が自分を愛する力のための「共感」について、教えていただきます。

第1回目のコラム:自分を愛する力って何?

第2回目のコラム:これからを生き抜くために。「自己感情の理解」が『共感力』と『想像力』を生む

 

目次

共感する

人と話をしていて「自分の気持ちがわかってもらえた!」と感じ、嬉しくなったり、安心したりしたという経験はありませんか?
「わかってもらえた!」と人が感じるのは、「共感」してもらえた時。
では、共感とはどういうことが起きていることを言うのでしょうか。

共感は、カウンセリングやコーチングなどでは「共感的理解」とも表記され、「その人そのもの」を理解することです。
評価・判断するのでなく、話し手の話を聴き、相手の行動を見ながら、相手と相手の世界観を受け取って理解し、「相手とともにいる」状態を築くことをいいます。

子どもが10代になっても20代になっても、共感的に関われることができるのは、理想的ですよね。

母と娘のふれあい

評価・判断しないとは?

共感には「評価・判断しない」がポイントです。

私たちは人と話している時、
「あー、それ分かるけど、もっと〇〇したらいいのに」と、解決方法や提案を思いついたり、
「そういう時は黙っておくのが一番なのに出来ないなんて我慢が足りないな」など相手を評価したり、
相手の話を聞きながら、様々なことを考えていることが多いのです。

例えば、電車の中で親子観察をしていると
・ぼーっと外を見ている子どもに「そんなことしてないで、本読んだら?」と言っているお母さん
・子どもが泣いていると「泣いてばっかりだとカッコ悪いよ」というお父さん

を見かけます。これも「評価・判断」しているんです。

1つ目のお母さんは「そんなことしてないで、本読んだら?」と、子どものぼーっとする世界を「そんなこと」と判断し、本を読んだら?と提案しています。

2つ目のお父さんは「泣いてばっかりだとカッコ悪いよ」と子どもの泣くという行為をカッコ悪いと評価し、泣くことをやめた方がいいよと提案・伝えています。

でも、どちらも悪気があって伝えているわけでは無いですよね。お母さんは子どもに「効率的な時間の使い方を伝えたい」と思って伝えたのかもしれませんし、お父さんは「かっこいい子の方がいいでしょ」と思っているのかもしれません。

しかしそれは、相手と相手の世界観を受け取って共感的理解しているのではなく、「効率的な時間の使い方を伝えたい」とか「かっこいい子の方がいい」という「自分の世界観・価値観を伝えているだけ」なのです。

自然の中のママと子ども

相手の価値観・世界観を尊重する

一人一人の価値観や世界観は、一人一人の体験によって、人生の中で層のように積み重なって作られていきます。私たちは生きている間、ずっと価値観を作っているといっても過言ではないでしょう。

そして、私たちは身の回りの人の価値観に大きく影響を受けています。
お母さんやお父さんに、嫌われたい、愛されたくないという子どもはいないかと思います。
子どもは、「お母さんやお父さんから伝わる世界観・価値観の通りにしたら褒められそう!愛されそう!」と思うと、自分の価値観よりもお母さんやお父さんの価値観を優先します。

例えば「一位が取れて凄かったね」とか「100点とれたね」などのように、結果を出すと褒められるという経験を持つ子は、“結果を出せる自分”になんとかしてなろうとします。

「挨拶ができない子はダメな子だ」と言われて育つと「挨拶しないのは絶対だめ!」と自分に課していき、周りに挨拶しない人がいると「あの人はダメな人だ」と判断する基準・価値観を作っていきます。

親の価値観通りにすること、は愛されることに繋がり、怒られる等の不快なものから遠ざかるからです。

ただし、結果を出すことは素晴らしいですし、挨拶した方が気持ちいい、それは事実なので、この価値観がダメなわけではありません。

ただ、「自分の価値観・世界観を尊重される」経験がないと、自分の価値観・判断軸がわからなくなってしまい、結果として、周りの価値観に合わせ自己決定しないことが日常となってしまうのです。

子どもたちは、年齢と共にリスクも考えらえるようになっていき、ますます自己決定は難しくなります。部活に入るとき、受験先を決めるとき、就職活動するとき、転職するとき、周りの価値観を優先させることが日常化していると、「周りに言われたから、友人がやっているから、周りに凄いと言われるから…」といった、他者の価値観に合わせた決定が増える=自分の価値観による自己決定度合がますます下がってしまうのです。

「自己決定度が高いほど、幸福度が高い」と言うデータも出ています。幸せになるためには、自分の価値観を意識し、自分の価値観を判断軸として考え、選択していくことができる必要があるのです。
(参考:所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査(神戸大学)
http://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html

 

日々出来る共感

上記に書いたとおり、子どもたちは私たち大人の背中を見ていますし、親の価値観を意識しがちです。

だからこそ、周りにいる大人が、
・子どもの価値観を尊重して決定できる機会をつくる
・評価判断を保留して、共感的に(共感的理解)子どもの話を聴く
・夫もしくは妻の話を共感(共感的理解)しながら聴く姿をみせる

ことが大事になります。

具体的に例を出すと
・休日に「まず病院!次は買い物」と子どもの意思を聴かずに効率的なスケジュールした気持ちをちょっとおさえて、「次のお休み、何をしたい?」と子どもの気持ちを組む、子どもが自己決定する機会を作る。

・ぼーっと外を見ている子どもがいたら、ぼーっとしてないで宿題しなさい!等を言いたくなりますが評価判断は少しストップ!
「今何が見えてるの?」「何が頭の中にあるのは何?」「へー、そうだったんだね」と子どもの世界観を受け取る。

・子どもが怒っていたら「怒らないで!」と伝えたり、「ところでさ」と話を逸らしたりする評価判断を一度保留!
「怒ってる気持ちが今心の中にあるんだね」と本人の気持ちを認めた上で「本当はどうなって欲しかった?」と怒りの感情の裏にある願いを聴きだす。
第2回の「感情の価値」も是非参考にしてみてください。)
といったことです。

ここまでお読みいただくと、「私の話も聞いてもらってないのに・・」「私ばっかり頑張らないといけない」という気持が沸いてしまった人が、きっといるかもしれませんね。

兄弟がいて保育園お迎え以降は戦場、寝かしつけをしていたら自分も寝ちゃってがっくり、ワンオペで誰にも頼れなくてしんどい……等、それどころじゃない!そんな余裕ない!!!ってありますよね。

そんな自分も愛するためにはどうしたらよいのか?
次回最終回では、そのことも含めて「自分を愛する」ことを扱います。

 

赤井友美
赤井友美
株式会社4smiles代表取締役、一般社団法人子供教育創造機構 理事.
東京都生まれ。(株)リクルートに新卒入社し、約12年間でIT部門、広報、人事などを経験。その途中、中学生向けキャリア教育プログラムを新規事業として起案・立ち上げを経験し、教育の世界に足を踏み入れる。その後、教育系NPO法人設立準備に参画し、初代理事に就任。2度の出産をきっかけに人材育成にますます興味が移り、2012年に一般社団法人子供教育創造機構を設立。翌年リクルートを退職し、東京都中央区に民間学童施設「キンダリーインターナショナル」を仲間と共に設立。
根底にある思いは「一人ひとりが自らの才能を生かして主体的に生きること」「才能の多様性が活かされる文化をコミュニティで育むこと」
現在は小学生2人の子育てをしながら、学童保育施設3校舎を運営し、一人ひとりの才能を引き出し・活かすためのワークショップ、自己肯定感アッププログラム、キャリア教育プログラムを、東京・九州・東北を行き来し、各地で提供している。
http://learningcreation.org/

■子どもが「自分を愛する力」を育むために親ができること をまとめて読む

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