優しさ・心遣いを育てる丁寧な器やお箸の扱い方<食事を通してかたちと心を整えるマナー力の磨き方 vol.2>

【コラム】暮らしをワンランクアップ

私たちは当たり前に、お味噌汁やご飯茶碗など器を持ち上げて食べますね。 でも、器を持ち上げて食べる和食の所作は、世界的に大変珍しいことをご存じですか?

何気なくとっている「食事」ですが、無意識すぎて知らないことは、まだまだたくさんあります。

「食べるために生きるのか、生きるために食べるのか。」という問いを出発点としながら、マナーアドバイザーの山木理代さんに「食事を通してかたちと心を整えるマナー力の磨き方」について教えていただくシリーズ。第1回目では、「食事の時間をほんの少しの心がけで特別な時間にするための方法」をご紹介いただきました。
第2回目となる今回は、「優しさ・心遣いを育てる丁寧な器やお箸の扱い方」について、教えていただきます。

■第1回目は、食事の時間をほんの少しの心がけで特別な時間に
■第2回目は、優しさ・心遣いを育てる丁寧な器やお箸の扱い方←この記事はこちら
第3回目は、毎日の小さな積み重ねで身に付くマナーの意識

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実は世界でも稀有な「器を持ち上げる」食事作法

洋食は器を置いたまま、ナイフ・フォーク・スプーンを動かして食べます。
同じお箸文化の中国や韓国なども、実は器は持ち上げずに食べています。

食事のしかた一つでも、こんなに大きな違いがあるのですから驚きですね。

和食イメージ
和食は器を手で持ち上げることで料理の温かさを手のひらで感じ、料理の香りを深く嗅ぐこともできます。汁物は直接口をつけて味わえますし、まさしく五感で楽しむ食事作法だと実感できます。手で持ち上げられる大きさの器は全て持ち上げることは、和食のマナーの大きなポイントです。

器を置いたまま、お箸を持っていない手を受け皿のように添えながら食べる「手皿」は、和食では決して良い所作ではありませんので気を付けたいですね。

器の扱い方ひとつにも生まれる優しさを大切に

芸術家、時に陶芸家そして美食家としても名を馳せた北大路魯山人をご存じですか?

魯山人は「食器は料理の着物」という言葉を残されています。 和食は目で食べるともいわれますし、さすが見事な表現力! 家庭ではたくさんの器を所有できませんが、お気に入りの器に盛りつけると美しさを醸し出してくれて料理上手になった気分になりませんか?

和食器は素材も漆器や陶器や磁器、ガラスなどバラエティーに富んでいます。 形も丸や四角に八角形など様々。また、釉(うわぐすり)の色合いや絵付けなどに美意識や季節を感じ、趣の深さが加わってお料理がグンと美味しくなる気がします。 直接口をつける汁物は、温もりを感じられる漆器を。ご飯茶碗はアツアツを感じられる陶磁器。夏は涼やかに見えるガラスの器……と料理の特性や季節感で使い方も様々。

料理はもちろん器同士の組み合わせからは「調和」を生み出していて、日本人の「和」にも通じる世界観も感じられます。 是非「器を持ち上げる時は丁寧に。置く時には静かに。」を意識してみましょう。 秘訣は、親指を器の縁に添え、他の指でしっかり器の底を支えて持つことです。 器を置く時は、底を支えている指からそっとスライドさせるようにすると静かです。 必要以上に音が立ちませんし、丁寧なしぐさが生まれます。 日頃の立ち居振る舞いへの意識にも必ず通じることですので、意識しない手はありません。

「3㎝」を意識することで食べやすく美しい箸遣いに

手毬寿司
時折「話をしながらでも食べ方が美しく、他の方と同じペースで終えられるようになるためにはどうしたらいいですか?」このような質問をいただくことがあります。 そのための秘訣は「一口の量を意識する」という点です。

簡単すぎるでしょうか?

早く食べようと一度に口に多く詰め込んでしまうと、咀嚼するのに必死。 時には、口いっぱいに頬張るのは幸せを感じることもありますが、それよりも、3㎝を目安に食材を割ってから口に運ぶようにしてみましょう。咀嚼もスムーズで、ゆっくり味わうこともできます。 一口が小さいと早く飲み込めるので、話をする余裕も生まれます。 ところで、箸遣いの作法に「箸先五分、長くて一寸」という言葉があります。 一寸は約3㎝程度。箸先を汚してよいのは1.5㎝~3㎝、という事を表現しています。 一口分一寸を意識すると、箸先をあまり汚さず綺麗に使い続けられて、美しく食べ進められますから是非実践してみて下さい。

和食の場合、食材を一口大に切って調理されていることが多く、その繊細な心配りもさすがだなぁと気付かされます。 洋食でも一口3㎝を意識するとスマートに食べられるのでお勧めです。 マナーは美しく食べるコツでもあり、決して難しいことではありません。

箸先を遊ばせないことが箸遣いの鉄則

お箸についてお話していますが、たった2本の棒を片手に持ち動かして食べるってとても器用なことをしているな、と改めて思いませんか?

ただ、お箸づかいに苦戦する方も多いと思います。 お箸を美しく使うために「お箸を遊ばせない」ように心がけることも大切です。 それは、食事中についお話に夢中になり、手に持ったまま箸先をあちらこちらに振り回してしまう……  これは「指し箸」と言われお箸の禁じ手の一つで、箸先を人に向けてしまうと、お相手に不快感を与えてしまいますから要注意です。

このようにお箸を遊ばせないようにするためには、

① お箸を使わない時には、箸置きの上に置く
② お箸から一口口に運んだら、利き手と反対の手指で箸先より少し上を下から支え抑える

この2点を癖にすると、箸を不用意に遊ばせることが無くなります。 お箸は毎日使うからこそ、癖が付くといざという時にも出てしまう恐ろしさもあります。 だからこそ、ただ「使う」のではなく、大切に心を込めて「遣う」ように心がけませんか? まずは、この気持ちを持つことから美しい食べ方は身に付けられます。

お箸と器のイメージ
山木理
マナーアドバイザー。大学卒業後、都内企業数社にて秘書として勤務。 社外活動で経済界・財界の勉強会等の接遇を経験し、出逢いの中で「感謝の心を表し、謙虚な姿勢であること」「丁寧な暮らしで心を満たす生き方」が心からのマナーに繋がることを学ぶ。 マナーの魅力に惹き込まれ2008年よりマナー講師として活動をスタート。 都内スクールにて各種マナー講座やマナー講師養成に携わる。 2013年より「サロン・ド・エサンシエル」を主宰。 本質をモットーとしたレッスンは全国から受講生が訪れていて、リピート率は92%。 企業研修、大学講義、マナーコラム執筆や取材・監修等多岐に渡りマナーをお伝えしている。
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