仕事と生活の境を曖昧にしたライフスタイルに挑戦できる人生を/野田武志さん(事業開発プロデューサー)

輝く人の生き方とは?

千葉県にお住まいで事業開発プロデューサーとしてご活躍中の野田武志さん。野田さんが、毎日イキイキと暮らしている秘訣は何でしょうか。今夢中になっていること、おすすめのストレス解消法、健康のために意識していることなどを伺いました。

野田 武志(のだたけし)さん

事業開発プロデューサー
千葉県在住。
妻、長男14歳、次男11歳、三男3歳の5人家族。
株式会社みんなのごはん https://www.minnanogohan.com/

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「タンパク供給源のシフト」必要性への気づき

10年前ぐらいまでは世の中の会社がたくさん儲かることで社会や自分が豊かになると考え、ワーカーホリックに家族も犠牲にしながら、経営コンサルタントの仕事に邁進していました。しかし、単なる利益拡大と社会・人の幸福には相関関係がないことに疑問を感じ、方針を転換しました。

多くの人は「食べるために仕事をしている」と答えます。もし、仕事をしなくても生活できる社会を作ることができたなら、社会や人は自分に与えられた時間を大切に過ごすことができるのではないか。欲しい日常は誰かに依存せず、自分たちで作っていこう。そのような思いで仕事内容を「食べる」をテーマとし、「新たな事業を創る」ことへ注力していきました。

近い将来、直面するであろう食の課題は、「タンパク供給源のシフト」です。地球上の人たち全員が肉や魚を中心とする先進国と同じ食生活をしようとすると、地球が何個分も必要になります。そこで、世界的に健康な体に必要なタンパク源を動物性から植物性へシフトしていく流れがあり、動物性の食事をとらないベジタリアンやビーガンと呼ばれるライフスタイルが注目を集めています。食に取り組むにあたって、まずはこのベジタリアン・ビーガンの普及に活躍している株式会社みんなのごはんに経営参画することになりました。

生産現場にある課題を発見、そしてインフラを再編集

多くの加工食品や飲食店の開発に取り組む中で、野菜を作っている生産現場に課題があることがわかってきました。本来は美味しく食べられるものなのにもかかわらず、形が悪かったり、少し傷が入っていたりという理由だけで捨てられている野菜が膨大にあります。これらが農家・生産者を苦しめ、担い手が減っていく原因となっています。「このままでは食べ物を作ってくれる人がいなくなってしまう!」という危機感をもっていたところ、みんなのごはん社での仕事ぶりを評価してくれた一般社団法人野菜がつくる未来のカタチ(通称チバベジ)から声がかかり、経営参画することになりました。通常捨てられてしまう規格外品を企画品と同じ値段で買い取り、消費者に届けるプロジェクトに取り組んでいます。

さらに、加工・調理、原材料生産と二つの会社での取り組みを通じてわかってきたこと、食の大きな課題は「物流」でした。スーパーで並んでいる野菜も、加工食品や飲食店で調理された商品も、実は物流コストが大きな割合を占めており、価格が下がらない要因となっています。食べるに困らない社会を作るためには「物流改革」が必要だと感じていたところ、これまた上記2社での働きぶりを評価してくださった小湊鐵道株式会社から声がかかり、事業開発総合プロデューサーとして、野菜と人を一緒に運ぶ貨客混載事業の開発など、交通インフラを再編集する仕事に取り組んでいます。

「教育」をテーマにした事業にも積極的に

また、食以外にも、我が家での子育て経験から「教育」をテーマにした事業にも取り組んでいますし、「全ては戦争の無い平和な世界があってこそ」ということで、国際NGOの事務局長なども務めています。

何屋さんかわからないと言われることもありますが、一見バラバラなように見える仕事も、僕としては素直に「欲しい未来を作る仕事」をしているにすぎません。少しでも多くの人が、「自分の欲しい未来を作る仕事」に取り組んでくれたら、社会や人は豊かになっていくのではないかと思います。

野田武志さん

 

楽しい農業

今、面白いのは農作業しているときです。田んぼで約3反歩、畑で約1反歩を借りて、仲間たちと一緒に米や野菜作りをしています。週末だけの“なんちゃって農家”ですが、手作りの米や野菜は愛おしく、格別に美味しいです。また、食べる楽しみだけでなく、農作業を通じて自然との繋がりを取り戻せるような気がしています。日頃、人工物に囲まれた中で生活していると失いがちな欠乏感を、土に向かい、野菜を育てるという自然との共同作業によって、エネルギーが湧いてくるというか、重心が下がって「地に足がつく」感じがしますね。まさに心身が整います。僕にとってサウナみたいなものですね。

そもそものきっかけは、10年ほど前に友人から勧められた稲刈りイベントです。これが土と向き合うきっかけとなりました。長男が小さかったこともあり、息子に自然体験をさせたい思いから田んぼに通い始めて、気がつけば子どもそっちのけで僕がハマっていました。ご縁あって今お世話になっている千葉県多古町の農家さんと知り合い、コロナ前は田植え・稲刈りイベントを自主企画、毎年大人・子ども合わせて100名近くの方に参加いただき、一緒に自然体験を満喫しました。コロナになってから開催できていないので、早く皆んなと楽しみたいです。

野田武志さん田植え 野田武志さん集合写真

そんな中で、とりわけ私が心がけているのは、一人で自己完結しないようにということです。職業農家は効率重視なので一人でやった方が都合良いことも多いようですが、僕たちは仕事ではなく生活の延長にある農として取り組んでいるので、皆んなでやることに気を配っています。プロセスを分かち合うことで、苦労は半分になるし、喜びは倍になります。血は繋がっていないけれども、家族みたいなものですね。時には相反する各々の考え方・価値観を尊重しながらも、バラバラにならないように一体性を作っていくことを自分の成長機会ととらえて挑戦しています。

ストレス発散にもなっている農作業

農作業そのものがストレス解消、リラックスに繋がっています。時には裸足で土に触れることで、蓄積されたストレスが放電されていくかのような気持ちになります。目を瞑ると、自ずと風を感じられ、四季折々の草木の香りが漂い、小鳥のさえずりに耳を澄ませていると、あっという間に時間が過ぎています。その後の爽快感はたまりませんね。それでも疲れが取れないときは、近くの温泉で身体を温めています。そうして田舎の家で一晩過ごすと元気いっぱい、翌週に向けての準備が完全に整います!

野田武志さん親子

「穏やかな心」であること。これが健康のためにも、仕事の質のためにも、そして家族や友人関係のためにも最優先すべきこととして意識的に努めています。仕事中など興奮しているときには難しいことも多いのですが、そういうときこそ、呼吸を深くして重心を下げ、足裏で大地を感じるようにしています。落ち着けようと意識するだけではざわつく心も、穏やかにする身体動作をとれば、自ずと沈静化していきます。静寂の中でぐっと集中力が高まっていく自分を感じます。「病は気から」といいますが、心の健康を保つことが健康への第一歩だと思います。

 

仕事と趣味の境界線を感じないライフスタイルを…

「欲しい暮らしは自分で作る」の次のテーマは【DIY】。「食べる」の次は、「住む」環境への挑戦です。まずは手始めに、在宅ワークで滞在時間の増えた勉強・仕事部屋に作り付けの棚を設置する準備に入っています。友人の大工からお古の大工道具を譲ってもらったり、日夜Youtubeを見て研究したり。11歳の次男と一緒に作ってみる予定です。勉強や習い事も大切だと思いますが、こうして「暮らし」を「自分の手で作ることができる」実感がもてると、自ずと自己存在への信頼が増し、自らを世界へ開いていく契機となるのではないかと考えています。ゆくゆくは、古民家を丸ごとリノベーションしてみたいです。

末っ子が40歳を過ぎて生まれたので、僕が還暦のときにはまだ未成年です。人生100年時代といわれますが、80歳ぐらいまでは現役で仕事を続けていきたいです。仕事と「欲しい未来」がリンクしているので、早くリタイヤしたいとか、そういった考えは出てこないですね。どちらかと言えば、死ぬまで仕事をしていたい。でも、老害になっては迷惑なだけですから、80歳になっても老害と言われない人間であれるようにスキルも人間力も常に育てていきたいです。また、近い将来、もう少し奥まった田舎に引っ越して、仕事と生活の境を曖昧にしたライフスタイルに挑戦したいと考えています。

野田武志さん
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