“信頼される社会人になるためのコミュニケーションマナー”について、3回にわたってコミュニケーションコーチの鈴木祥子さんに伝授いただくシリーズの最終回。第1回目は「“マナー”を身に付けていると、どのような効果があるのか?」について、第2回目は「第一印象をよくするための具体的な方法」について教えていただきました。
最終回となる今回は、第1回目の内容を深掘りする形で、コミュニケーションマナーを身に付けた場合にもたらされる、“安全に業務を遂行できる”という効果について教えていただきます。
目次
人間関係構築のために、身の回りを整えることの必須性
身の回りを整えることは、人間関係を構築するためにも不可欠です。
そもそも“身の回りを整える”ということは、整理整頓=片づけることから始まります。 片づけることによって生まれる効果も実は5つもあります。
① 身体的効果、② 精神的効果、③ 経済的効果、④ 時間的効果、⑤ 人間関係的効果です。
この中でも、コミュニケーションマナーと最も関係してくるのが、④時間的効果と⑤人関係的効果です。
時間的効果
まずは時間的効果。
いざ、出かけようとした時、“あれ? 鍵がない!”“あれ? 携帯電話がない!”などと焦った経験はありませんか? 整理整頓が滞ると必ず出てくるのが探し物です。これらを探すために、時間を割いていると出かける時間が遅くなり、人との約束に遅れる可能性があります。また、ビジネスシーンでは、デスク周りが片づいていないと、安全に業務が遂行できなかったり、仕事の効率も悪くなります。
1日5分の探し物が、1ヶ月で2時間半のロスタイムになります。2時間ドラマが1本見られるほどです。すぐに見つかればいいですが、“失くしたままだったらどうしよう“などと、くよくよ考えながら1日過ごすことになるなんて精神衛生上にもよくないですよね。
人間関係的効果
次に、人間関係的効果です。人にモノを貸したり、借りたりすることもあると思うのですが、身の回りが整っていなければ、返さなくてはいけない時に返せません。また、部屋の中が散らかっている状況では、お客様も呼べませんよね。良好な人間関係を構築するためにも、身の回りを整えることがいかに大切かお分かりいただけたかと思います。
人間関係構築のための整理整頓の具体的手法
では、具体的にどうやって整理整頓すればいいのか?
収納するためのグッズを先に用意するのではなく、まずモノを減らすことから始めましょう。
基本は全出しです。例えば、引出しひとつ整理する時、“これは要る、これは要らない”と引出しから直接間引きするのではなく、引出しの中身を一旦全部出します。
そこから、ブルーシートなどを4つに区切り、“いる”“いらない”“迷い”“移動”に分けます。いるものは、まさしく今使っているものと考えます。いらないものは、現在使っておらず、将来的にも使う目的が明確でないものと分別します。“もしかしたら使うかもしれない”と使うかどうか不明瞭なものも“いらない”に分類しましょう。
いるかいらないか迷った時は、8秒考えてから“迷い”に分類し、別の箱や袋に入れて6ケ月間保管します。その箱や袋には6ケ月後の年月日を書いておきましょう。そして、6ケ月経ってその中身を覗いた時に、“どうしてこれを残しておいたのだろう?”と思えば、その時点で手放せばいいわけです。手放す際に迷った時は、時間が解決してくれる“迷い”の分類をぜひ試してみてくださいね。
最後に“移動”ですが、これはいわゆる一時置きと考えてください。
整理していた引出しの中に入っているべきでないもの、別の場所で使うものが混入していた場合は、一時的に“移動”に分類しておき、引出しの整理が終わった後にあるべき場所に戻します。 こうして“いる”に分類したものだけを元の引出しに戻します。 いきなり大きなスペースから片づけようとすると疲れてしまうので、小さな引出しなどで成功体験を積んでから大きなスペースに取り掛かりましょう。
また、動線を考えたり、使う目的や頻度などに合わせてグループ分けしておくと便利です。 グループ分けしたものにラベリングをして、所定の位置を決め、他の人と共有しておくと自分だけでなく、その環境にいる皆が使いやすくなりますね。
身の回りが整っていると、それだけでも“デキル人”と感じてもらいやすいですし、“この人と一緒に仕事がしたい!任せてみたい!”と思ってもらえるチャンスです。
ビジネスにおいても、日常生活の中でも、コミュニケーションは必要不可欠です。そのために、身だしなみを整えたり、表情や言葉遣いに気をつけてみたり、身の回りを整理整頓して、“この人だから繋がっていたい”“この人だから仕事を任せてみたい”と思ってもらえる社会人になりたいですね。
マナーについて、ついつい忘れてしまいがちなことや長年の習慣になっていることを見直してみるきっかけになれば幸いです。コミュニケーションマナーを磨いて、人と関わることを楽しみ、仕事も日常生活ももっともっと充実させていきたいですね。
鈴木 祥子
lotusroot代表。大学卒業後、キッチンメーカーのショールームアドバイザーとして勤務。入社4年目にして全国のショールームリーダーに最年少で抜擢され、接客マナーやコミュニケーションマナーを徹底的に習得する。6年間のショールーム在籍中に1万組以上のお客様の接客にあたるとともに、後輩アドバイザーの教育を担当。販売促進課異動後も、企業様向けに研修を担当し、売上UPに貢献。出産後、同メーカーを退社し、lotusrootを立ち上げ。パン、和菓子、生前整理等の講師活動を経る中で“第一印象の重要性”を再認識、原点に戻り、コミュニケーションマナーやビジネスマナー講師として活動している。コミュニケーションコーチ、生前整理アドバイザー認定指導員、整理収納アドバイザー1級。