春は引っ越しの季節。
新しい生活をスタートするタイミングは、暮らし自体を見直すいいチャンスです。
今回は、引っ越しから実際に新生活をはじめるまでに、家計で意識しておきたいことをご紹介します。
目次
引っ越しは早めの事前チェックが成功のカギ!
新生活をスタートする前に避けて通れないのが引っ越しです。
費用の面でも手間の面でも負担の大きい引っ越しだからこそ、早め早めのスケジュールが功を奏します。
引っ越し費用の負担は会社?それとも個人?
転勤による引っ越しの場合、会社が引っ越し費用を負担してくれる場合が多いのではないでしょうか。
その場合、
- 荷造りや荷ほどきまで引っ越し業者にお願いした場合の費用
- エアコンの取り外し、取り付け費用
- 引っ越し先までの交通費
- 自家用車の運搬費用
- 家族が後から引っ越してくる場合の費用
など、会社の負担範囲がどこまでなのかを事前にこまかく確認しておきましょう。
繁忙期は何はともあれまず見積りを!
進学・就職・転勤など、引っ越しはどうしても3月・4月に集中します。
繁忙期である春、特に3月後半に引っ越しを予定している場合は、注意が必要です。
「引っ越し難民」という言葉をご存じでしょうか。
引っ越し費用が高額過ぎたり、空いている引っ越し業者が見つからなかったりすることで、希望した日に引っ越しができないケースが増え、社会問題にもなっています。
実際、筆者も繁忙期に引っ越しをした時には、12月末に訪問見積りを予約し、1月に訪問見積りを受けた時点で、すでに3月末は予約がいっぱいだと断られた経験があります。
なかには1月にならないと見積り訪問できない、という引っ越し業者もありましたが、引っ越すことが早めに分かっているのであれば、可能な限り早い時期に見積りをしてもらいましょう
また、繁忙期は、引っ越し業者によって価格差がより大きくなる時期でもあります。
何度も訪問見積りを受けるのは負担に感じるかもしれませんが、訪問日を同じ日にまとめるなどして負担を減らしつつ、できるだけ選択肢を増やした方がいいかもしれません。
引っ越しまで時間がない場合は、とにかくすぐに引っ越し業者に連絡を入れて訪問見積りの予約を取りましょう。
見積り前に“譲れない条件”を具体化しておく
3月・4月に引っ越しをする場合、通常月の2~3倍といった高額の見積を目にすることもあります。
ついつい、「少しでも安くなるのなら・・・・・・」と無理がある日程で引っ越しを決めてしまいがちです。
実際、引越会社にも2月中旬や4月中旬に引っ越し時期をずらすことを提案されることもあります。
自分が移動する時期を変えられない場合、先に、もしくは後から家財を新居へ送ることになります。
見積り前の冷静なときに、「冷蔵庫や洗濯機のない生活をどれくらいなら続けられるのか?」をイメージしておきましょう。
引っ越し前後のスケジュールと照らし合わせながら、何も家財がないなかでの生活をシミュレーションしておくことで、「暮らせるのは●日間」という具体的な目安ができるはずです。
また、平日の引っ越しは可能か?引っ越し時間の指定をしないフリー便は可能か?など、自分たちの譲れる条件、譲れない条件を家族で話し合い、明確にしておきましょう。
条件が具体的になっていないことで、決定を先延ばしにすると、その間にも予約枠は埋まってしまいます。
自分たちが納得できる、無理のない引っ越しをするためにも、訪問見積りの予約が取れたら、訪問日までに条件を具体化する時間をもつことをオススメします。
引っ越しにおける想定外の出費に備えるために計画を
予算を決めておくと取捨選択がしやすい
引っ越し費用自体もそうですが、自分ではコントロールしにいくい想定外の出費が多いのも引っ越しです。
だからこそ、大枠で引っ越しにかけられる予算を事前に設定しておきましょう。
予算という“枠”があることは一見窮屈に感じそうですが、“枠”があることで、「その枠内であれば使っても大丈夫」という安心感にも繋がります。
また、“枠”があることで、何にお金をかけるかの取捨選択がしやすくなります。
たとえば、引っ越し費用が予定よりもかさんでしまった場合、新居をより暮らしやすくするための費用はまた次の機会に回す、という判断も無理なくできます。
予定している支出をリストアップして、「すぐに必要なもの」と「あとでもいいもの」とに分けておくと、より判断がしやすくなります。
環境が変わる時は精神的に不安になりがちだからこそ、お金の不安は極力減らせるように、予算を決めておきましょう。
こんな出費も!忘れがちな引っ越しにかかる費用とは
通常、引っ越しは頻繁に経験するものではないので、引っ越し時にどんな出費があるのかを事前にしっかり把握することは難しいかもしれません。
そんな想定外の出費の例をいくつかご紹介します。
家具、家電の処分費用
引っ越しを機に家具や家電を処分することもあるでしょう。
引っ越し業者の提携先で処分を依頼すると、処分費用が高額になることもあります。
- 大型ゴミに出す
- 訪問見積りをしてくれるリサイクルショップに依頼する
- 必要な人にゆずる
など、手放す方法はいろいろありますが、引っ越しまでの期間が短くなると、選択肢も少なくなります。
引っ越しが決まったら、すぐに手放す必要があるものを確認して、手放す方法を検討しましょう。
大型の家具・家電の場合、引っ越しの見積りにも影響を及ぼす場合もあるので、できれば見積り訪問日を目処に処分できるといいでしょう。
それが無理な場合は、処分するものには印をつけて、見積り時にもわかりやすくしておきましょう。
エアコン取り外し、取り付け
引っ越し費用が会社負担の場合でも、エアコンの取り外し・取り付け費用は自己負担の場合もあります。
筆者の場合、取り外しに5,000円/台(税抜)、取り付けに20,000円/台(税抜)かかりました。
家族での引っ越しの場合は、エアコンが数台あることも多いので、大きな出費となります。
地震対策グッズ
旧居と新居では、天井高や家具の置き方が変わることで、これまで使っていた地震対策グッズを使い回すことができないこともあります。
カーテン
こちらも天井高や間取りが変わることで、発生する費用です。
カーテンが必要な箇所、サイズを引っ越し前に確認しておくといいですね。
お礼やご挨拶の品
旧居でお世話になった人や新居のご近所の方へ挨拶をするときに、お菓子などをお渡しすることもあるのではないでしょうか。
必ず必要な費用ではありませんが、何か気持ちをお渡ししたいと考えている場合は、かかる費用を想定しておきましょう。
新生活に慣れるまでは支出多めを覚悟
引っ越し後の片づけや慣れない環境での生活は思いの外疲れます。ついつい外食やできあいのものを買うことも一時定期に増えるかもしれません。
また、使えると思っていたものが新居で使えずに生活用品を買い直すこともあるでしょう。
引っ越し前後は、普段の生活費にもイレギュラーな出費が多くなることを想定しておきましょう。
特に、引っ越し後1~2カ月は普段の生活費にプラスして準備しておくことで、気持ちにもゆとりが持てるのではないでしょうか。
引っ越しの記録を残して次回に備える
もし、転勤が多いご家庭など、数年以内にまた引っ越す予定があるのなら、今回の経験を忘れずに記録して、次回に活かしましょう。
3つの視点から記録しておくといいでしょう。
行動を記録する
- いつ、引っ越し業者に見積りを依頼したか
- いつ、見積り訪問に来てもらったか
- 引っ越し当日の動き
- 開梱にどれくらいの時間がかかったか
など、引っ越しに関する一連の流れを記録しておくと、次回引っ越しがきまったときにもスムーズに動けます。改善点があれば、あわせて記録しておきましょう。
出費を記録する
引っ越しにかかった費用など、お金に関する記録も大切です。
手帳やスマートフォンにメモをしておくだけでも立派な記録になります。
次回引っ越し時の見積りでも比較することができるし、より現実的な予算を立てやすくなります。
「あったらよかった!」を記録する
実際に引っ越しをしたからこそ準備しておけばよかったと思うモノも出てくるはずです。
筆者の場合、こんなものを記録していました。
簡易クーラーボックス
引っ越し作業がはじまると外出が難しくなるので、その間に自分たちが飲むものや引っ越し業者に渡す飲みものを一時保管しておくためのもの。
付箋やメッセージカード
鍵や書類などの返却物やプレゼントにひと言添えるためのもの。
古タオル
引っ越し作業時に家具の搬出の際に裏側についた埃を取ったり、冷蔵庫や掃除機を移動する際に出る水を拭き取ったりするのはもちろん、長い待ち時間に床など気になる場所を拭き掃除するためのもの。
「困ったことは覚えているはず!」と思っても、時が経つと案外私たちは忘れてしまうものです。ちょっとしたメモが未来の自分を助けてくれるかもしれません。
メインバンクも一緒にお引っ越し
生活圏が変われば便利な銀行も変わる
「メインバンクを変えるなんて、面倒くさい!」そう感じるかもしれません。
けれど、引っ越したことで、行動範囲内にメインバンクの支店がなくなってしまったのであれば、メインバンクの引っ越しも考えた方がいいかもしれません。
今はネット銀行や、紙の通帳ではなくインターネット上で入出金明細を確認できるサービスも普及しました。電子決済の利用も広がるなかで、銀行へ立ち寄る機会は少なくなっている方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、月に1~2回だとしても、行動範囲外にわざわざ出掛けるのはやはり面倒なものです。
面倒くささが勝ってしまい、コンビニで現金を引き出し、払う必要のない手数料を毎回払うのももったいないですよね。
引っ越しをして環境が変わったのであれば、行動範囲内に支店のある銀行をメインバンクにするか、コンビニATMの利用手数料が無料になるネット銀行などをメインバンクにするのも一つの手です。
メインバンクを変えるのは確かに多少の手間はかかりますが、一度の頑張りで、快適さは大幅にアップするはずです。
手持ちの銀行口座を整理する
わざわざ新しい口座を開設しなくても、今は使っていない手持ちの銀行口座をメインバンクにすればいい場合もあります。せっかくなので、これを機に、手持ちの銀行口座の確認をしてみましょう。
STEP1:手持ちの銀行口座の通帳を集める
今は使っていないものを含めて全て集めます。
STEP2:お金の出入りを把握する
その口座に入金があるもの、その口座から引き落とされるものを付箋に書いて、通帳に貼ります。ネット銀行など、通帳がない口座は大きな付箋を通帳代わりにします。
通帳の過去1年分の明細を確認することで、出入金はだいたい漏れなくチェックできるはずです。
付箋を通帳に貼ってわかりやすくしておくことで、クレジットカードの引落口座の変更など、必要な手続きの漏れを防ぐこともできます。変更できたものから付箋を移動すれば、手続きの進捗管理もできます。
STEP3:口座の目的を確認する
個々の口座の使い方がわかったら、口座の目的や口座間のお金の流れを書き出します。
自分が理解でればいいので、手書きで簡単に書くだけで十分です。書き出すことで、必要のないお金の移動や自分がストレスに感じるポイントが見えてきます。
たとえば、銀行間のお金の移動が多い場合は、「自動振込サービス」を無料で利用できる銀行をメインバンクにするといいでしょう。
また、貯蓄する目的別に口座をわけているのであれば、1つの口座の中でわけて目的別にわけられる「目的別口座」サービスの利用を考えてみるといいでしょう。
どうせメインバンクを変えるという手間をかけるのなら、よりラクに、より便利になるように、自分に合う銀行口座をメインバンクにしましょう。
口座を複数持つということは、それだけ管理も繁雑になり、負担感も増します。不要になった口座は、やる気が残っているうちにしっかり解約まで済ませることで、より一層スッキリするはずです。
放置していると、知らずにお金を失うことも
2018年に「休眠預金等活用法」が施行されました。
2009年1月1日以降の取引から10年以上、その後の入出金などの取引(異動)のない預金など(休眠預金など)は、民間公益活動に活用されることになりました。
ただし、休眠預金になったからといって自分のお金が使えなくなるわけではなく、手続きをすれば、引き出すことは可能です。
休眠預金の対象となる場合、郵送やメールで金融機関から通知されます。ただ、預金残高が1万円未満だと休眠預金の対象となる旨の通知はありません。
自分が口座の存在を忘れてしまうと、残っているお金を引き出す機会も失ってしまいます。
また、「休眠預金等活用法」とは別に、口座維持手数料を導入する動きが出てきおり、すでに導入済みの銀行もあります。
預金口座をしっかり管理することが自分のお金を守ることにもつながるので、引っ越しの機会に銀行口座を見直してみるのもいいのではないでしょうか。
引っ越しで、環境が変われば必要なものも変わる
家計バランスを見直す
引っ越しをするということは、住まいにかかる費用が変わるということです。
費用が増えるのであれば、それをどう補填するのか?逆に、費用が減るのであれば、浮いたお金をどうするのか?を考える必要があります。
特に、費用が減る場合は、このタイミングで貯蓄する仕組みを作っておかなければ、すぐに“なかったもの”になってしまうので、要注意です。
また、賃貸から持ち家、マンションから一軒家など、住まいの種類が変わる場合は、これまでに必要なかった税金や修繕費用などの費用がかかる場合もあります。
引っ越し後は何かとバタバタしますが、なるべく早い段階で新生活の家計バランスを整えられるように、家計を見直す時間を取るようにしたいものです。
これまでの当たり前を見直す
ライフスタイルが変化することで、これまで便利に活用していたものが、不要になることもあります。
例えば、
- スポーツジムに通っていたけれど、通勤でたくさん歩くようになった
- 食材の宅配サービスを使っていたけれど、新居の近くにスーパーがある
- 動画配信サービスを利用していたが、仕事が忙しくなり見なくなった
といった変化もあるのではないでしょうか。
定期購読や月額課金サービスは、一度契約すると、自動的にお金が支払われることが多いので、支出の感覚が薄れてしまいがちです。
だからこそ、引っ越しのタイミングで、「これからの自分にとっても本当に必要なものなのか?」を改めて考えてみることが必要です。
火災保険を見直す
引っ越しの手続きで忘れがちなのが火災保険です。
火災保険はほかの保険と違って、単純に「住所変更をすればいい」という訳ではありません
引っ越しをすると、所在地や建物の構造・延べ床面積等が変わるので、それに伴い保険料も変わります。そのため、引っ越し前に加入していた火災保険の契約を引き継ぐ場合にも、保険料の再計算が必要になります。
再計算の結果、保険料に不足分があれば追加で支払い、余剰分があれば保険料は返還されます。
旧居と新居の居住形態(賃貸or持ち家)が異なる場合、基本的には、加入していた火災保険は解約して、改めて加入し直すことになります。
解約した場合は、残りの契約期間に応じて解約返戻金があります。ただし、残りの契約期間が1カ月未満の場合は、解約返戻金がない場合もあります。
普段あまり意識していないものなので、つい忘れがちだからこそ、ToDoリストにしっかりと入れておいてくださいね。
引っ越しは大変な作業も多いし、新しい環境に慣れるかの不安もあります。けれど、大きく環境が変わるときは、暮らし全体を見直すいい機会でもあります。
新生活を気持ちよくスタートさせるためにも、この機会を活用して、家計を見直し、よりご自身に合った暮らしを手に入れてくださいね。
AFP/2級FP技能士/メンタルオーガナイザー
20代前半での父親の看取り介護を機に、“お金”と“心”の整え方を学ぶ。
現在は、お金のことが苦手だった自身の経験をもとに、子育て中の母目線での執筆活動や、働きたい女性に向けて家計管理の仕組みづくりのサポート、マネー講座の講師業を行っている。
ラーゴムデザイン 代表
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