「感情的にならない子育て」が必要な理由【日本の現状】<感情的にならない子育て vol.1>

【コラム】暮らしをワンランクアップ

悲しいニュースのひとつに、児童虐待があります。現代社会が抱える大きな問題です。
子育てを放棄してしまうケースもありますが、逆に一生懸命になりすぎるあまりに…という場合もあり、子育て世代にとっては決して他人事ではない問題です。育児書通りにはいかない子育て、思い描いていた理想と現実とのギャップに悩み苦しんでしまう親たちも少なくありません。親も人間ですから、感情的になってしまうことだってあります。

そこで、今回から3回にわたって、子育てアドバイザーの高祖常子さんに「感情的にならない子育て」のコツなどを教えていただきます。第1回目となる今回は感情的にならない子育て」がなぜ必要なのか?日本の現状について教えていただきます。

■第1回目 「感情的にならない子育て」がなぜ必要なのか?日本の現状について ←この記事はこちら
■第2回目 子どもを育む~子どもとの向き合い方のコツ~
■第3回目 感情的にならない、親自身の心と生活の整え方

 

新型コロナで入院
新型コロナで入院

2020年4月「子どもへの体罰禁止」がスタートしたことを知っていますか?

2020年4月から児童福祉法などが改正され、「子どもへの体罰禁止」が法律で明記されたということを知っていますか。なぜ、法律に明記されたのか、なぜ必要なのかを解説します。

指を差す女性

子どもへの体罰が法的禁止になったことを知らない方も、まだまだ多いのではと思います。法的禁止のスタートが、まさにコロナ真っ只中。厚生労働省が主管の法律ですから、コロナの最前線で対応していた厚生労働省から、強いメッセージが出せなかったというところも大きいでしょう。

そもそもなぜ「子どもへの体罰」が法律で禁止されたかと言うと、これは2018年3月に東京都目黒区で5歳の女の子の虐待死(ひらがなの反省文というと思い出してくださる方も多いと思います)と、2019年1月に千葉県野田市の10歳の女の子の虐待死(先生にアンケートで父親からの暴力を訴えたが助けられなかった)が起こったことも大きく関係しています。

この2つのケースに限らず、日本では児童相談所虐待対応件数が年々増加しています。そして、虐待死で亡くなる子どもたちは厚生労働省の調べだと毎年70人くらいいるのです。

虐待死の加害者は実父母が約9割を占めており、その多くが「泣き止まない」「しつけのため」ということで暴力をふるい、子どもを死に追いやってしまっています。また、体罰でなくても、暴言によって子どもの心が傷ついているケースもたくさんあります。

要は、「子どもは、言うことを聞かない時に叩かれたり、怒鳴られたりすることが当たり前」という考え方が、子どもの命を奪ってしまうことにつながっているのです。

泣いてる男の子

今までも、子どもへの体罰の法的禁止を仲間と訴えてきましたが、政府はなかなか動いてくれませんでした。そんな中、前述の2人の虐待死が起こったのです。これを機に、2019年2月に体罰禁止を求める署名サイト「虐待死をなくしたい!子どもへの体罰・暴力の法的禁止を求めます!」を立ち上げ、関係各所に意見書を持参しました。

たくさんの関係者が動いて下さり、約2万筆の署名も後押しになり、2019年6月に国会において満場一致可決し、2020年4月から子どもへの体罰の法的禁止がスタートしました。

日本も世界で59番目の体罰禁止国に!

子どもへの体罰禁止のスタートに向けて、「体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に」というガイドラインが作成されました。筆者はこのガイドラインの委員を担わせていただきました。

このガイドラインでは、子どもへの体罰はもちろん、親だけではなく「全ての人」、「どんなに軽いものであっても」「暴言も含む」と明記されました。これによって、世界で59か国目の体罰全面禁止国として2020年2月、日本も承認されました。

世界で一番最初に体罰を禁止したのは1979年のスウェーデンです。スウェーデンは、国をあげたキャンペーンを行い、その後30~40年をかけて、子どもに手を上げない国になりました。

私自身、約10年前にスウェーデンの大使館が主催したプレスツアーに参加させていただきましたが、子どもが駄々をこねたりしていると、目線を合わせて子どもの声を聴く親の姿をたくさん目にしました。周囲の大人も、電車などで子どもが泣いているとあやすなどしていました。まさに社会で育てているという印象を受けたことは今でも忘れません。

見つめ合う母と娘

体罰等によらない=感情的にならない子育て

筆者は、親や保育士、支援者などに向けて「感情的にならない子育て」と言うことでお伝えしています。「体罰をしない子育て」と言っても、「体罰なんてしない」という親も多いでしょう。

以前、厚生労働省の「愛の鞭ゼロ作戦」というキャンペーンに協力させていただきました。体罰や子どもを叩くことは、「この子のため」「良かれと思って」という思いもありますが、多くの場合は「言うことを聞かなかったから」というときでしょう。

親も人間ですから、目の前の子どもが言うことを聞いてくれなければイラっとすることもあるでしょう。でも、やはり目の前の子どもにぶつけないことが大事です。

悩むエプロン姿の女性

次回は、「感情をぶつけてしまうことが、子どもの成長・発達によくない」こと、「ではどうしたらいいのか」について、お伝えします。

 

高祖常子
高祖常子
子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント。
資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。
各NPOの理事や行政の委員も務める。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。
著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。
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