ビーガンは美味しくないのか?!<ビーガンは新しい食事体験となるか vol.3>

【コラム】暮らしをワンランクアップ

宗教上の理由や体調や抱えている疾患の事由から、いわゆる「特別食」での対応が必要な方も少なくありません。特に近年は、外食や機内食などでも様々な特別食が選択できるようになっているので、そのような食事を召し上がっている方や注文される方を見かけたことがある人は多いかもしれませんね。ただ、その際、どのような感情を持たれるでしょうか?

何某かの制限が加わった食事に対して、「美味しくないのでは!?」というイメージを持ってしまうことはありませんか。もしかすると、「ベジタリアン」や「ビーガン」についても同様かもしれません。動物性の食品、食材を使用しなければ、美味しい料理はできないのでしょうか?

ビーガンを正しく理解するために、株式会社みんなのごはん・代表取締役 岩溪寛司さんに、3回に渡りビーガンについてお話しいただくシリーズ。第1回目は「ビーガンは新しい食事体験となるか?」というテーマで、第2回目は「ビーガンは健康に良いのか?」というテーマで、お話しいただきました。最終回となる今回は、「ビーガン料理はおいしくない?」というテーマでお話しいただきます。

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ビーガンで使える調味料は塩だけ?

ビーガン料理というと、どんな料理を想像されるでしょうか?

今から7年前、私が航空会社の方とお仕事をする機会を頂いた際に、先方の機内食担当のグランドシェフの方が言われた一言が今でも印象に残っています。

「ビーガンは塩しか使えないからね。」

盛り塩

このとき「これは弊社も大いに役に立てそうだな。」と感じたのを覚えています。と言うのも、ビーガンでも使える調味料や旨味はたくさんあるし、塩しか使えないということは全くないのを知っていたからです。

こちらのシェフの方は年齢的にも私の大先輩で、言うまでもなく経験も豊富な方でした。どうしてそんな方が「ビーガンは塩しか使えない」という結論に至ってしまうのでしょうか。

殆どの場合、シェフは一般の方向けのメニュー立案から試作、調理までで手一杯で、ビーガンの様に特殊なメニューの情報を集める時間も余裕もありません。また、リスクを避けるためにも動物性食材が使われているかどうか、一見わからないもの、または分かりづらいものは使用しない、ということを繰り返すうちに「塩だけを使っていれば間違いはないだろう」という結論に至ったと思われます。

調味の基本は「さ・し・す・せ・そ」

ここで調味料について改めて考えてみましょう。
私達が調味料と認識しているものは、大きく2つに分類されます。

ひとつは、合わせ調味料です。
合わせ調味料は醤油に出汁が入っている出汁醤油であったり、ドレッシングなどが分類になります。料理に時間をかけられない方や料理に自身がない方でもこれらを使用すれば簡単に美味しい料理ができるため、とても便利な調味料です。

しかし、この合わせ調味料にはビーガンでは使用できない動物性食品が含まれていることがあります。出汁は魚介類由来ですし、ドレッシングには乳製品が入っていることもあります。前述の航空会社がこれらを使用しなかったのは、この様な理由からです。

もうひとつは、基本調味料です。
これは砂糖、塩、酢、醤油、味噌、酒などのことです。これらはほとんどの場合原材料が単一であったり、醤油や味噌などは醗酵などの工程を経ているだけで、何かをあとから加えて味を整えたりはしません。
(保存の目的などで添加物が加えられている場合はあります。)

基本調味料はそれぞれ単一でも味を加える上で機能しますが、料理によってはこれらをうまく組み合わせることで味に深みや奥行きを作ることができます。
日本ではこれらの調味料を「さ・し・す・せ・そ」という表現で表したりします。

「さ・し・す・せ・そ」の調味料

「さ」は砂糖、「し」は塩、「す」は酢、「せ」は醤油(セイウ)、「そ」は味噌、となります。
これは調味料を料理に加える順番とも言われています。

ビーガンちょっと試してみようかな、と思ってもすぐに前述のシェフと同様の疑問が出てきます。
調味料は何が使えるのかな?
美味しくできるのかな?
ここの疑問をうまく通過できるとビーガンも続けることが易しくなります。

実は「さ・し・す・せ・そ」をうまく使えば合わせ調味料や動物性の旨みを添加しなくても美味しい料理が作れます。
もちろん料理を全くしたことがない、という方にとっては少し練習が必要だと思いますが、普段から料理をされる主婦の方にとってはそれほど難しいことではありません。

「さ・し・す・せ・そ」の基本調味料はそれぞれ単体ではスーパーでもコンビニでもどこでも手に入りますし、私が経営する株式会社みんなのごはんでも野菜料理のための基本調味料として「さ・し・す・せ・そ」の調味料をセットにした商品を扱っています。
これはビーガン料理家の本道佳子さんがこっそり使っていた調味料を商品化したもので、本道さんの野菜料理の美味しさの秘密を明かす内容となっており、野菜の美味しさを最大限引き出す調味料となっています。

大豆タンパク質もプラスして

これら調味料に加えて、大豆たんぱくを使用した加工品を加えてみるのも料理を彩るコツとも言えます。

大豆

コラムの1回目にも書きましたが、近年、大豆たんぱくを使用したハンバーグなどがスーパーなどでも手に入りやすくなりました。ビーガンのライフスタイルを送る上でタンパク質をどう摂るか、は課題があります。お肉を日常的に食べていればタンパク質不足になることはほとんどありませんが、ビーガンはうっかりしているとたんばく質不足になってしまいます。

もちろん加工品を使わずに大豆などのタンパク質が豊富な豆類をうまく使って調理をすることもできますし、時には加工品を購入して楽をすることもあり、ではないでしょうか。
この際できるだけ添加物などを使用していない、基本調味料のみで味付けされた加工品を選んで使いたいものです。

一石二鳥以上のビーガンライフ

野菜

ここまでお伝えてしてきたように、ビーガンはここ3年ほどで社会的にはもちろん、家庭にとっても身近な存在になってきました。
ビーガンになるか、ならないか、ではなく、生活の中に上手にビーガンを取り入れることで家族の健康を気遣いつつ、気づけば社会にとっても善いことをしていた、となるような一石二鳥、三鳥なのがビーガンというライフスタイルです。

あまり身構えず、気軽にビーガンを知ってもらえる機会になればとても嬉しいです。ここまで3回に渡ってお付き合いいただきありがとうございました。
みさなんもぜひ、ビーガンを正しく知って、生活にうまく取り入れてみてはいかがでしょうか?


岩溪寛司(いわたにかんじ)
京都出身
株式会社みんなのごはん・代表取締役 CEO
ビーガン検定・代表
国境なき料理団・共同代表。
2006年に音楽を志して京都より東京に上京。音楽活動中にビーガンになり、その後NPOを設立し音楽活動と並行して啓蒙啓発活動を開始。ベジタリアン業界では知られたバンドになり海外公演も経験するが2013年に解散。2014年に株式会社みんなのごはんを設立。趣味はランニングからトレラン、今は筋トレがメイン。
株式会社みんなのごはん
https://www.minnanogohan.com/

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