子どもの習い事の適正は? 気持ち、時間、費用の3つのバランスから考える【暮らしとお金のヒント】

プールで笑顔の女の子 暮らしとお金のヒント

「いろいろな経験を通して、子どもの可能性を広げてあげたい」そう考えるのが親心。
子どもの習い事には、愛情や期待を込めてしまう分、本当に必要なのかを冷静に判断することが難しいですよね。
ついつい増やしがちな習い事ですが、適正を見つけるために3つのバランスが必要です。

  1. 子どもと親の気持ちのバランス
  2. 習い事とその他との時間のバランス
  3. 家計と費用のバランス

詳しくご紹介していきますので、参考にしてくださいね。

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子どもの習い事の平均値はどのくらい?

腕を組み考える女性

人と比べるものではない、ということがわかっていても気になるのが、人のこと。
まずは習い事に関する平均値を確認してみましょう。

子どもの習い事にいくらかけている?

文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」のデータを参考に、子どもの習い事(学校外活動)にどれくらいの費用をかけているか、をみてみましょう。

子どもが幼稚園から高等学校まですべて公立の場合は合計で2,985,352円、すべて私立の場合は合計で5,896,268円を学校外活動費にかけていることになります。
これを単純に15年で平均すると、公立は約199,023円/年、私立は約393,085円/年となります。

月に換算すると、公立で約16,585円/月、私立で約32,757円/月となり、家計にとってもインパクのある金額と言えるのではないでしょうか。

【男女別・学年別学校外活動費】

男女別・学年別学校外活動費

引用:文部科学省「平成28年度子供の学習費調査」

 

公立では小学校6年生から、私立では小学校5年生から、塾などの補助学習費が補助学習以外の学校外活動費を上回ります。
この時期からスポーツや芸術系の習い事から塾などの補助学習に比重が変わってくるようです。

これはあくまで平均データなので、特に、受験対策で塾等に通う場合は、さらに多くの費用がかかることを想定しておく必要があるでしょう。

子どもの習い事は週に何日?

全国の公立学校に通っている小学校1~6年生・中学校2年生・高校2年生を対象にした調査結果から、子どもが週に何日、習い事に通っているのかをみてみましょう。

【塾の頻度】

引用:独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)」

 

中学2年生になると、半分以上の人が週に1~2日以上は塾に通っています。

高校2年生になると、受験対策の塾が必要ない人も含まれることもあってか、通っていない人が75%以上となります。

【塾以外の習い事の頻度】

塾以外の習い事の頻度

引用:独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)」

 

次に塾以外の習い事の頻度です。

塾に通う頻度が増える中学2年生では、塾以外の習い事にはまったく通わなくなる生徒が60%を超えます。これは多くの生徒が部活動に所属するようになることも要因の一つとして考えられます。

また、このデータの対象は公立学校に通う児童・生徒のみなので、私立学校に通う児童・生徒を含めると、かけている費用面から考えても、さらに頻度は増えることが予想されます。

子どもの習い事は個人差が大きい

子どもとお出かけ情報サイト『いこーよ』調べによると、0歳の子どもは94%という高い確率で習い事をしていません。

そこから、年齢があがるにつれ徐々に習い事をしている割合が増え、4歳になると習い事をしているのが51%、していなのが49%と、ほぼ同率になります。その後、5歳~調査対象である12歳までは、習い事をしている率がだいたい7割前後で推移します。

つまり、年齢があがっても、習い事をしていないという割合は3割前後存在するということになります。

先程ご紹介したデータでも、習い事にかける費用は、通う学校が公立か私立かによっても大きな開きがありました。環境やその家庭の考え方によって、習い事をどうするかは個人差が大きくでるものであることがわかります。

個人差が大きいものだからこそ、周りとの違いに迷うことが増えることもあるかもしれません。

だからこそ、子どもの習い事のわが家の適性を見つけるには3つのバランスを意識することが大切です。

バランス1 子どもと親の気持ちのバランスは取れている?

森の木々と木漏れ日

子どもと親の気持ちを分けて考える

習い事をする子ども自身はもちろん、それをサポートする親にも習い事へのモチベーションは必要なります。どちらのモチベーションも維持するためには、お互いが納得していることが大切です。どちらかが納得していないと感じるときには、子どもの気持ちと親の気持ちをわけて考えることで、調整がしやすくなります。

ただ話をするだけでは、親の意見を一方的に押しつけがちになってしまうのであれば、実際に紙に書くことで相談しやすい環境をつくってみてはどうでしょうか。

たとえば、検討している習い事がいくつかある場合、その習い事を付箋に書き出します。1枚の紙を用意し、横軸は子どものしたいこと・したくないこと、縦軸に親のしてほしいこと・してほしくないことと記入します。

 

したいこと・したくないことシート

 

検討している習い事がどの位置にあたるのかを、親子でそれぞれの気持ちを話し合いながら付箋を貼ります。この時に、ただ「したい・したくない」「してほしい・してほしくない」だけではなく、「どうしてそう思うのか?」その理由をお互いに話し、書き出すことがポイントです。

子どもの素直な気持ちが聞けることがあるかもしれないし、親として子どもが気付かない視点での見方を伝えることができるかもしれません。

親子それぞれが感じていることを同じ紙の上に出すことで、お互いの気持ちを冷静に理解することができて、調整もしやすくなるはずです。

成果にこだわり過ぎない

「ピアノが弾けるようになってほしい」「計算が得意になってほしい」「泳げるようになってほしい」など、習い事を通して何かができるようになってほしいと願うことは自然なことです。

ただ、例えば、ピアノを習うことで得られるのはピアノを弾くという技術だけではないはずです。椅子に座って集中すること、音楽を楽しむこと、表現力を養うこと、人前での振る舞い方など、ピアノを弾くこと以外にも得られるものはたくさんあります。筆者自身はピアノを10年間習いましたが、残念ながら最後までピアノ自体には興味を持つことがなく、今では楽譜を読むことすら怪しい状態です。それでも、人前に立つ度胸がついたのは、子どもの頃のピアノの発表会での経験も影響があるように感じています。

習い事で得られることは、わかりやすい技術や、すぐに成果が出るものだけではありません。その習い事で得られたものだと親も本人も気付かないけれど、身につくものもあるのではないでしょうか。

たとえすぐに習い事をやめたとしても、そこから得るものもあります。子どもが自分の好きなこと・苦手なことを理解することや、自分の意思を大人に伝えられるようになることは、とても大切なことです。短期間でも新しい世界を知ることは、子どもの視野を広げることに役立つはずです。

どんな経験でも、そこから得られるものは必ずあります。そう考えると、わかりやすい成果を求めすぎずに、親もおおらかに子どもの習い事に向き合えるのではないでしょうか。

ゴールをイメージしておく

  • ○年生になったらやめる
  • ○○ができるようになったらやめる
  • 発表会を○回経験したらやめる

など、なんとなくでもいいので、習い事のゴールをイメージしておくことも必要ではないでしょうか。

もちろん成果にこだわり過ぎる必要はありません。ただ、目指すものや具体的な期限がある方が、子どもにとってもやる気を持続しやすくなります。

習い事はついつい続けること自体を重要視しがちだからこそ、ゴールをイメージしておくことで、惰性で続けるのではなく、子どもの成長に合わせた習い事を選択しやすくなります。

バランス2 習い事とその他との時間のバランスは取れている?

時計の積み木と、目覚まし時計

スケジュールを見える化してみる

子どもの1週間のタイムスケジュールを書き出してみることで、習い事が子どもの負担にならないかを客観視できます。

習い事が増えれば、習い事に通う時間や準備・練習の時間も付随して必要になります。学校の宿題をする時間や、遊ぶ時間も必要です。たまにはのんびりする時間だって必要なはずです。

習い事の送迎時間、夕食の時間、就寝時間など、1日のなかで時間を点で意識することは多いですが、少し俯瞰して、1日、1週間といった単位で、子どものタイムスケジュールに無理がないかを確認することも大切です。

睡眠時間は最優先

睡眠不足は注意や集中力の低下、疲労感などをもたらします。心身ともにエネルギーを充足させるため、パフォーマンスをあげるために、睡眠はとても大切であることがさまざまな研究でもわかっています。

習い事の影響で睡眠時間が削られてしまうのであれば、それは優先順位を見直すサインだと言えます。

子どもの可能性を広げることは大切ですが、それは心身ともに健康な状態であってこそ。
睡眠時間の確保を最優先にするためには、どんな生活リズムである必要があるか?という点から考えてみると、わが家にとっての適性が見えやすくなります。

“できる”と“無理がない”は違う

タイムスケジュールを確認するときに注意したいのが、頑張ればできる状態と無理がない状態は違うということです。

走って移動しないと間に合わない、夕方はいつも時間に追われている感じがする、といった状態であれば、それは子どもにとっては少し無理がある状態だと言えるのではないでしょうか。それは大人も同じことです。子どもの年齢や環境によって、親の時間も多くを習い事に割くことになります。子どものためだとつい頑張ってしまいがちですが、本当に自分にとって無理のない状態はどういう状態かを知っておくことも大切です。

習い事を自宅で学ぶスタイルを選んだり、近くの場所を選んだり、曜日にこだわって選んだりすることで、無理のない状態にすることもできるかもしれません。ファミリーサポートなど他の人の手を借りて送迎の負担を減らすこともできるかもしれません。まずは、わが家にとっての“無理のない状態”を把握することが大切です。

バランス3 家計と費用のバランスは取れている?

電卓とボールペン 1万円札

 

習い事は始める前にしっかり検討!

習い事の費用は一旦はじめると、毎月必ずお金がかかる「固定費」になります。

はじめてしまうと簡単には辞めにくく感じるだろうと思うのであれば、習い事を始める前にしっかり検討することが大切です。

同じ英会話でも、公民館で開かれている英会話教室、インターネットを利用した英会話教室、個人で主宰している英会話教室、大手の英会話教室……など、どこで習うかによって、かかる費用も様々です。大手の英会話教室が必ずしもわが家のニーズを満たしてくれるとは限りません。わが家のニーズを具体的にすることで、意外と費用をかけなくてもニーズを満たせる教室がみつかるかもしれません。

また、習い事をはじめる前に、体験教室や長期休暇中の短期教室を活用して、子どもの興味・関心を確認する機会を持つのもいいですね。

費用は月単位ではなく、年単位で確認する

習い事の月謝は数千円なことが多く、「これくらいなら……」と家計への影響を甘く見てしまいがちです。でも、実際にはかかる費用は月謝だけではありません。

スポーツ系であれば、ユニフォームや道具代、芸術系であれば、発表会の衣装やチケット代など、月謝とは別に万単位の出費があることも。それ以外にも、送迎の駐車場代や、待ち時間の親のお茶代などもバカになりません。

例えば、1回に駐車場代が600円だとした場合、月に4回、12カ月通えば、28,800円です。

教室やすでに習っている人に月謝以外にかかる費用を確認してみたり、習い事をはじめることでかかるプラスαの費用がないかを想像してみたりすることで、「こんなはずじゃなかった!」を事前に防ぐことができます。

教育費の貯め時を逃さない

もし、教育費への備えが手薄だと感じているのであれば、今、習い事に費用をかけるかどうかはじっくりと考える必要があります。

仮に、小学1年生になるお子さんがいるご家庭で、これから12年間で大学費用を貯めようとすると、私立大学文系で月に約5万円の貯蓄が必要です。

教育費一覧

日本政策金融公庫「教育実態調査結果(2019年3月20日発表) 」をもとに筆者作成

  • 児童手当は貯蓄できているか
  • 私立大学に行けるお金を親が準備するのか
  • 奨学金を使うのか、

など、教育費を貯めるうえで、考えておくべき点はいろいろあります。

今、まだ考えられていないのであれば、今後まとまったお金が必要になることを想定した上で、習い事の費用がどれくらい家計に影響を与えるのかを確認する必要があります。

「将来かかるお金」と「今かけたいお金」、どちらも大切にしたいところですが、お金には限りがある以上、優先順位をつける必要があります。

子どもが高校生になったときに、「お金をかけるタイミングを間違った・・・」と後悔しないために、長期的な視点で考えてみることも必要です。

習い事を続けるか迷ったときにはどう見直す?

想像する子どもたち

 

習い事は、始めるときより、続けるかどうかを判断する方が難しく感じるのではないでしょうか。もし、続けるか迷ったときには以下のポイントで見直してみてはいかがでしょうか。

子どもの気持ちを見直す

まずは、本人が習い事を続ける意思があるかどうかが、何よりも重要です。本人の興味・関心がないと、親が習い事で得てほしいと願っていることも得にくいのではないでしょうか。

親の期待に応えるために続けていたり、「なんとなく」惰性で続けていたりするのであれば、見直し時かもしれません。

定期的に子どもの気持ちを確認することで、親にやらされているのではなく、「自分の意思で習い事をしているんだ」という子どもの自覚を促すことにも繋がるはずです。

他人に強制されたものより、自分で選んだことの方がやる気になれるのは、子どもも大人も同じです。

また、「自己決定」は健康、人間関係に次ぐ要因として、所得、学歴よりも幸福感に強い影響を与えることが研究でわかっています。(参考:西村和雄、八木匡「幸福感と自己決定―日本における実証研究」2018年9月)

子どものときから、自分で考え、選び、決定するということは、価値ある経験となるはずです。

習い事をはじめた理由を見直す

たとえば、スイミングに通っていると「進級テスト」が辛くなる、という話を耳にします。

「水に慣れ親しんでくれたらいいな」そう思ってはじめたものでも、わかりやすい目標があると、ついついそちらに意識が向いてしまうのは自然なことかもしれません。進級ができずに辛く感じるときには、「水に慣れ親しむため」という、習い事をはじめた理由に立ち返ることができれば、目の前の目標にこだわりすぎることもなくなるはずです。また、進級できる・できないという結果だけではなく、これまでの過程でできるようになったことにもフォーカスしやすくなります。

習い事をはじめた理由を見直すことで、いつの間にか目指していたるものができるようになっていて、ステップアップするタイミングだということに気付くことにもなります。

何のために習い事をするのか?を見直すことで、今の子どもにとって必要な習い事なのかどうかの判断もしやすくなります。

 

家計を見直す

親子ともに習い事を続けたいと思っていたとしても、費用の面で続けることを厳しく感じることもあるでしょう。

人は漠然とした目標よりも具体的な目標を掲げた方が、モチベーションがアップするのは、ご自身の経験でも感じたことがあるのではないでしょうか。

「ただなんとなく節約しなくちゃ」より、「子どもの習い事にかかる費用を捻出したい!」と思う方が、家計の見直しにも力が入るはずです。

まず着手すべきは、固定費の見直しです。

  • 住宅ローンの借り換えを検討する
  • 通信費を見直す
  • 保険を見直す
  • 自動車を手放すか検討する

など、固定費の見直しは手間や時間も多少必要ですが、見直せば家計への影響は大きなものになります。

銀行口座の通帳やクレジットカードの明細をチェックして、なんとなく支払っているジムなどの会費や課金サービスがないかもチェックしてみましょう。

習い事には、親子の気持ち、時間、家計といった、さまざまな要素が深く関わってきます。その要素ひとつずつの理解を深め、ちょうどいいバランスを探ることが、わが家にとっての習い事の適正をみつけることに繋がります。

ぜひできるところからチャレンジしてみてくださいね!

 

長谷部敦子(はせべあつこ)
AFP/2級FP技能士/メンタルオーガナイザー
20代前半での父親の看取り介護を機に、“お金”と“心”の整え方を学ぶ。
現在は、お金のことが苦手だった自身の経験をもとに、子育て中の母目線での執筆活動や、働きたい女性に向けて家計管理の仕組みづくりのサポート、マネー講座の講師業を行っている。
ラーゴムデザイン 代表
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