高齢者施設での暮らしの様子~自立型編~【介護のお金シリーズ】

暮らしとお金のヒント

前回は、高齢者施設の種類についてご説明しました。今回は、高齢者施設での暮らしについて、私自身が見学した施設の写真を取り入れながら、ご紹介していきます。
(写真は実際に私自身が見学したホームのものですが、イメージ写真として使用しています。)

高齢者施設

高齢者施設ってどんなところなの?【介護のお金シリーズ】

新型コロナ自宅や療養施設でも保険金・給付金は請求できる
新型コロナで入院

自立時のシニアマンション暮らしはマンション暮らしに便利さがプラス

シニアマンションなら住み替え前と変わらず守られながら自由に暮らせる

ひと口に高齢者施設と言っても、元気なうちに住み替える自立型と、介護を受けることを目的として入所する介護型では、かなり生活様式が異なります。そこで今回は、「高齢者施設での暮らし」を自立型編と介護編に分けて、まずは自立型の暮らしからご紹介していきます。

まずは、自立型の高齢者施設の例を見ていきましょう。今回ご紹介するのは首都圏にある分譲型シニアマンションの様子です。

ダンスホール

茶室

看護室

麻雀ルーム

大浴場

このシニアマンションは、1LDKでも60㎡を超えており、中には100㎡近い広さの部屋もあります。建築から20年以上が経っていることもあり、数百万円で売買されている部屋がたくさんあるなど、購入コストが低いうえに、部屋ダンスホールや麻雀室、茶室などの付帯設備が充実していることも、特筆すべき情報です。

シニアマンションで暮らす際は、介護型高齢者施設とは違って「時間割」はありません。フロント機能があるため、生活にまつわる相談ができます。食事の提供はあるところが多くなっていますが、食べる、食べないは、入居者の自由。居室内には、一般的なマンションと同等のキッチンがついているため、完全自炊もできます。

入居当初の比較的健康なときは、ほぼ自炊をして、買い物に行くのがしんどくなってきたころから、食堂を利用する人も多いようです。また高齢期になると3食食べずに、お昼はおやつやパンなどをつまむだけにして、朝食と夕食の2食を利用する方も少なくないようです。

分譲型シニアマンションは、購入時のコスト負担と相続に課題あり

分譲型のシニアマンションの場合、購入価格は場所、新築か中古か、部屋の広さ、付帯設備などによって、かなり異なります。同じように、管理費にも差があり、介護になった場合の対応も、運営会社によってまちまちです。

ちなみに、写真でご紹介しているシニアマンションは、建物内に看護室があり、看護師が24時間常駐しています。日常的な薬や体調管理は看護師が対応してくれるほか、体調が悪くなった場合などの対応などの相談にものってくれます。

介護が必要になった場合は、シニアマンションを「自宅」として、介護事業者からの介護が受けられます。比較的、築年数の浅いシニアマンションでは、オープン当初から建物内に介護事業者を入れていることも多く、契約は個人単位になるものの、介護付有料老人ホームとあまり変わらない感じで介護を受けられるケースもあります。

とはいえ、異なるのは費用負担。介護付有料老人ホームの場合は、月額費用の中に24時間365日の介護費用が含まれていて、特別な要望を出さない限り、月額費用は毎月同じです。一方のシニアマンションでは、介護度ごとに決められた公的介護保険の給付限度額までは1割~3割の自己負担ですみますが、給付の上限を超えると全額が自己負担(10割)になります。

もうひとつ不安な点は、相続問題です。分譲型のシニアマンションは所有権の物件なので、住んでいた方が亡くなった場合は所有権の相続が発生します。相続人がシニアマンションに住める年齢以上であれば、引き続き、居住する選択もあります。ですが、相続人が居住しない場合は、所有権を売却することになります。売却価格については、希望の価格で売れるとは限りません。シニアマンションの場合、居住できる年齢に制限があったり、管理費が通常のマンションよりも高めに設定されていることもあって、売却までに時間がかかるケースもあります。

10万円以下で暮らせる人も多いケアハウスは有料老人ホーム並みの施設もある

次にご紹介するのは、ケアハウスです。ケアハウスというのは、自立している高齢者が暮らす場所。介護認定を受けている方は、申し込めないのが原則です。ただし、入居したあとに介護認定を受ける方はたくさんいて、入居後であれば要介護3くらいまでは継続して暮らせるところもたくさんあります。

月々の費用は、所得によって異なるものの、多くの方が住居費、食費、管理費などを含めて、月々10万円以下で暮らせています。10万円以下でも暮らせる選択肢がある、つまり費用負担の軽さが、ケアハウスの魅力といえるでしょう。ケアハウスに暮らしながら、パートで働いたり、中には通勤している人の話を聞いたこともあります。

介護型ケアハウスを併設していれば要介護5になっても住み続けられる

前回ご紹介したように、自宅で介護を受ける場合は、要介護3になるまで特養の申請ができませんが、自立しているときにケアハウスに入居すれば、要介護3になるまで待機して、特別養護老人ホームへの入居申請も可能です(すべてのケアハウスで待機できる保証はありませんが)。

ここで、ケアハウスの例として首都圏にある施設の様子をご紹介します。

ケアハウスの昼食例

ケアハウスの内風呂

ケアハウスの外風呂

ちなみに、こちらの写真のケアハウスは、介護型ケアハウスの認可も取得しています。要介護認定を受けた場合は、住み替えをせずに、施設のスタッフから介護を受けられます。

老後資金が少ない方でもケアハウスなら貯金の取り崩しを少なくできる

「老後資金が十分に貯まるかが不安」といいながら、お金の殖やし方だけに注目する方は少なくありません。運用をして、お金を殖やそうとする努力も必要だとは思うものの、不確実性がぬぐえないのも事実です。それならば殖やす努力と並行して、生活コストを小さくできる暮らし方を探してはいかがでしょうか。

たとえば、今回ご紹介したようなケアハウスに住み替えるとしましょう。住み替えれば、年金内で暮らせる人もたくさんいるはずですし、住み替えても持ち家は手放さなければ、賃貸に出して家賃収入を得ることも可能です。賃貸収入が発生すると、所得に連動するケアハウスの月額費用は少し増えますが、増えても数千円から1~2万円程度(所得の増え方に寄ります)。家賃のほうが多く、自由になるお金が増えるのが一般的です。年金の少ない自営業者であっても、年金が少なければケアハウスの月額費用も少なくなるため、ケアハウスなら貯金の切り崩しは数万円ですむでしょう。

老後資金に不安のある方は、60代以降になったら、居住地にあるケアハウスを見学してみましょう。今回写真でご紹介したような、有料老人ホーム並みの設備を持つケアハウスを見つけられれば、老後の不安も軽減できると思います。

 

執筆/ファイナンシャルプランナー・畠中雅子

新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演、相談業務などをおこなう。40代以上のひきこもりのお子さんをお持ちのご家庭を対象に生活設計アドバイスをおこなったり、高齢者施設への住み替え資金アドバイスなどにも力を入れている。高齢者施設の見学回数は300回を超える。著者は、「貯金1000万円以下でも老後は暮らせる」(すばる舎)、「家計がみるみるラクになる保険BOOK」(サンキュ!ムック)、「ラクに楽しくお金を貯めている私の『貯金簿』」(ぱる出版)、「高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン」(近代セールス社)など、約70冊にのぼる。プライベートでは社会人の娘と、大学生の息子2人の母。

教育資金バナー