いつから働く? いつまで働く? 女性のキャリアは山あり谷あり。だからこそ知っておきたいこと【暮らしとお金のヒント】

暮らしとお金のヒント

「這(は)えば立て、立てば歩めの親心」と言われますが、子どもは年々成長します。今は手のかかる赤ちゃんももう6年経てば小学生になります。このコラムをお読みの方の中にもきっと、お子様の小学校や中学校入学を機にパートに出ようと考える人がいるのではないでしょうか。

ライフプランを考えるうえでキャリアプランを外すことはできません。
ただ子育て中の女性にとって、家事や育児に加えて仕事を持つということはハードルが高いようです。とくに専業主婦の期間が長かった人ほど気後れしやすいもの、一歩前に進むことができないというのも心情的にわかります。

このコラムでは、筆者の出産後の再就職を踏まえたお話、ゼロかイチかではない細く長い働き方のすすめとともに、今や老若男女の関心事といっても過言ではない年金制度のイロハをまとめています。「もっと早く知っておけば」そうならないために、いまのうちに読んでおいてください。

 

新型コロナ自宅や療養施設でも保険金・給付金は請求できる
新型コロナで入院

妊娠をきっかけに何も考えず仕事を辞めた私

今でこそファイナンシャルプランナーとして家計相談を受け付けている筆者ですが、妊娠するまでは全く別の仕事をしておりました。職場は都内、直行直帰や遠方への移動も多い現場職。妊娠・出産を控え、現場を離れ事務的な業務を行う部署へ移る選択肢もあったのですが、何も考えずに30代半ばであっさり退職してしまいました。

出産後しばらくの間専業主婦だったのですが、それまで自分のことは自分で面倒をみるのが当たり前のDINKS生活。夫の扶養に入り健康保険証を切り替え、厚生年金から国民年金の第3号被保険者になることに新鮮味すら感じたぐらい……。
社会保険制度について、薄っぺらで断片的な知識だけでした。もちろん、老後の備えである年金について深く考えたことはありません。

ひとり息子が10か月を過ぎた頃でしょうか、分譲マンションを売却し、転居。戸建てを建てる土地から探しはじめました。落ち着き先が決まった後、再就職しようと考えたとき、本当に遅まきながら気が付きました。これまでのような残業ありの現場仕事は子育て中の身には難しいということに。

好きで選んだ現場職でしたが、出産後のキャリアプランを「もっと早く考えておくべきだった!」そう思いましたね。大げさですが、ライフプランに筆者が目覚めた瞬間と言っていいと思います。

ママと赤ちゃん

女性のキャリアプランは起伏が大きくなりがち

再就職先は、「家の近く」で「勤務時間が短い」営業職、生保保険募集人でした。
独身時代に転職経験はあったのですが、すべて技術職でしたので、営業もはじめてだし、日々こんなに人と会う仕事もはじめて。

退職→専業主婦→契約社員ほか→フリーランス。
出産・子育てと並行してキャリアの波に揉まれたここ10数年。生命保険会社に勤務してはじめて知ったライフプランという考え方が妙にしっくりしたものでした。

さてここからは女性のキャリアプランを考えてまいりましょう!

家庭と仕事のバランスに悩んでいる女性、働きはじめたいが自信が持てない方におすすめするのが、<細く長く働く>こと!

出産・子育てがはじまると、近視眼的になりがちです。「ワンオペ育児で手一杯!もう限界…」、「同僚に迷惑をかけてまで働き続けるべき?」と時間的、心境的に振れ幅が大きく、リセットしてしまいたくなることもあるでしょう。

でも、もっとあがいてみてください。
家事育児負担を家電やシッターさんなどの周りの助けで乗り切り、なるべく停まらない方策をご家族で考えてみてください。

停まっている自転車を考えていただくと分かりやすいのですが、漕ぎはじめは力も必要ですし車体もフラフラしがちですが、スピードを緩めてでも走ってさえいればそれなりに自転車は安定して前に進みます。少しの間手押しで、後ろから人に押してもらったっていいと思うのですが、みなさんはいかが?

社会との接点を持ち続けること、働く感覚を錆びつかせず、少額であっても自由になるお金を得ることの精神的なゆとりは決して小さくありません。また夫婦のどちらか1馬力で働くより、収入源を分散させた働き方のほうが社会の変化にも対応しやすいのではないでしょうか。

働き方は人それぞれ。人の数だけ正解は見つかると思います。
しかし、未来のライフイベントのひとつに妊娠・出産を入れるのであれば、働き方と生活のバランスが多少なりとも凸凹ではあっても細く長く働く人生を想定するほうが不測の事態に備えられるのではないでしょうか。

厚生年金と国民年金の2つの制度、ご存知ですか?

働き方が変われば、社会保険、とくにご自身の年金ひいては将来の年金受給額が変わってきます。「学生だから」、「20代の自分に結婚もまだ先の話」とは思わず、最低でも年金制度の基本的事項は知っておきましょう。

年金手帳

よく日本の年金制度は「2階建て」と言われますが、その所以が、厚生年金と国民年金にあります。

先ほどの例にならえば、1階部分が20歳から60歳までのすべての国民が加入する「国民年金」制度。自営業者だけでなく、専業主婦も第3号被険者として「国民年金」に加入しています。第3号被険者自身が保険料を納めることはありませんが、会社員や公務員である配偶者(第2号被保険者)が納める保険料の一部を拠出し全体で支えています。

一方、第1号被険者が納めるひと月の国民年金保険料は16,610円(令和3年度)。自営業夫婦はそれぞれで保険料を負担することに。前納することで多少の割引がありますが、決して少なくはない金額ですね。
ただ年金制度は、老後のためだけではありません。事故等で働けなくなったときのリスクヘッジ(障害年金)になります。支払いに困っても放置せず、免除申請を行うようにしてください。

2階部分は、会社員や公務員が加入する「厚生年金」です。
保険料は給料から天引きされますので給与明細を見れば一目瞭然、自己負担分がいくらかすぐにわかります。「高いなあ」そう思っていらっしゃる方も少なくないとは思いますが、雇用主も同額の保険料を収めていることはご存じでしょうか。

「厚生年金」は給与(正確には標準報酬月額)のうち一定割合を保険料として納付する仕組みです。高収入の方ほど多く納め、その分将来の年金受給額も増えますが、保険料には上限があります。そのため、低所得世帯だけでなく、現役時代と年金生活時で収入落差の激しい高所得世帯も老後資金への備えが必要です。

一部の会社員の方で「企業年金」という3階部分のある方がいます。企業(実際には管理運用を受託した会社)が年金資産を運用して企業年金として退職した社員に給付を行う確定給付年金制度から、退職金をなくして確定拠出年金制度へ移行する企業が増えてきました。

確定拠出年金とは、企業が掛金を出すものの、その運用は従業員自らが行うスタイルです。若い世代の家計相談で年金資産の話が出るようになったのも不思議ではないですよね。老後資産が増えるか増えないか、ご自分の運用次第なのですから。

年金をもらうためには何年間加入が必要?何歳からもらえる?

老後2000万円問題にもつながりますが、老後の家計の支えが公的年金であることは間違いありません。いたずらに未納期間を作らないようにしてくださいね。

まず前提条件のおさらいから。
老後に年金を受給するために、現行制度では10年間の加入期間が必要です。対象となる期間は、保険料納付済期間だけでなく保険料免除期間も含まれます。第3号被保険者期間も対象となり、それらを合計して10年以上であればいいわけです。

また、国民年金か厚生年金(共済組合等への加入)か、加入制度の種類による要件はありません。とは言え、期間の空白があるかもしれません。公務員と会社員、あるいは複数の会社にお勤めの方は「ねんきん定期便」でそれぞれの納付期間を確認するようにしてください。

企業年金は60歳から給付される会社もありますが、老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は原則65歳からです(特別支給除く)。支給開始年齢と定年年齢、退職金の有無と概算金額がわかれば、定年後に働くかどうか考えも整理しやすいと思います。早めのチェックをおすすめします。

老後に必要な金額が2000万円で十分かどうかは人によります。
不安をそのままにせず、定年年齢、公的年金や企業年金の支給開始年齢、個人年金保険に加入している方は、年金保険金がいつから支給されるのか。こうした確認の積み重ねで世帯の必要資金額がわかってくるのです。ひとつひとつ確認していきましょう。

MONEY積み木

ねんきん定期便を確認しよう!

さて年金見込額がそろそろ気になりますよね。
将来の年金見込額ですが、「厚生年金」と「国民年金」どちらの年金制度へ加入したか、何年何か月、いくら保険料を納めたかで決まります。

国民年金の場合、保険料は定額ですし何か月納めたのかわかれば計算はすぐです。
月額換算すると一人当たり、老齢基礎年金満額65,075円×納付済月数/480月(令和3年度)となります。

上記金額はひとり分ですので、自営業夫婦の場合は2倍した130,150円が2カ月に一度給付されます。会社員として厚生年金加入期間があれば、その分上積みがあります。実際はここから社会保険料が引かれます。そのため家計やりくりは厳しいものになりそうですね。
老婆心ながら、脱サラする場合は途中から国民年金に替わりますので、当座の生活資金だけでなく、老後資金も頭の片すみに置いて準備を進めていってくださいね。

厚生年金の場合は計算式が複雑なので省きますが、国民年金機構の試算例は次の通りです。
平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円で40年間働いた夫とその配偶者(ずっと専業主婦)の片働き世帯で、月額220,496円(令和3年度)。

給与水準で違いがあるのですが、加入する年金制度で老後のマネープランは大きく変わることがわかっていただけるのではないでしょうか。

要チェックなのが、誕生月に届く「ねんきん定期便」です。
開封せずそのままにしている方をときどきお見受けしますが、実にもったいない話です。
年金試算ができる「ねんきんネット」へのアクセスキーも載っています。ぜひご確認を!

まとめ

働く女性がこれだけ増えてきましたが、いろいろな外圧やその方自身の抱える「妻らしさ」「母らしさ」という呪縛の大きさを思うと、今なお働き続けるにはたくさんの助けがいることを痛感します。

とは言え、子育て中の主婦として、働き方をその時々で変えてきた身として「女性のキャリアプラン」は早めに考えておいて損はない!細く長く働くことで得られるものは大きい!そう断言できます。

働き方と社会保障は密接な関係にあります。学校でしっかり教えられはしませんが、ライフプランを考える上では重要な情報です。まずは身近なところから。
定年はいつまでか?何歳まで働くことができるのか?
教育費や老後資金は貯められそうか?いつまで働けばそうなるだろうか?
など、時間はかかってもよいのであなたの置かれた状況を確認、整理してみましょう。
きっと今後のくらしの見通しもイメージしやすくなるはずです。

 

海老原 政子
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト

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