帰省ができなくてもコミュニケーションが大切。親の介護や実家の相続をどう考える?【暮らしとお金のヒント】

介護と相続 暮らしとお金のヒント

新型コロナウイルスが全国に蔓延している影響もあり、お正月の帰省や年末の旅行を取りやめたり、お出かけを控える方も多いのではないでしょうか。帰省自体がなくなったとしても、親の健康や実家の今後が気がかりなことに変わりはないと思います。

そこで、親子でなかなか話しにくい「介護」や「相続」をテーマに、子ども側が事前に知っておいてほしいこと、親と離れていても今から準備できることなどをまとめました。

「最近、親との電話の会話に気がかりなことがある」「長男だが、親とはまったく相続の話はしたことがないし、こちらからは切り出し難い」そんな方はもちろんん、「親はまだ元気!でも、将来が少し不安」という方もぜひご一読ください。

 

目次

実家の親の介護、誰が面倒みる?

実家と自宅の距離について「スープの冷めない距離がいい」などという言葉もありましたが、離れて住んでいて年末年始やお盆しか帰省できない人にとっては、帰省するか否か、とても悩ましいところですね。

お年寄りの散歩

とは言え、今はSNSの無料通話やビデオ通話などコミュニケーション手段は豊富です。コロナ禍でかえってこうしたツールを活用し親と子(孫)が話す機会が増えた、という人も多いのではないかと推察しています。

ただ、親と話したら話したで、「その話、ちょっと前に聞いたばかりなんだけど……(それ、聞いたから、なんて言えないし)」「(友達と長電話していてうっかりお鍋を焦がした!?)お母さん、大丈夫なの?」など気になる言動がチラホラ出てくることも……。

両親ともに健在で何不自由なく暮らしていても、いずれ来る親の介護に不安を覚える人は少なくはありません。今、ご両親のどちらかに何かあったら「誰が親の面倒をみるのか?」あなたはじっくりと考えてみたことがありますか?

「なるべく考えないようにしている」その心持ちもわからないではないのですが、あなたがもし一人っ子ならば、親の介護はいずれ否応なく降りかかってくること。たとえば、
・会社の介護休暇制度についてあらかじめ調べておく。
・実家のある自治体ホームページで、福祉の窓口や要介護申請をする手順や必要書類などを調べておく。

兄弟姉妹がいる人は、帰省日程の打合せをする際などに、それとなく
・「最後まで家で介護されたいか」など親の考えを知っているか聞いてみる。
・今の職場で、どの程度休みが取りやすいか(逆に取りにくいか)確認しておく。

など、今できることがあるものです。

帰省しないまでも、こうした情報を事前に集めておくと、親の介護がいざ現実のものとなった際にも慌てずに対処することが可能になります。この年末年始の時間を使って調べておくと良いのではないでしょうか。

親との会話に耳をすませてみよう!

親との普段の会話の中にもたくさんのヒントがあります。たとえば、
・親に持病があれば、かかりつけの病院や担当医、よくしてくれる看護婦さんの名前を教えてもらう。
・お墓参りやコミュニティの会合の際に車でよく送迎してくれる親族や友人の名前などが親の口から出たら、忘れずにメモしておく。

不幸にして認知症が進み、親とコミュニケーションがとれない事態になってから「あのときお父さんがよく言っていた○○さん、どこの誰だっけ?」となってしまったら、あとの祭りです。こちらが関心を持ってたずねれば親もそう悪い気はしないはず。いろいろ教えてくれるのではないでしょうか。

いったん実家を離れてしまうと、家によく出入りしている人や親の交友関係はスルーしがちです。でも、こうした人々の情報を知り、帰省時に挨拶がてら一度顔合わせをして連絡先を交換しておけば安心ですよね。

子育てと違い、その終わりが計りにくい介護生活。

親の介護というと、入院費や治療費、介護施設に支払う費用などをまず心配する方がいます。経済面の備えももちろん大切ですが、仕事と両立して介護を続けていくことを考えるならば、チーム医療ならぬチーム介護の心構えで臨むことが大事だと筆者は考えます。
実家の周りにいる頼りになる人たちとともに乗り切る方法が見つかれば、親にとっても子であるあなたにとっても心強いのでは?

介護イメージ

そもそも認知症という病気はない!?

前項で認知症の話題が出たので、親が認知症になって困ることをまとめたいと思います。

ただ、最初に断っておきますが、断片的な親の言動から「これは認知症に違いない」と決めつけ、無理やり病院を受診させる、要介護認定の申請手続きを勝手に進めるといったことがないように気を付けてください。

厚生労働省サイトの用語集によると、認知症とは、記憶障害、見当識障害、判断力の低下(中核症状)を引き起こす脳の認知機能障害を指すとのこと。
そもそも認知症という明確な病気はなく、脳の認知機能が低下して日常生活に支障が出るほどひどくなった状態が「認知症」になった状態だと言えそうですが、素人診断はできません。

親とはいえ、一人の独立した人間です。できるだけ親の気持ちを汲み取って受診を勧めたほうがスムーズに物事が解決する可能性が高いのではないでしょうか。

とは言え、実際に火の不始末などの差しさわりがあっても困りますよね。

早期に病院診察を受けさせたいのであれば、たとえば、「健康が気がかりだから、健康診断をうけに行ってみたらどう?」とか、「かかりつけ医の先生に私もご挨拶しておきたいから、次は一緒に診察に行こうか」など言い方に工夫するのも一案です。
健康状態を心配して言っている、子としての役目を果たさせてほしいという気持ちとともに伝えてみましょう。親の気分を推し量り、タイミングを見計らうこともお忘れなく!

また、子であるあなたが親に直接言うのではなく、孫や近くに住む親族・友人から「もの忘れ外来(認知症外来)」受診をすすめてもらったほうが「そうだね、一度診てもらおうか」と言ってもらえるかもしれません。人選も大事だと思います。

「えっ?自宅が売れない!?」親が認知症になって困ること

実際に、親がもし認知症になったら、日常生活の介護のほかにどのような困ったことが起きるのでしょうか?

認知障害がすすみ判断力が低下すると、契約行為が難しくなります。

そういう状態になれば、いずれ家庭裁判所に申し立てて成年後見人を選んでもらうことになります。時代の流れとして、子どものうちの誰かが成年後見人となる可能性はどちらかというと低く、専門職の弁護士などが裁判所に選任される傾向が高いと言われています。

いったん成年後見人が選ばれると、被後見人である親本人はもちろんのこと、配偶者や子であるあなたも親が所有する資産の売却や親にかかわる契約行為を代理で行うことはできなくなります(「保佐」「補助」類型を除く)。

たとえば、親のもつ預金口座から親の生活費を引き出すにも成年後見人が介在しなければできません。入院していた病院から退院する際の治療費の支払いも成年後見人が行います。当然、自宅を売却して資金をねん出して介護施設へ入所するといった一連の契約行為も子が単独で進めることはできません。

親の状況を知らないまま時間が過ぎ認知症がすすむと、このように困ったことが起きる可能性があります。

「うちの親、最近ちょっと物忘れが増えた?」そんな気がかりを感じたら、普段のやり取りに少し注意してみる。こちらからまめに電話をかけてみる。近所の人から親の日常の暮らしの様子をそれとなく知らせてもらうなど、あなたから心がけて行動してみましょう。

義父の介護をした長男の嫁。介護の見返りを主張できる?できない?

続いて、介護の先にいずれ来る「相続」について。

相続申告書
2020年4月に民法の大きな改正がありましたので、ここでは「特別寄与者(特別寄与料)」と「配偶者居住権」について簡単に取り上げておきます。

ひとつめは、生前の被相続人への貢献が考慮される「特別寄与者(特別寄与料)」です。

たとえば、長男の嫁が義父母の介護をすることがあると思いますが、ご存知の通り、相続人となれるのは、配偶者やその子ども、それらがいない場合は直系尊属や被相続人の兄弟姉妹、というふうに相続順位が決められています。その中に長男の嫁は含まれません。

改正民法では、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者=特別寄与者として、相続人ではない親族にも寄与分を考慮してもよいことに。特別寄与者は、相続発生時に相続人に対して「特別寄与料」を請求することができるようになったのです。

ただ制度上はそうであるとしても、親族との「相族」が起きないように配慮は必要です。
介護をしている時に、親から報酬とみなされるようなお金は受け取らない、介護にかかった費用明細をきちんと残しておくなどの対策をしておくことが望ましいでしょう。

次に「配偶者居住権」ですが、この言葉は報道でもよく取り上げられているので聞いたことのある人もいるのではないでしょうか。

「配偶者居住権」は、遺産分割で自宅を処分しなくても残された配偶者が被相続人の所有する家に住み続けられるように、自宅を所有権と居住権に切り分けて登記できるように新設された制度です。

当コラムでは詳しく触れませんが、自宅不動産がおもな相続財産で金融資産があまりない場合でも、配偶者がある程度の生活資金を維持しながら自宅に住み続けることができることを目指して制度が考えられています。

「財産と言ったって自宅ぐらいしかないから大丈夫でしょ」「実家は親がそのまま住めばいいんだし……」と相続トラブルを他人事と考える人は珍しくありません。ですが、相続人のひとりに遺留分を主張され、金銭で代償することができなければ泣く泣く自宅を手放すことにもなりかねません。

親の懐事情を知る子どもはそう多くないのでは、と推察します。
気になる方は、まずインターネットで調べたり、自治体の法律相談などで話をきいてみるなど情報収集してみてください。同時に、親とも「今度こんな制度ができたんだってさ」など積極的に話題にしてみましょう。ニュースをきっかけに、親も相続について考えるようになるかもしれませんから。

 

まとめ

「どこで」「どんな介護」をしてもらいたいのか?
最期の看取りに希望することは何か?
蓄えた資産や先祖代々の土地をそれぞれ「誰に」残したいのか?

なかなか重い話題ではあります。

帰省時に親と顔を合わせつつ今日お伝えしたことが話せるのが理想ではありますが、話すきっかけが親子でないまま今に至るというご家庭は決して少なくはないはずです。逆に、直接家族で会えない今だからこそ、互いを思いやる気持ちが募り、話を切り出す契機となり得るかもしれません。

子であるあなたが親に教えてほしいことや、親として子どもに伝えておきたいことがあれば、次の帰省を待たずに、ぜひこの冬から「今度会ったら話したいこと、見せたい物があるんだ」と。電話やビデオ通話、SNSメッセージなどでまず言葉を交わしてみてください。

口に出すのがどうしてもできなければ、年賀状や寒中見舞いに一言添え書きをしてみるのも一案です。まずは「話し合いたい」という気持ちを伝えあってみてはいかがでしょうか。

海老原 政子
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト

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