毎日のように様々なメディアで報道される新型コロナウイルス感染者数や医療現場の現状。なかなか終息が見えない中で、受験生を持つご家庭のご心配もひとしおのことと思われます。
家族の体調管理に細心の注意を払うとともに、やはり心配なのが費用面のこと。教育費です。予期せず収入減を味わったご家庭に限らず、子育て世帯全体の関心事と言えるのではないでしょうか。
そこで、お子様の進路別の教育費をどう考えたらよいか貯蓄プランの立て方をまとめるとともに、教育費の目安となる統計データや貯めやすくする工夫などをご紹介したいと思います。
「毎月いくら貯めていけばよいのかわからない」「リスクはとりたくないが、預金だけで本当にいいのだろうか」など教育費の貯め方について悩んでいる方に役立つ情報を盛り込んでいます。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
教育費が貯まらないのは○○性がないからかも!?
一般的に、お子様の年齢が上がるとともに教育費がかかるようになります。そして、大学入学からの4年間が教育費のピークとなり、進路によっては年間200万円以上の学費が必要になる可能性もあります。収入の先行きが不透明な今の時代だからこそ「なるべく早く教育費を貯めておきたい」と考える方は少なくないと思われます。
とは言え、一人当たり1千万円はかかると言われる教育費。
やみくもな節約で教育費を貯めきるのは難しいと言わざるを得ません。
筆者の家計相談においても、ひとり目のお子さんの学費は計画通りに貯められたが、二人目の学費が貯まらずに入学前の資金繰りが苦しい……といったご相談が実際にあります。
教育費を貯めるには、やはり家計の見直しと貯め時にしっかり貯める計画性、この2つが必要だと考えます。
ただ今回は家計改善がメインテーマではありませんので、家計の見直しについては割愛しまして、教育費を計画的に貯めるポイントをお伝えさせていただきます。
毎月2万円の教育費積立。続く? 続かない?
高校までは公立に進学させるつもりのご家庭の場合、大学入学前の高校3年生ぐらいまでに大学進学費用をコツコツと計画的に貯めるのが理想的です。
お子様が生まれたばかりのご家庭で、仮に「今年から毎月2万円ずつ貯めよう!」と教育費を貯め始めたとします。
毎月貯蓄額の2万円の根拠はこうです。
高校卒業までは家計のやりくりで進学費用を賄うつもりで、高校3年生までに大学進学費用として600万円必要だとします。うち児童手当などで200万円はすでに貯められる想定です(所得制限外を想定しています)。新たに貯めるべき金額は残る400万円になります。
お子様が0歳から17才まで「17年間で400万円を貯めよう!」
普通はここから割り戻して、毎年約23.5万円。
続いて毎月の貯蓄額を計算し、その結果「毎月2万円ずつ貯めよう!」になっています。
決して根拠のない数字ではないのですが、実際問題、最後まで貯めきることはできるのでしょうか?
定額で貯める教育費計画のメリットデメリット
貯めるべき資金額を設定して、目標とする期日まで貯めていく。
このような資金計画は基本的に正しいのですが、毎月の貯蓄額を固定することにはメリット、デメリットがあります。
毎月定額でお子様の教育費を貯める方法はとても分かりやすく、貯めるモチベーションが下がりにくい。これが一番のメリットです。
と同時に、一定額をコツコツ貯める計画は、ある時期でとん挫する可能性が高いのです。定額積立の隠れたデメリットと言えるでしょう。
それはなぜでしょうか?
目標額を確実に貯めきる教育費の積立計画の肝とは
一般的にお子様の成長とともに家計支出は膨らみがちです。
お子様が小さいときは毎月の2万円積立はそれほど負担に感じなくとも、お子様が中学生や高校生になったらどうでしょうか?
もしかすると、お金のかかる部活動やクラブチームに参加するかもしれません。予定外に私立の中高一貫校に進学するかもしれません。そうなると、2万円ずつ毎月貯まっていくはずが、部活の遠征費や通塾費用、授業料などに消えて貯められなくなる可能性が出てきます。
計画的に貯めると言っても、その計画が「絵に描いた餅」となってしまっては元も子もありませんよね。そこでおすすめする方法が、学校の節目で毎月の貯蓄額を変える教育費積立計画です。
毎月一定額を貯める計画とは異なり、少々面倒な作業ではありますが、現在から就学前まで、続く小学校6年間、中学校3年間、高校3年間……お子様の学校の節目で、毎月貯蓄額を調整していくことを筆者はおすすめしています。
たとえば、貯蓄目標額が400万円であれば、当初5年間で2万円ずつ(積立総額は120万円)、小学校6年間は3万円ずつ(積立総額は336万円)、残る64万円を中学高校の6年間で貯める、こういった具合です。
私立小学校へ進学するケースは別にして、一般的な「貯め時である」小学校時代に重点的に貯めるのがポイントです。この間の貯蓄ペースによっては、小学校卒業までの12年間で400万円程度貯めることが可能となります。順調に貯め続けられたら、中学高校で部活や塾などに想定外のお金が発生しても積立を一時ストップしてその費用に回せます。家計やりくりはぐっとラクになりますよね。
とん挫しない教育資金計画のポイントは、その時々の家計状況に応じて貯め続けられるようにはじめから計画すること。今後の教育資金計画を練り直すときも同様にして、少し先の未来をイメージして毎月貯蓄額を節目で調整していくと最後までしっかり貯まると思いますよ。
まずは現状把握。統計データを目安に考えてみよう!
教育費の貯め方を先にお話してしまいましたが、教育費関連で筆者がよく質問されることとして、「我が家は教育費をいくら貯めたらいいの?」があります。
お子様が生まれたばかりのご家庭でよく聞かれるのですが、当コラムを読んでいるあなたは、実際「いくら」必要だと思いますか?
教育費をいくら貯めるべきかの答えは、実はご夫婦の心の中にあります。つまり、お子様の進路についてどう考えているか明らかにする必要があるのです。
教育費はご夫婦の考え方次第で、一人当たり500万円にも2000万円にもなり得るもの。
小学校受験を予定するご家庭から、大学まで公立進学分しか我が家は学費を出せないと考えているご夫婦まで、実にさまざまです。
高校卒業までは家計やりくりで捻出すると考え、ここでは大学入学の初年度にかかる費用、大学進学費用を簡単にまとめておきます。
日本学生支援機構の調査結果 (「平成30年度学生生活調査結果」)によると、大学学部別の年間費用は、国立大学(昼間部)・自宅外で約168万円(自宅で約113万円)、私立大学・自宅外が約250万円(自宅約181万円)です。これらの金額には「授業料や教材費」、「食費」、「住居費・光熱費」等が含まれています。
初年度はこれに加えて受験費用や入学金の納入もありますので、国立(昼間部)で160万円~200万円、私立であれば230~300万程度かかるのではないでしょうか。
お子様が小さい時は、具体的な進路イメージは持ちにくいと思いますので、こうした目安の数字をもとに教育資金計画をまずスタートします。
そのうえで、お子様が上の学校に進むタイミングで今後かかる学費を具体的に確認し、現在までの貯蓄総額との差分を元に新たな貯蓄額を決めていく流れで資金計画を何度か見直していきましょう。
私立進学を考えた場合、とくに早めの準備です。学費の準備額が上がりがちだということ以外に、保護者会会費や施設利用料など大学によって諸経費も変わるからです。
具体的に進学する学年になったら、学校ホームページで学費や施設利用料などの諸経費を調べておき、オープンキャンパス参加時に学費分納の可否や給付型奨学金制度の詳細など大学独自の制度についてヒアリングしておくとより安心です。
教育資金でする投資はOK? NG?
教育費の貯め方について悩むご家庭も少なくないようで、「どんな手段で貯めればよいか」質問をうけることがよくあります。
最近では学資保険の影も随分と薄くなってきた感がありますが、教育資金を学資保険で貯めているご家庭もあります。一方で、ジュニアNISAでお金を少しでも増やしたいとお考えのご夫婦もあることでしょう。
筆者は、ご家庭によって、またご夫婦のマネーリテラシーの深さにより教育費の貯め方は複数あると考えます。ですので、学資保険はNGだと言うつもりはありませんし、ジュニアNISA推しということもありません。実際にはご夫婦のリスクに対する考え方なども含めて幅のある回答になることが多いです。
ただ忘れてはいけないこととして、教育にお金のかかる時期は決まっているということが挙げられます。ことに教育資金は、タイミングを逃すとなかなかはじめられず、貯めはじめても不意の出費などで預金を取り崩しやすいようですので、早めにスタートすることをまずはおすすめしています。
貯める方法は現金積立にしろ、生命保険にしろ、まずは決めた方法で構いませんが、給与口座から財形貯蓄口座への自動積み立てなど、自動で積み上がる、取り崩しにくい仕掛けをひと工夫するとよいでしょう。
そうした意味では、学資保険はその目的がはっきりしているので続けやすさがあります。普段忙しく手間をかけたくない方や、預金などでは取り崩しがちなご家庭には向いています。
為替変動の影響を受けやすい金融商品、または元本が確保されない投資信託などで運用を行う場合は、少し早めに現金化しておく(必要な時期に必要なお金が確実に手元に残るため)こともよくアドバイスする事柄になります。貯めているから安心と時価額を確認せずにいると、必要な時期にお金が足りずに困ることになります。資産価値を定期的に確認するようにしてくださいね。
まとめ
お子様の誕生、成長とともに気がかりになる「教育費」。
まずは目安で大丈夫です。一日も早いスタートをきりましょう!
そして、とん挫せずに最後まで貯めきるためにも、家計費の将来の増大や予期せぬ収入減少にも耐えられるように学校の節目で貯蓄額をコントロールする、取り崩しにくい方法で貯めるなどひと工夫することが大切です。
また、教育資金に関してはご夫婦の話し合いがとても重要です。
筆者の体感値ですが、住宅資金計画より必要性はむしろ高いかもしれません。
なぜなら教育費の考え方はご夫婦がそれぞれ育った環境により異なるケースが多いからです。ことはお子様の将来に関わります。夫婦のどちらかが勝手に決めるのではなく、事前にふたりで話し合ったうえで資金計画を練ることをどうぞお忘れなく!
<参考サイト>
■独立行政法人 日本学生支援機構 平成30年度学生生活調査
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
(「千葉 家計相談」で検索)