子育てをしていて、切っても切れないのが地域の方々との関わり。煩わしいと思う反面、核家族化が当たり前、共働きが当たり前となりつつある日本の子育て事情を考えると、地域活動に乗り出すことは多くのメリットがあります。このコラムでは、「NPO法人ファザーリング・ジャパン」の橋謙太さんに地域との関わり方についてアドバイスいただきます。
目次
“親父の会”とは?
現在、主に小学校を中心に続々と作られているのが“親父の会”です。共働き世帯が増えPTAも平日から週末への活動に変わってきてはいますが、それでも平日の活動が多いです。そんな中、子ども達と関わっていきたいと思っているお父さん達が加入している団体が親父の会です。親父の会は、働くお父さんが中心なので活動するのは主に週末。働くお母さんが加入している親父の会もあります。活動内容は様々ですが、多くの親父の会では、子どもと一緒に楽しめる、主に屋外のイベントを行っています。例えば、地域パトロール、ペットボトルロケットの打上、逃走中、餅つき、水鉄砲合戦、お化け大会、等です。
親父の会は、法的に適正かどうかはともかく、半強制、もしくは自動入会のPTAと違い、人数的な課題はあるものの有志の集まりなので、基本的にメンバーの思考は前向きです。そのため、やれるかやれないかを議論することよりは、まずはやってみよう、という団体が多く、会の規約等もない組織が多く提案すればスピーディーに新しいイベントに取り組むことも容易です。メンバーになれば楽しい地域活動を送れるはずです。子どもが入学する際に、小学校に親父の会があるか、どうかチェックしてみてはどうでしょうか。お母さんが入会できるかもチェックです。もちろん無ければ、自分で作ってしまう、といったことも。
ただし1点だけ注意があります。親父の会の活動に熱心なあまり、家庭が疎かになるお父さんも出てきます。平日は残業、週末は親父の会では、最初は快く送り出してくれていたパートナーも、そのうちお父さんが終日不在で家事育児をしないとなると、当然怒りモードになってきます。最低限、打合せやイベントの前には、料理をしてから(片付けまで)、洗濯をしてから、出かけるといったことがとても重要です。これさえ守っていれば、充実した地域活動を送れるはずです。
PTA、親父の会以外の地域活動
PTAと親父の会について紹介しましたが、地域で活動している子育て世代に関係のある団体は他にもたくさんあります。
地域によって微妙に名称は違ってきますが、子ども会、青少年育成会、体育振興会、自然観察会、読み聞かせの会等々。行政の広報誌やホームページ、公民館に置いてあるチラシ等でチェックすることができます。もちろん、仲良くなったママ友、パパ友と興味のあることで新しく団体を作るといったこともできます。活動内容は、外向けにイベントを行うところ、メンバーだけで活動を楽しむところ、行政等に要望書を出していくことを目的にしているところ、と様々です。
PTA、親父の会の活動に合わなくとも、自分、自分の家庭に合った団体に少しだけでも関わってみませんか?
地域活動の意義
最初に子育て世帯が地域活動に関わるメリットに関して、子育ての側面、子どもを囲む環境の側面、保護者自身の人生の側面からお伝えしましたが、もう一つ大変な重要な意義があります。それは地震、津波、台風、火災等、緊急時、災害時のためです。
筆者は東日本大震災の際にボランティアに行っていたのですが、そこで見たのがお父さんの孤立化です。震災によって会社がなくなり多くのお父さんが日常の居場所を喪失していました。
2000年以降、日本では共働き世帯が専業主婦(主夫)世帯を上回るようになっています。多くの働くお父さん、そして働くお母さんは、会社と家の往復で、日常を送っているかと思います。東日本大震災の場合には、まずその職場(会社)が奪われました。そして多くの家庭では家も失われています。その際に残っていたのが地域、地域との繋がりです。
子どもも学校は失いましたが地域の繋がりがありました。地域との関わりを持っていたお母さん(一部お父さん)もしかりです。そのため子どもとお母さんのメンタル的な立ち直りは、困難を抱えながらも早かったように思えます。家族のために仕事に邁進していたお父さんは、とても素敵です。しかしながら震災時に出会ったお父さんを見ながら、サードプレイス(地域)の大切さを実感しました。
人付きあいは苦手、というお父さん、お母さんもいるかと思います。でも自分自身、家族のためにも少しでも良いので地域活動に携わってみてください。
そして何より地域活動は楽しく、やればやるほど友人がたくさんできます。人生100年時代。気の置けない地域の友人は大切だと思いませんか?
橋謙太
東京都稲城市在住。兼業主夫。父親の子育て支援の活動等をしている「NPO法人ファザーリング・ジャパン(FJ)」メンバー。「日本パパ料理協会」副会長。父親の子育て、地域活動の楽しみ方、パートナーシップ等をテーマに講演等を行なっている。またFJにて、発達障がい児を支援する「メインマンプロジェクト」を立ち上げ講演、執筆、イベント等の活動も行っている。地域活動にては、保育園や小中学校、学童保育にて、保護者会、親父の会、PTAの代表、役員を歴任。また稲城市内の約20の“親父の会”が加盟する全国的にも珍しい連合会「いなちち(稲城父親の会)」を仲間と設立。代表を務めた後、現在は顧問。