徒競走の1位や、リレーの代表、マラソン大会の上位者。走るのが速い子は、「花形」として目立つシーンが多いもの。そのような子は、往々にしてサッカーをさせても、野球をさせても、ラグビーをさせても……「走るのが速い」ことで、どこか「得をしているな〜」という目で見てしまうものです。
このコラムでは、株式会社うごきのクリニック 代表の後藤淳一さんに、3回に渡って「運動神経の良い子に育てる方法」を伝授していただいます。
1回目は「正しい立ち方」、2回目は「正しい歩き方」を教えていただきましたが、この記事では「膝を高く上げながらその場で走る」方法を教えていただきます。
目次
膝を高く上げながらその場で走ってみよう!
運動神経の良い子は走るのも速いですよね。どんなところが上手いのか? 苦手な子との違いを考えてみましょう。
最近の子どもたちは、膝を上げるのがとても苦手です。和式トイレが減り、布団を畳んだりすることが減り、正座する機会も減りました。自然と股関節が固くなり、その結果、膝の上げ下ろしが苦手になってきています。
ケンケンをするときに、膝を上げてケンケンしないで、膝を後ろに曲げてケンケンする子がいます。これは膝を上げる動作を身体が覚えていないのです。膝を上げる動作は、人が前に進むときの重心移動にとても重要です。
前コラムでもお伝えしましたが、人が歩き出す最初の作業が「膝を上げる」動作なのです。歩く動作から少しずつ膝を上げながらスピードを上げていくと走る動作になります。速く走れる子は、しっかりと膝を上げることができるのです。
それでは走る前に、お子さんがその場で膝を上げて走れるか試してみてください。膝が上がらなかったり、体が反ってしまったり、支えている足の膝が曲がってしまったりする場合は、体幹がうまく使えていません。これは何回も繰り返し練習することで、だれでもできるようになります。この動作が正しくできるだけで、かけっこはダントツに速くなりますよ!
腿を上げてその場で走る方法
<やり方>
膝が床と平行になるまで上げながら、できるだけ速くその場で10秒間走る(もも上げ)。
<注意するところ>
・膝が床と平行になるまで、しっかり上げる
・体を反らさない
・膝の向きとつま先をまっすぐ同じ向きにする
・立ち脚(ジャンプする脚)の膝を曲げない
・リズムよくジャンプする
・足の裏全体で、しっかり地面を踏む
<動画>
「運動神経の良い子に育てる」方法をご紹介しています。
実際に選手を教えていると分かるのですが、運動神経が良いと言われてきた子が運動能力が高いとは限りません。運動神経は遺伝と思われている方も多いようですが、実際は、環境により運動能力に差が出てきます。ひとつひとつの動きを繰り返し練習ができる子は、動作が上手くなり、更に動作が改善されていきます。
また、どうすれば上手くなるかを考えられる子は、伸びるスピードも速くなります。諦めない強い気持ちを持つことも運動能力のひとつです。親御さんが、何ができたかを理解して、子どもたちを褒めることも大切です。そうすることで自信も芽生えてきます。
その場で腿を上げて走る時の注意点を記載しました。これができていないと声をかけるより、できている点に着目し、そこができていると褒めてあげてください。きっと結果が出ると思います。
お父さん、お母さん、ファイト!
後藤 淳一(ごとう じゅんいち)
株式会社うごきのクリニック代表。
スキー・水泳など多数の全日本クラスの選手の指導を経て、1998年に慶応義塾大学医学部競走部のヘッドコーチに就任。2004年より「0歳からのかけっこ教室」を主宰し、子供の運動能力の開発にも力を注いでいる。また、介護予防として、正しい立ち方・歩き方の普及に努めている。