毎日の小さな積み重ねで身に付くマナーの意識<食事を通してかたちと心を整えるマナー力の磨き方 vol.3>

【コラム】暮らしをワンランクアップ

当たり前の日常行為として、何気なくとっている「食事」。ですが、マナーに気を配ることで、ただ栄養を摂るだけの行為ではなくなり、自分を内面から高める時間にもなります。

マナーアドバイザーの山木理代さんに「食事を通してかたちと心を整えるマナー力の磨き方」について教えていただくシリーズ。第1回目では、「食事の時間をほんの少しの心がけで特別な時間にするための方法」をご紹介いただきました。第2回目には、「優しさ・心遣いを育てる丁寧な器やお箸の扱い方」について、教えていただきました。シリーズ最終回の今回は、「食事を通してかたちと心を整える」ことについて、教えていただきます。

■第1回目は、食事の時間をほんの少しの心がけで特別な時間に
■第2回目は、優しさ・心遣いを育てる丁寧な器やお箸の扱い方
■第3回目は、毎日の小さな積み重ねで身に付くマナーの意識←この記事はこちら

 

目次

食事中も姿勢が良いと、それだけで周りに好印象です

前回まで、お箸遣いや器の扱いなど食事マナーについてお話しました。
でも、実は食事の作法以前に大切なのは「姿勢」だと私は思っています。 姿勢が良いと、それだけで誠実さ感じられます。

ワインとワイングラス

正しい姿勢は何より体に負担がかからず、自然体で美しいですね。それに何より、周りの方もご一緒していて、とっても爽やかな気分になります。
姿勢を正すと、目の前の事に真剣に取り組もうというスイッチが入ります。ですから、あえて良い姿勢を心がけて食卓に向き合うと、食事という時間を大切にする心が生まれます。

ご参考までに、食事の際の良い姿勢の座り方ですが
① テーブルと自分の体の間は握りこぶし1~2個分空ける
② 椅子の座面2/3に、上半身が腰の上にのっているイメージで座り、足を揃える 背もたれを使わず座って食事をする

のが一番理想ですが、ご自宅でリラックスして長時間のお食事などは、多少崩して下さいね。

食事の際の良い姿勢は、まずスムーズな消化を促します。 それに、作り手にしてみれば、姿勢よく座り笑顔で食べてくれたら最高に嬉しいことです。 前にもお話をしましたが、命を戴くことが食事、でもあります。 姿勢の良さは“感謝の心”を全身で表してもいます。美しい姿勢でお食事をすれば、料理に使われた命達も無事に成仏して?!体のよい栄養になってくれそうです。 良い姿勢は、それだけで広く豊かな気持ちにさせてくれる姿なのです。

時にはテーブルマナーの練習もご家庭でも楽しくしてみましょう

当然、各ご家庭で毎日いただくお食事は和食だけではありません。そこで、少し洋食のマナーについてお話させて下さい。

お皿とナイフフォークスプーン

みんな大好きハンバーグステーキ。老若男女問わず不動の人気メニューですね。 ハンバーグはお箸で食べるのも美味しいですが、ナイフフォークが似合いませんか?

ナイフで全て先に切り分けてしまうと肉汁が流れてしまい、冷めるのが早く美味しさが半減します。ですから、一口ずつ切り分けて口に運ぶようにする。これが最後まで美味しく食べる秘訣でもあり、洋食のマナーでもあります。

マナーは美味しいものを美味しく食べるために考えられている、とお分かりいただけるでしょうか。 洋食のマナーではご存じの通り、ナイフフォークの置き方で周りの方へサインをします。 お皿にハの字に置くと「食事の途中」お皿を時計に見立てて3時から6時のところにナイフフォークを揃えて置けば「終了」のサインです。 この時、ナイフの刃先はお相手に敵意として映らないように内側にします。

また、ナプキンは椅子の上に置くと食事途中の離席テーブル右手に崩して置くと食事終了のサインですね。 終了時にナプキンを綺麗に畳んで置いてしまうと「美味しくなかった」と伝わります。 このような洋食のマナーは、特別な感じがして苦手と思っている方も多いようです。 でも、覚えてしまえば不必要に話をしなくてよく、スマートに食事を楽しめるので大変便利です。 上手に使いこなせるように、ご家庭の食卓でナイフフォークやナプキンを使って練習してみると楽しいお食事になります。 布のナプキンでなくても、可愛いペーパーナプキンで十分です。 お徳用のお肉でステーキやチキンソテーなどのメニューで、時には“レストランごっこ”で楽しみながらテーブルマナーを意識しながら食事を楽しんでみてはいかがでしょうか。 お金を掛けずにちょっぴり工夫して楽しめるのも、マナーがあるからこそ。

いかなる時でもマナーを生かして幸せを生むことができます

昨年春からコロナ禍が続く中で、マナーは必要ではないと思われているかもしれません。 「マナーどころではない」実際にこのようなお声を伺うこともあります。 私自身は、自粛期間を過ごしている中、マナーのおかげで心救われたことが多くあります。

外食する機会が減り、自宅での食事が増え「今日は何を食べたらいいかなぁ。」と作るのに飽きが来てしまうこともありました。でも、スーパーに行けば買い物ができて、食事ができることは幸せなこと。いつも以上に一人でも「いただきます」「ごちそうさま」を口に出し、ちょっぴりテーブルを整えて食事を楽しむよう、あえて心がけていました。

当たり前と言えば当たり前のことかもしれませんが、これで自分の心が整い「ありがたい」という気持ちが湧いてきたのです。 時には特価のお肉を見つけて思わず手に取り、ビストロ気取りで料理をしてみて。 大切にしている器にのせ、レストランには見劣りはするけれど、ナイフフォークを持って食べれば贅沢気分でした。

マナーは、どこか特別な場所に行かなくては必要がないのではなく、日常からマインドを高めて、幸せな気分を作り出すために役立つものだと実感しております。 各家庭や個人個人によって、環境も状況も様々だと思います。子育て奮闘中はやっとこ見つけた時間でお腹を満たすでしょうし、ご年配の方や体が不自由な方は食べるのも大変だと思います。だからマナーは関係ない、のではなく「感謝のこころ」を持ち続けられる人は豊かな人、ではないでしょうか。

“ありがとう”“おいしい”という心が生まれることが一番のマナーです。その心を言葉や笑顔で表すこともマナーです。 食事という行為は、人の本性が如実に現れます。食べ方は生き方でもありますから。

食器とテーブル
山木理
マナーアドバイザー。大学卒業後、都内企業数社にて秘書として勤務。 社外活動で経済界・財界の勉強会等の接遇を経験し、出逢いの中で「感謝の心を表し、謙虚な姿勢であること」「丁寧な暮らしで心を満たす生き方」が心からのマナーに繋がることを学ぶ。 マナーの魅力に惹き込まれ2008年よりマナー講師として活動をスタート。 都内スクールにて各種マナー講座やマナー講師養成に携わる。 2013年より「サロン・ド・エサンシエル」を主宰。 本質をモットーとしたレッスンは全国から受講生が訪れていて、リピート率は92%。 企業研修、大学講義、マナーコラム執筆や取材・監修等多岐に渡りマナーをお伝えしている。
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