東京都にお住まいでマッサージセラピストとしてご活躍中の藤田朱美さん。彼女が、毎日イキイキと暮らしている秘訣は何でしょうか。今夢中になっていること、おすすめのストレス解消法、健康のために意識していることなどを伺いました。
藤田朱美(ふじた あけみ)さん
一般社団法人スウェディッシュ・ディープティシューセラピー協会 代表理事
FLOWボディセラピースクール 代表
Body Therapy NY*FLOW*・オーナーセラピスト
東京都在住。一人暮らし。
目次
体に注目するセラピストの仕事
私がマッサージセラピストとして活動を開始してから、20年が経ちます。NYのマッサージセラピーのカレッジを卒業し、アメリカでセラピストとして人種や国籍を超えて多種多様な人々を施術して来ました。米国での8年の滞在を経て帰国後、今は、東京・銀座にBody Therapy NY FLOWと、FLOWボディセラピースクールというスウェディッシュマッサージの学校を運営しています。
体に注目する仕事ですが、そのためには心が整っていることも大事です。サロンでのセラピストとスクールの講師だけでなく、マインドフルネス瞑想講師の資格も生かして、セラピストに向けてのマインドフルネスの講座も行っています。
体と心など人体や人間そのものについて学んでいくことは、楽しいものです。この気持ちは、ボディセラピーを行うようになってから20年間、ずっと変わったことがありません。マッサージのカレッジ時代に自律神経やホルモンといった生理学や筋肉や骨などの解剖学をしっかり学びましたが、2020年の1月にハワイ大学で実際メスを持って人体解剖の実習をして知識を深めてきました。体については知れば知るほど、いくらでも知らないことが出てきます。心に関してもNLP(神経言語プログラミング)、マインドフルネス、瞑想、催眠療法など、多くの知識を体系的に学びましたが、心や脳について学ぶことはとても楽しく、知らず知らずの内にのめり込んでいってしまいます。それが仕事にも役立つのですから、一石二鳥です。
人体について学ぶことは、私の好奇心をくすぐります
アメリカでマッサージのカレッジに通っていた時、あるクラスでお腹のマッサージをすることがありました。生徒同士お互いがペアになり、実習をしていたのですが、私の相手のアメリカ人の女性のお腹を触った時に、鼓動を感じたのです。お腹の奥に通っている大動脈の拍動だったのですが、それがとても大きくドックンドックンと手に感じられて、本当に衝撃的でした。まるで直に心臓を触っているかの様だったのです。こんな風に血液が巡り、人は生かされているのか!と感動したことを、今でも鮮明に覚えています。それは、命を感じた瞬間でもありました。
それ以来、人体について学ぶことは、本来、誰しもが自然に持つ人間の「強さ」を学んでいるような感覚です。常に驚きと命の素晴らしさを知ることができ、好奇心は留まるところを知りません。
言ってみれば、自分の身体がサンプルのようなものなので、私は何でも自分の体を使って人体実験してしまいます。例えば、私はもう13年くらいベジタリアンなのですが、最初はお肉を食べないとどうなるのかな?というちょっとした実験のような感じでもありました。NYではレストランにはベジタリアンメニューがあったり、ベジタリアンであれば料理の差し替えも当たり前に対応してもらえるので生活しやすかったのですが、日本はベジタリアンにはなかなか難しい環境です。ベジタリアンサンドイッチと書かれていても、ベーコンが入っていたり、レストランで「お肉が食べられません」と言うと、「鶏肉はだめですか?」と聞かれたりもます。お肉を食べなくなってからは、大きな変化があったと言うより、より匂いに敏感になったり、あまりカッカと感情的にならなくなったような気がします。
デリケートな仕事のためのストレスフリーな時間
私の毎朝の日課は、瞑想です。これは、アメリカにマッサージ留学していた頃に始めました。その頃は、気が向いた時だけ瞑想していましたが、3年前くらいから毎日朝起きて、一番に行うようにしています。その時間は本当に心が休まり、一日が心豊かに過ごすことができるのです。
まずは自分とつながり、心を落ち着かせることで、芯がしっかりするというか、ぶれない心を作るトレーニングでもあるように思います。そうすることで、ストレスを解消するというより、ストレス耐性を高めて、もともとストレスを生まないようにできます。
また、健康の為に意識していることは、休みを取るということです。サロンを経営していると、どうしても仕事中心の生活になってしまいます。そこで、必ず月に一回は東京を離れて、息抜きをする旅に出て、できるだけ自然に触れるようにしています。私たち人間も地球に生きる動物の一種ですので、ずっとコンクリートに囲まれた生活ではなく、四季の移り変わりを感じ、自然に触れることで本来の自分の感覚や感性を取り戻すことができるように思います。海では砂浜を裸足で歩いて、アーシングしたり、森では森林浴をすると、体が浄化されるような気がしてとても気持ちいいのです。もともと肌が弱く、時々皮膚に炎症がでたりしますが、自然にふれることで、そのかゆみが治まってしまうこともあるのです。
マッサージセラピストの仕事は、右脳と左脳の両方を使い、その上とてもデリケートな内容です。常に、感覚を常に研ぎ澄ませている必要があります。だから、脳と心の休息をとても大事にしています。
欧米のスタンダードを各国や多方面に広げることが私の務め
これからは、日本だけでなく、アジアの国にも欧米のスタンダードであるスウェディッシュマッサージを教えていきたいですね。
リラクゼーションと不調の緩和を目的としたマッサージであり、セラピスト自身も無理せず施術が行える手技は、あまりアジア圏では知られていないかも知れませんが、クライアントもセラピストも効果を体感できますので、施術する側もセッションを楽しみながら行うことができるのです。
以前、スリランカのアーユルベータ施設に滞在して、朝昼2回のマッサージを毎日、1週間受けたのですが、毎日マッサージの手技に変化がなく全く一緒で少し残念に感じたものです。薬効成分のあるオイルを処方してもらうので、オイルの浸透が目的のアーユルベータのマッサージですが、それに加えて不調緩和の手技が入っていればいいのに…… アーユルベータの医師によって調合されたオイルを使ってスウェディッシュマッサージの手技を使うと、より効果は高まり素晴らしいコンビネーションになるのではないかと思いました。
さらに、もし叶うのであれば、医学生や体育大学生など体に関係する学生さんが解剖学を基本とするスウェディッシュマッサージを習得してもらえたらいいなと思っています。体のスペシャリストがマッサージできるようになれば、より多くの人の心と体が癒やされるのではないでしょうか? タッチを通してのケアは多くの可能性を含んでいます。そして、マッサージが人体に与える影響について研究する機関などが作れたらいいなと思います。