京都府にお住まいで宿泊施設総支配人、ならびに大学評議員としてご活躍中の蓑部亜季子さん。彼女が、毎日イキイキと暮らしている秘訣は何でしょうか。今夢中になっていること、おすすめのストレス解消法、健康のために意識していることなどを伺いました。
蓑部 亜季子(みのべ あきこ)さん
宿泊施設総支配人、京都精華大学評議員。
京都府在住。夫、母との三人暮らし。
目次
地域と宿泊客を繋ぐという、私のミッション
私は現在、宿泊施設WeBase 京都(ホステル)、たわら庵(明治30年築の京町屋宿泊施設)、三年坂庵(コンドミニアム)の総支配人を勤めています。「コミュニティホステルとして地域と宿泊客をつなぐ活動」に力を入れ、観光客だけにサービスを提供するのでなく、住民も観光客も楽しめる施設であることが重要だという思いを、常に活動の根底に据えています。ですので、 地域との協働及び地域への貢献を積極的に行い、また地域の「寺子屋」を目指し、宿泊者以外の地域の方が参加できる子どもの情操教育にかかわるイベント等を多数開催しています。
緊急事態宣言に伴う学校の休校期間には、約1ヶ月ラウンジを無料開放して小学生を受け入れ無料英語レッスン等を行ったり、祇園祭りが中止になった2020年は沈んでいる地域を盛り上げようと地域の歴史初の地蔵盆を開催したり(京都の伝統行事)、各寺院とコラボし住職にお越しいただき座禅体験や写経体験をホステルで開催したり。
また、地域の資源を利用し、老舗風呂敷屋等とコラボし伝統文化を子どもに伝え文化を保全する企画も開催していますし、コミュニケーションとは何かを考える企画も多数開催し、サインパフォーマーKAZUKIさんや手話パフォーマンスグループと共に聞こえる人・聞こえない人の理解を深める企画を行うなど、すべての人が暮らしやすい世の中を目指した企画も随時行っています。
「秘境添乗員」として活躍した15年間が、今の糧
私の前職は、秘境添乗員です。約15年活躍し、150ヶ国への渡航経歴があります。 その際に地元の民宿に宿泊し、家族総出で食事を作って家庭料理を振舞ってくれるなど地域に根差した旅を数多く経験しました。その経験をもとに、日本人にも、単に良いホテルに泊まるといった旅行だけでなく「地域を見る」ということに重きをおき、より地域に近い存在であるホステルやゲストハウスの面白さを伝える活動をはじめたのです。その一環として、大学(立教大学の観光学部など)ともコラボし、観光や宿泊施設に関する講義を行ったり、生徒と共に現在の若者の旅行スタイルの調査やこれからの観光業の進んでいく道を研究するなどのプロジェクトを行っています。
また京都こども食堂へ寝具の寄贈や無料宿泊プレゼントを実施、単に宿泊客に泊まっていただくという宿泊施設でなく、「地域と共に生きる」場所であれるように、という努力も欠かしません。
「お客様の笑顔のために」がモットー
私が人生で楽しいと思うことは、当館にお越しいただくお客様の笑顔を見て、思い出に残る旅のお手伝いをすることです。 お客様の笑顔のために、常に新しい情報を提供できるように努めています。神社仏閣や飲食店、また新しい観光スポットなど、時間があるときは常に新しい情報に触れられる場所に出かけ、また新しい出会いがあるよういろいろな場所に出かけています。そして、その出会いをWeBaseでのイベント企画につなぎ、イベントに地域の方にご参加いただくことでコミュニティの場所を作っています。 例えば、祇園のイタリアンに行った際のシェフと仲良くなり当館で料理教室を開催してもらったりもしました。
また、私が夢中になっていることは、京都の様々な場所の写真撮影に行くこと、そして、その写真と情報を公式SNSで発信することです。私は、社会人人生の大部分を秘境添乗員として過ごし、世界中の魅力的なスポットをお客様にご紹介してきました。「一緒に来てよかった」「また蓑部さんと旅行をしたい」とおっしゃっていただける喜びを糧に接客業を続けてきたので、やはり現在も自身が発信した情報により、「そこに行ってきました」や「おすすめのスイーツを食べてみました」とフォロワーの方からの連絡があると嬉しいです。さらに、そのような連絡、反応が増えるようになったことで、私自身、さらなる意欲がわいてきた感じです。
そこで現在は、SNSマーケティングを勉強しています。特に、フォロワーの4割近くが京都の地元の方なので、その方々が日々投稿されていることも時間をかけチェックし、コメントを返すなど、こちらからの一方的な情報発信にならないよう「アカウントの向こうのWeBase京都のフレンドリーさやぬくもり」が伝わるような運営を心掛けています。
魅力的な街・京都で、心も身体も満たされるように
私のストレス発散方法は、自然を感じる場所に出かけること、踊ること(ZUMBA)などです。15年、ヒマラヤの上や砂漠など自然を常に感じられる仕事をしていたこともあって、室内にこもっていると息苦しく感じることがあります。 そんな時は市内を流れる鴨川に散歩に出かけたり、比叡山などに足を運んでいます。そういう意味で、京都は都会と自然が共存しており、少し足を延ばせば自然を感じる場所が沢山あることが、京都の最大の魅力であると感じますね。
また以前、一時期、舞台人として活動していた時代の名残りで、現在も踊ることが大好きなのでジムのダンスレッスンなどに参加して、ストレスを発散させることもあります。
健康維持に関しては、意識をして休憩や休みを取ることを心がけています。 添乗員時代は常にお客様から連絡が来る、24時間体制でいることが普通でした。それが働くうえでの自分の基準になってしまったため、現在でも休みを気にせずに仕事を続けてしまっていることがあります。でも、年齢を重ねてきたので、それでは健康のためによくない…と思うようになり、意識的の何もしない日を決め、自分の為の時間に充てるようにしています。
また、転職後は新しい業界に馴染むことに時間が取られ、以前はしていたトレッキングなどをしなくなり運動量が減ったので、弊社が運営している施設間の移動などはなるべく徒歩でウォーキングしながら移動するようにしていいます。
多様な人材の創出、多様な活動の展開を
これからは、多様な人材が活躍できる職場を実現するためのチャレンジをしたいですね。
例えば、2020年は「聞こえる人・聞こえない人」の間のバリアを破壊するという企画を何度か開催しました。私は、聴覚障害の方の「人の気持ちを表情や態度から読み取る能力」には突出したものがあると考えており、それこそが接客業においては最も必須なものであるが その能力を表舞台で生かせるような採用が日本にはまだまだ少ないのが現状です。なので、今は、宿泊業の顔であるフロントで活躍していただける採用と接客の仕組みを実現したいと思っています。
また、今季から京都精華大学で評議員をつとめることになり、様々な大学とのコラボ企画も増えたのでWeBaseをインターンの場所として使ってもらえるようにしていきたいですね。加えて、WeBaseのコンセプトは「世界の若者を応援」なので、WeBaseから世界に羽ばたく人材を育てるサポートができれば最高です。
今後の目標は京都にコロナ禍の以前にあったオーバーツーリズム問題を解消する方法を模索し、観光客と地域住民がともに共存できる京都を作り上げることです。 また、コロナ禍で未曽有の危機の真っ只中という現在において、観光業から去っていく事業者も多い中、京都での観光で生きていく道を諦めず、どの業種においてもそれぞれが歩み寄り、信頼関係を育み業種を超え京都を守り、そして「京都の観光で働くっていいよね」と思ってもらえる京都の観光業界を作り上げるサポートがしたいです。