「令和元年版内閣府男女共同参画白書」によると、専業主婦世帯606万世帯に対し、共働き世帯は1,219万世帯と、その数は倍以上になっています。
夫婦ともに外で働く家庭が増えたことで、これまでの性別で役割を分担していた意識が大きく変化してきていると感じます。
家計管理もまた、これまでのやり方ではうまくいかなくなっていると感じるのであれば、見直しが必要です。
今回は、共働き家庭の家計管理について、お互いの不安や不満を減らすためには何が必要なのかを考えてみましょう。
目次
共働き家庭の家計管理が難しく感じるのはなぜ?
まずは共働き家庭の家計管理の問題点を確認してみましょう。
共働き家庭は、入り口が複数あるから複雑
収入の入り口が2つあるということは、少なくとも管理する口座は2つ以上になるので、家計にどれだけのお金が入ってきて、どれだけのお金が出ていくのかが把握しづらくなります。
また、お互いの収入を開示していない場合、子どもをどちらが扶養した方がいいか?など、適切な判断ができないことで不利益が生じる場合もあります。
複雑になりがちな家計管理をできるだけシンプルにするためにも、夫婦間の信頼関係を築くためにも、最低限の情報開示は必要です。
夫婦お互いに、危機感が薄くなりがち
夫婦のどちらにも収入があると、日々の生活には支障が出にくいことから、ひとつひとつの出費に対して、判断が甘くなりがちです。
また、交際費や被服費、外食費など、外に出る機会が増えることで、増える支出もあります。
お互いに「相手が貯めているだろう」という安心感から、自発的に貯蓄に取り組む気持ちを維持しにくい場合もあります。
ある程度の自由になるお金があるだけに、危機感が薄くなり、将来への備えが手薄になりがちなご家庭もあるのではないでしょうか。
現在の貯蓄額やこれからの必要になるお金を明確にすることで、「こんなはずじゃなかった!」と後悔することを避けられます。
家計管理にかけられる時間が少ない
自宅にいる時間が少なくなるので、家計管理にかけられる時間も自ずと少なくなりがちです。
仕事で疲れて帰宅し、食事の準備や子どもの世話をした後に、家計管理にまで手が回らないのは、ある意味当然かもしれません。
時間がかけられないことを前提に、なるべく手間のかからない管理を心掛ける必要があります。
また、管理だけではなく、家計について夫婦で話し合う時間も取りにくくなります。
「毎月第○日曜日22時~は夫婦で情報共有する時間」といったように、意識してあらかじめ時間を確保しておきたいですね。
共働き家庭の家計管理には、情報の「開示」・「見える化」・「共有」が大切なポイントだといえます。
ポイントを意識しながら、さらに管理の仕方について考えてみましょう。
共働き家庭の家計管理の仕方は大きくわけて3つ
共働き家庭の家計管理は大きくわけて3つあります。それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。
負担分担パターン
それぞれが支出の負担を分担するパターンです。
夫は20万円で妻は15万円、といったように「金額」を決める場合と、住居費などの固定費は夫で、食費などの変動費は妻、といったように「費目」で決める場合とにわけられます。
メリットとしては、
- 支出に対しての責任感が生まれる
- 不公平感が少ない
- それぞれに自由になるお金がある
などが挙げられます。
デメリットとしては、
- 家計の全体像が把握しづらい
- 貯蓄が後回しになりがち
- 収入の増減に臨機応変に対応しづらい
などが挙げられます。
このパターンの場合は、
- どのように負担を分担するかを事前にしっかり話し合う
- 貯蓄金額を含めた上でそれぞれの負担を考える
- 収入や支出に変化があったときに随時見直す
ことを意識しておくといいでしょう。
収入合算パターン
夫婦それぞれの収入を合算して、1つの財布として家計を考えるパターンです。
メリットとしては、
- 家計の全体像が把握しやすい
- 無駄や節約ポイントを見つけやすい
- 計画的に貯蓄しやすい
などが挙げられます。
デメリットとしては、
- どちらか一方に家計管理の負担がかかりがち
- 家計管理に関与していないと無関心になりがち
- それぞれが自由に使えるお金が少なくなりがち
などが挙げられます。
このパターンの場合は、
- それぞれの強みを活かして、二人ともが家計管理に関わる
- どちらか一方に決定権が偏りすぎないように注意する
- 自由に使えるお金の使い方にはお互い干渉しない
ことを意識しておくといいでしょう。
片方全額貯蓄パターン
どちらか一方の収入だけで家計をやりくりし、もう一方の収入は全額貯蓄するパターンです。
メリットとしては、
- まとまったお金を貯蓄できる
- 一方が働けなくなった場合にも生活を維持しやすい
- 支出を把握しやすい
などが挙げられます。
デメリットとしては、
- それぞれが自由に使えるお金が少なくなりがち
- 一方の名義の口座にだけ貯蓄が増える
- 貯蓄優先になり過ぎる
などが挙げられます。
このパターンの場合は、
- 貯蓄の目的や金額を明確にする
- 双方の口座にわけて貯蓄をする
- 個人の裁量で使えるお金を確保する
ことを意識しておくといいでしょう。
それぞれにメリット・デメリットはあるので、ご夫婦で譲れないものやある程度は妥協できるものを話し合い、わが家に合う方法を見つけましょう。
家計管理で共有したい3つの情報
共働き家庭の家計管理には情報共有が不可欠ですが、情報の中にはさまざまなものが含まれます。
家計管理をするうえで、夫婦間で特に共有しておきたい3つの情報をご紹介します。
「現状」を共有する
まずは、「現状」です。
毎月の収入・支出や現在の貯蓄額を夫婦で共有できているでしょうか。
共有以前に、もし二人とも把握できていないのであれば、まずは現状把握から夫婦で一緒に取り組んでみるといいですね。
現状がわからなければ、課題も見えないし、課題がわからなければ、改善もできません。
まずは現状を夫婦でしっかり共有することを優先にしましょう。
「これから」を共有する
「マイホームは持ちたいか?」
「子どもの教育費はどこまで準備するか?」
「リタイア後はどんなことをしたいか?」
家族のこれからについて、夫婦で話し合ったことはありますか?
家計管理を頑張るのは、これからの自分たちがやりたいことや、備えておきたいことにお金を使えるようにするためです。
“なんのために”が分からないと、人はなかなか頑張れません。
逆に言うと、“なんのために”が明確になっていると、人は頑張れるし、頑張ることを楽しめるようにもなります。
お互い共通の目標に向かって頑張ることで、家族のチームワークもより強固なものになるはずです。
「気持ち」を共有する
自分が感じていること、必要としていることを言葉にして、相手に伝える。
相手の感じていること、必要としていることを自分の勝手な解釈を加えずに、理解しようとする。
夫婦といえでも、なかなか難しいことではないでしょうか。
家計管理のお悩みを伺っていても、夫婦感で気持ちを共有できていないことでのすれ違いが多いように感じます。
例えば、現状を共有したくても、相手が共有することに同意してくれないこともあるでしょう。
そんな時には、現状が把握できていないことに不安を感じていること、お金の使い方を詮索したり、責めたりしたいわけではなく、将来のために一緒に協力したいと思っていることをまずは伝えてみるといいかもしれません。
現状を共有したくても、相手が関心を示してくれないこともあるかもしれません。
そんな時には、家族のことを夫婦で一緒に考えられないのは寂しく感じることや、一緒に問題を乗り越える過程でお互いをもっと理解し合いたいと思っていることを伝えてみるといいかもしれません。
まずは自分の気持ちを伝えて、自分が必要としていることを具体的にリクエストしてみる。
リクエストに応えることを強要はできませんが、リクエストもしないまま「無理に決まっている」と諦めてしまうのはもったいないのではないでしょうか。
家計管理を続けるなかで、「どうして自分ばかり・・・」と感じることもあるかもしれません。
不満の元になっている自分の気持ちや、何を必要としているのかを自分自身でも改めて掘り下げて考えた上で、相手にリクエストしてみることをオススメします。
共働き家庭の家計管理の不安や不満を減らす3つのコツ
お金に関する不安や不満は、夫婦であってもなかなか話しづらいことかもしれません。
お互いに感じている不安や不満を伝え合うことももちろん大切ですが、少し自分が意識するだけで、お互いの小さな不安や不満を減らすこともできます。
数字で伝える
日々、家計に意識を向けているのであれば、「今のままでは大変なことになる!!」ということが体感的にわかるかもしれません。
けれど、普段、家計管理をパートナーに任せっきりにしている場合は、「このままじゃダメだ」と言われても、何がどれくらいダメなのかを具体的にイメージすることが難しいでしょう。
「このまま」や「ダメ」が、具体的にどういう状況なのかを数字で表すことで、ようやくお互いが同じ目線で、同じ情報を元に話し合うことができるようになります。
「このままじゃダメだ」ではなく、「現状、毎月5万円ずつ赤字を出している状態で、これが続くと2年後には貯蓄が0円になる」と伝えられれば、具体的にイメージしやすいはずです。
具体的にイメージできるということは、解決方法も具体的に考えやすくなります。
パートナーに家計の話をするときには、「数字で伝えられないか?」を意識するようにしましょう。
お互いの価値観を尊重する
お金の使い方は価値観を大きく反映します。
そして、満足度の高いお金の使い方は人それぞれ違います。それは、夫婦であったとしても。
どうしても家計管理をメインに担当している人の主観でお金の使い方を決めがちですが、お互いの価値観に合ったお金の使い方ができているか、を意識しておくといいでしょう。
例えば、家電を買うにときに、安さを重視する人もいれば、デザイン性を重視する人、機能性を重視する人もいるでしょう。どれが正解というわけでもありません。
使えるお金には限りもあるし、パートナーの希望と自分の希望が相容れないときもあるでしょう。
いつでもお互いの価値観に合ったお金の使い方ができるとも限りません。
それでも、お互いの価値観を尊重したいと思っていつつの選択かどうかは、相手に伝わるはずです。
自分の価値観もパートナーの価値観も、両方とも尊重する。そんな姿勢はお互いの不安や不満を減らすのに役立ちます。
公平性を大切にする
パートナーが必要のない不安や不満を抱かないために、公平性を大切にしましょう。
特に家計管理はどちらか一方がイニシアチブを取ることがあるからこそ、ある一部分で公平性を欠くと、家計管理全体やご自身への信頼を損なってことにもなりかねません。
たとえば、お小遣い制度を導入するのであれば、二人ともに導入しましょう。
「使わないから」と妻にお小遣いを設定していないご家庭もありますが、実は妻個人の支出が家計に紛れていることが多々あります。
そしてその額を計算してみると、夫に渡しているお小遣いよりもずっと多いことも。
これは、夫婦のお小遣いを平等にするべきだ、ということではありません。どちらか一方が多くても、それをお互いが納得していればいいのです。
とはいえ、妥当かどうかを判断するためには、どちらか一方の個人の支出が家計に紛れていてはその判断ができません。だから、お小遣い制度を導入するのであれば、二人共に導入するとで、公平性が保てます。
「これくらい」と思うようなちょっとしたことでも、パートナーの信頼を失ってしまう可能性があることに注意が必要です。
パートナーシップを育むためにできること
これまでお伝えしてきたように、共働き世帯が家計管理をする上で非常に大切なのは、パートナーとの関係性だと言えるのではないでしょうか。
どれだけ手間いらずの完成度の高い家計管理方法を確立したとしても、そこにパートナーシップがなければ、満足度としては低くなってしまうでしょう。
そこで最後に、パートナーシップを育むためにできることを考えます。
日頃のコミュニケーションを大切にする
「お金の話をしようとしても夫が(妻が)聞いてくれない」という声を耳にします。
普段から何気ない話を二人でしていないのだとしたら、急にお金の話をしようとしても、相手が避けてしまうのは自然なことなのかもしれません。
特に、お金の話は、自分の権利を守りたい気持ちが自然と働き、とついつい対決モードになりがちです。
お金の話をするのは難易度が高いと心得、まずは日常生活のなかでのコミュニケーションを増やすことからはじめるといいのではないでしょうか。
じれったく感じるかもしれませんが、普段からパートナーの考えていることを知っておくことは、家計管理をする上でも役立つはずです。
気持ちが伝わる手段を考える
コミュニケーションを図るうえで、お互いに好意を感じているかどうかはとても大切です。
「相手はパートナーなのだから、もちろん好意はあるに決まっている!」と思われるかもしれませんが、果たして相手にその好意は伝わっているでしょうか。
そして、相手の好意を自分自身が受け止められているでしょうか。
そう改めて聞かれると、少し答えに躊躇してしまう方もいるはずです。
実は、思いを伝えるには人それぞれ「得意な伝え方」があると言われています。
結婚カウンセリングの専門家であるゲーリー・チャップマンは、愛情を表現するには次の5つの言語があると説明しています。(参考:ゲーリー・チャップマン著「愛を伝える5つの方法」)
- 肯定的な言葉(賞賛や感謝の言葉)
- クオリティタイム (一緒に過ごす充実した時間)
- 贈り物(相手のことを思って贈り物を用意し、プレゼントすること)
- サービス行為(相手がやってほしいと願うことを実際にしてあげること)
- 身体的なタッチ(スキンシップ)
どの言語(表現)が自分の愛情を示しやすいのか、相手からの愛情を受け取りやすいのかは、人によって異なります。
人それぞれに使いやすい言語(表現)があるので、夫婦間で使いやすい言語が違う場合は、誤解を招く場合もあるかもしれません。
日本語がまったく分からない相手に「愛しているよ」と伝えても、こちらの愛情が相手には伝わりにくいのと同じです。
英語しかわからない相手なら、「I love you」と伝えた方が、自分の気持ちがずっと伝わりやすいですよね。
夫婦は一見会話ができているので、ついつい自分の思っていることは相手に伝わっている、相手の思っていることは自分に伝わっていると思いがちですが、必ずしもそうではないという視点を持っておくことが大切です。
関係を変えるにはまず自分から
自分が頑張れば頑張るほど、ついつい相手にも期待したり、求めたりしてしまいがいちです。
「こんなに頑張っているのに、どうして相手は・・・」
「こんなに尊重しているのに、どうして相手は・・・」
パートナーに対して怒りの気持ちが湧いてくることも時にはあるかもしれません。
そんなときには「損得」や「勝ち負け」の視点で、パートナーとの関係を見てしまっているのかもしれません。
自分とパートナーを比較して、優劣や勝ち負けを競っても、幸せなパートナーシップを育むことはできません。
まずは自分ができることをやりきることに集中しましょう。
自分の目指しているものが良いパートナーシップを育むことなのであれば、その目標を達成するために、仮に相手が何もしてくれなかったとしても、自分が行動することで確実にその目標に近付くことはできるはずです。
目先の損得や勝ち負けにこだわる方がいいのか、自分の目指すものに近づける方がいいのか、迷いが出てきたら自分に問いかけてみましょう。
共働き家庭の家計管理には、“家族はチーム”という意識が欠かせません。
夢や目標に向かって、家族が応援し合ったり、協力し合ったりできる関係でいること。そのためには、情報や思いを共有し合える関係が必要です。
その関係がしっかりとできていれば、日々の管理方法にそれほどこだわらなくても、満足度の高い家計管理ができるのではないでしょうか。
家計管理の見直しをきっかけに、さらに幸せなパートナーシップを育んでくださいね!
AFP/2級FP技能士/メンタルオーガナイザー
20代前半での父親の看取り介護を機に、“お金”と“心”の整え方を学ぶ。
現在は、お金のことが苦手だった自身の経験をもとに、子育て中の母目線での執筆活動や、働きたい女性に向けて家計管理の仕組みづくりのサポート、マネー講座の講師業を行っている。
ラーゴムデザイン 代表
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