コロナ禍で、公共の交通機関での移動を控え、自転車や自家用車で移動する人も多いことでしょう。そんな中、意識しておきたいのは「万が一の場合」のこと。過去には、自転車で走行中に歩行者とぶつかり、後遺障害を負わせたとのことで被害者側が多額の賠償金を請求する、といったケースが報道されたこともあります。
また、移動に伴う事故や怪我だけではなく、例えば、通りがかりに陳列商品を壊してしまった、子どもが駐車場で他人の車を傷つけてしまった、飼い犬が散歩中に通行人に噛みついた、マンションの自室で水漏れが発生し下階の居住者に迷惑をかけてしまった……など、第三者である他人の「身体」や「財物」に対して損害を与えた場合には、「個人賠償責任保険」が対象となります。ここでは、ぜひ知識として知っておきたい「個人賠償責任保険」について役立つ情報を、まとめてご紹介しています。
目次
知っておきたい個人賠償責任保険 まず、どうやって加入する?
個人賠償責任保険とは、日常生活で起こる事故によって他人の物を壊したり、けがをさせたりした場合に負う賠償責任に対して保険金を支払う保険です。第三者である他人の「身体」や「財物」に対して損害を与えた場合が対象となり、幅広く補償されます。
ただしご自身のけがの補償は対象外となります。自分のけがも補償したい場合には、傷害保険に加入することで対象となります。
「自転車で走行中に歩行者とぶつかり、後遺障害を負わせた」「子どもが駐車場に停めてあった他人の車を傷つけた」「飼い犬が散歩の途中に他人を噛んでけがをさせた」「お店で商品を見ていた際に落として壊してしまった」「洗濯槽から水が漏れてマンションの下の部屋に被害を出してしまった」
「スキーをしていたら他の人と接触してけがをさせてしまった」などの場合も、保証の対象となります。
加入に関しては、
- 火災保険・自動者保険・傷害保険・自転車保険に特約として付帯する
- 共済に付帯する
- クレジットカードに付帯する
といった方法があります。クレジットカードに付帯する場合は、わざわざ加入手続きを取る必要もありませんので、一度確認してみると良いでしょう。
▼詳しくは、この記事をご覧ください。
自転車事故で高額賠償請求が増加傾向に
2015年に実施したアンケートではありますが、20歳~60歳の男女500名を対象に調査したところ、56%を超える人が「自転車に乗っている」にもかかわらず、万が一の場合に備えている人はその内の28%しかいなかった、というデータがあります。
近年、自転車事故で数千万円の賠償金支払い判決がでる事例も増えてきています。医療保険でカバーされるのは、自身の治療に関する保障の部分。他人にケガをさせてしまった場合の保障はありません。「私は大丈夫!」とは決して思わず、万が一のために自転車保険や個人賠償責任保険へに加入することは、自転車を利用する人の最低限のマナーではないでしょうか。
▼詳しくは、この記事をご覧ください。
義務化されつつある自転車保険への加入
このような状況を受けて、兵庫県では全国初の事例として、「自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」を制定し、平成27年4月1日付で施行されました。この条例に基づき、平成27年10月1日より、自転車損害賠償保険等への加入が義務付けられました。
以降、この動きは全国的に広がり、2020年3月時点では、自転車保険の加入を義務化しているのは6府県(埼玉県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鹿児島県)・6政令市(仙台市、さいたま市、相模原市、名古屋市、京都市、堺市)でしたが、2020年4月より、東京都・愛媛県・奈良県も義務化されました。
これらの都府県・政令市において自転車保険に未加入でも法的に罰せられることはありませんが、条例で義務化となっている地域なので「条例違反」になります。罰せられることはなくても、自転車は身近な乗り物だけに、いつ自分が加害者や被害者になるかわかりません。
万が一のときのリスクに備えて、自転車保険などの個人賠償責任に関する補償がある保険や、ケガで入院や通院に関する保障がある医療保険などの加入や見直しを検討してみることも必要です。
▼詳しくは、この記事をご覧ください。
今からでも間に合う、保険への加入
自転車の車両同士の接触事故だけではなく、自転車と歩行者の接触事故も発生しています。警視庁が発表している『自転車事故分析資料(2018年中)』によると、2018年の1年間、東京都内だけでも事故件数が3万件を超えています。また、2016年度の資料では全国で年間約50万件の自転車が絡む事故が発生しています。
「万が一、自分や家族が自転車事故を起こして相手にケガをさせてしまったら、どれだけの金額を相手側に支払わないといけなくなるのか」と考えると、不安になる方も多いかもしれません。
過去の裁判事例でも、事故の相手が「意識が戻らない」「言語機能の喪失」などの後遺障害が残った場合だけではなく、相手が死亡してしまった場合でも、被害の大きさによっては数千万円~1億円近い金額の賠償金を支払わなければならないケースもあります。
また、反対に自分や家族が自転車事故の被害に遭ってしまった場合、ケガで入院や通院が必要になってしまう可能性が高くなることも考えられます。
▼詳しくは、この記事をご覧ください。
最後に
自転車事故を中心に、個人賠償責任保険への加入について見てきました。
何気ない行動が大きな事故に繋がる可能性は、日常に潜んでいます。何かが起こってからでは遅い、そのことを肝に命じて、しっかりと「万が一の場合にも備えておく」こと。これが、私たちに課せられている責任でしょう。