子どもと向き合うことの難しさ。
テレビや雑誌で見かける「幸せな親子」のイメージ画からは想像できないような毎日に、なんで私ばっかり!どうしてうちの子は!などの感情を抱いてしまうことも少なくないはずです。親にも常に余裕があるわけではない、それが現実。感情の生き物である限り、親だって自分の心に嘘はつけないものです。
では、どうすれば感情に左右されずに子どもと関わる事ができるのでしょうか。
3回にわたって、子育てアドバイザーの高祖常子さんに「感情的にならない子育て」のコツを教えていただくシリーズ。第1回目は「感情的にならない子育て」がなぜ必要なのか?を、第2回目は感情的になってしまうことの弊害と、子どもへの向き合い方のコツを教えていただきました。
最終回となる今回は、「もちろん、そうした方がいいとは思うけど、時間と心の余裕がない!」という方も多い方のために、そんなときには、どうしたらいいのかについて、教えていただきます。
■第1回目 「感情的にならない子育て」がなぜ必要なのか?日本の現状について
■第2回目 子どもを育む~子どもとの向き合い方のコツ~
■第3回目 感情的にならない、親自身の心と生活の整え方 ←この記事はこちら
目次
怒りは第二次感情~自分は何に困っているのか?
怒りのクールダウンをした後、「そもそも自分は、なぜこんなに怒っているのか」ということに注目してみましょう。怒りは第二次感情と言われています。怒りの手前の気持ちを言語化してみるということです。
たとえば、「おもちゃを片付けて!」と言ったときに、子どもが「イヤだ」と言った場合の親自身の気持ちです。「この年齢なら、時間を見て、そろそろ片付けた方がいいとか、考えられないのか?」「私の言い方が悪いからなのか?」など、子どもの成長・発達や親自身の関わり方に対して心配や不安があるのかもしれません。または、「私だって、やることがいっぱいあるのよ。片付けないと次のことができないでしょ」「パートナーはやってくれないから、私ばかりが忙しい!」など、不満や疲れがあるかもしれません。
そのイライラの手前の気持ちに注目して、可能なものは手当てをしてみるということです。子どもの成長・発達やかかわり方が心配なら、専門職などに相談してみるのも一案です。パートナーが手伝わないことに苛立つなら、パートナーと役割分担ができないか相談してみるといいでしょう。時間がないなら、ちょっと時間を長く取ってみたり、朝やること、夜やることを入れ替えてみるのも一案です。
「同じようなことで毎日怒っているな」と思ったら、どうしたら怒らなくていいのかを考えてみるということです。
パートナーとコミュニケーションを通して解決する
目の前の役割分担については、前述しましたが、コミュニケーションの方法もちょっと工夫してみることが大事です。「あなたは何もやってくれなくて、なぜ私ばっかり、忙しいのよ!」と怒りをぶつけてしまうのは、アグレッシブなコミュニケーション。相手も、急に怒りをぶつけられていい気分ではありません。そもそもそんなにあなたが困っていることに、相手が気付いていないことの方が多いでしょう。
子どもとのコミュニケーションでもそうですが、I(アイ)メッセージで伝えることが大切です。
「朝は忙しくて、つい子どもにイライラしちゃうから、子どもの着替えを手伝ってほしい」という感じです。「私はこれで困っているから、こうしてくれないか」という伝え方を心がけてみましょう。もちろん、パートナーも「そうか、でもちょっと時間が足りないね」ということなら、「じゃあどうしたらいいのか」をお互い相談するということです。
たとえば「ちょっと早く起きてみる」とか、何を着るかを子どもが選ぶのに時間がかかるなら、前日の夜に子どもと選んでおくなどの方法もあります。
「いろいろ工夫してもやっぱり時間が足りない」ということなら、家事時間を短縮するために食洗器を取り入れるなどの方法もあるでしょう。または保育園への送りをファミリーサポートに頼むなど、外部の手を借りるという方法もあります。
パートナーと働き方や今後について話し合う
専業主婦だけど「働きたいと思っている」という方も多くいます。でも、パートナーにその気持ちを伝えていない人も少なくありません。「ちっとも家のことをしてくれないから、働けない」という気持ちが、子どもへのイライラにつながっていることもあるのです。
ぜひ夫婦で協力して、片方がやりたいことを我慢する暮らし方にならないようにしてみましょう。
ワーク・ライフ・バランスと言って、仕事と生活のバランスについても言われることが多くなってきました。夫婦共働きの時は、どちらかがプロジェクトで忙しくなる、仕事に関する試験勉強をしたいなどもあるでしょう。これも、ぜひ、状況や気持ちを共有して、夫婦や家族で協力し合えるよう体制を考えるといいでしょう。
ワーク・ライフ・バランスは、夫婦半々とか、いつも同じである必要はなく、子どもの成長や家族それぞれの状況によって、その時々でいいバランスを見つけていくということです。そのすり合わせを夫婦や子どもも含めて家族でしていくことで、応援し合える家族関係になっていくと思います。そんな家族関係になれば、いつも怒鳴り合ったり、叩いて言うことを聞かせるなんて言うことはなくなるのではないでしょうか。
居心地のいい家族関係を作っていくことが、子どもに感情的にならずに子どもを育むことにもなります。また、親自身もやりたいことを実現できる、応援し合える関係作りにもつながるでしょう。
高祖常子
子育てアドバイザー、キャリアコンサルタント。
資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。
各NPOの理事や行政の委員も務める。子育てと働き方などを中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。
著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。