子どもの自立・親の自立とは?<中高生と良い親子関係を築くには?Vol.2>

【コラム】暮らしをワンランクアップ

子どもとの時間。かけがえのない大切な瞬間であると頭ではわかっていても、いざ勉強のこととなると熱が入ってしまい、親子関係に影響を与えてしまうシーンもあったり。前回、中高生との親子関係についてアドバイスをくださったのは、学習塾「ソラオト」を経営し、多くの中高生と出会ってきた奥野貴俊さん。今回は奥野さんに、子どもの自立・親の自立というテーマでお話をいただきます。

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目次

子どもが自立するとはどういうことか

前回、保護者の方からの「コツコツ日々勉強をしてくれない」という声を紹介しました。

しかし、子どもの目線からみると、多種多様な言い訳はあるにせよ、「ただただ面倒くさい」の一点にほぼ集約されます。
言い換えると、「テストの点数が悪くても、どうってことない」ということになります。自分の人生をまだまだ引き受けられていないということを意味します。

勉強をしない子どもと、勉強してほしい親との間のこの大きなギャップはなかなか埋まりません。また親の言うことはなかなか聞かない・聞いてもらえないという親子の関係性はいつの時代もあるように思います。

高校生の娘
そういう場合に第三者である我々のような人間の出番となるのですが、よく中高生に、「親は永遠ではない、事故でも無い限り、君の親は先に亡くなる。そのときに君は自分で生きていけるか?」と問いかけます。

「それは困ると今思うのであれば、君は現在、親に甘えている」というと中高生は答えに困ってしまいます(笑)。
親に甘えないというのはどういうことか、それは「勉強だけでなく、スポーツや友人付き合いも全力で取り組み、様々なことにチャレンジすることだ」という話をします。

「人は一人では生きていけない、まわりのサポートがあってこそ、充実した人生を歩むことができる。まわりのサポートを得るには、何事も一生懸命取り組んでいないと理解を得ることはできない」という内容の話を伝えます。

そこで大事なのは、そういう問いかけに対して、子どもたちがどう考えるのかを周りの大人がよく聴くことです。結論は必要ありません。お互いに理解できるところと理解できないことを話し合い、よく聴きます。

親が自立するとはどういうことか

一方、前回体験授業のときの話をして匂わせましたが、親の子離れ、言い換えると親の自立のほうが我々から見ると難しいことが多いです。以降お話することは、やはり私の体験と経験に基づくお話になりますし、多くの保護者の方にも当てはまる可能性が高いので、少し気後れしますが、避けて通れないことですのでお話します。

現在、都内には数多くの私立中学校が存在します。
様々な理由で近所の公立中学ではなく、電車で通う私立中に通っている中学生が本当に多くいます。

「様々な理由」で進学先を私立にした方の中に、私が気になっている理由がひとつあります。それは、「高校受験はうちの子には無理だと思うから」というものです。
この無理というのは先の問題、「日々コツコツ勉強して志望校を目指す」ということなのだと理解していますが、言い方を換えると「小学生の間であれば、親のがんばりで上手くそそのかせながらなんとか入学させられる」というように見て取れます。

しかし、本当に親がすべきことはそういうことなのでしょうか。私は15歳という年齢で、ある程度自我が芽生えた上で迎える人生最初の関門である高校受験というものにチャレンジすることをしっかりと見守ることのほうが重要だと考えています。
高校受験で上手く行かなくても大丈夫です、それこそ高校も非常に多くの選択肢があります。親が先回りをして、せっかくの関門を取り除いてしまっては、大きく成長するチャンスを摘んでしまいます。これが前回冒頭に紹介した”spoil”の一例です。つまり、親は子どもの人生を”spoil”しないということが重要だと考えています。

また受験だけでなく、日々の学習についても保護者の方から聞こえる声として多いのが、「親はどうすれば良いのでしょうか」というご質問です。
その場合、保護者の方にお伝えしているのは「お子さんを信じて、できる限り放っておいてください」と伝えます。そして「中高生は最終的に責任を負うことは無理ですので、何かあったときにだけしっかり守ってください」という話をします。親は子どもの人生に既に大きな影響を与えているので、関わりすぎず、親は親の人生を少々わがままに歩んで頂きたいと思います。「それでも勉強しろ!と言いたくなったらどうぞしてください。親なのですから。」という話をします。

内田也哉子さんが樹木希林さんから受けた教育

この原稿を書いている際、たまたま観たテレビのトーク番組で女優の内田也哉子さんがお話されていたエピソードが、まさに今お伝えしようとしていることを分かりやすく示していました。

簡単に紹介しますと、内田さんの実家の階段はコンクリート打ちっぱなしで、手すりが片方しかなく、いつ落ちてもおかしくないデザイン重視なものだったそうですが、普通なら子どもが落ちてはいけないので先回りをして手を差し伸べそうになるところ、母である樹木希林さんは幼い内田さんをあえて押したそうです。
そこで内田さんは落ちる恐怖を学んだそうです。
そして手すりをちゃんと持って昇るよう促されたそうです。

落ちる一歩手前というところまでは「見守る」、そして「必要なときに手を差し伸べる」という指導法。これは子どもにとっては自分で経験し考えなくてはならないので厳しい環境だと思いますし、親の立場からは、言葉で言うのは簡単だけれども、実行するのはなかなか大変なことと思います。
そして、それはお母さんの愛情の裏返しでもあるように思います。

まとめ

2回に渡り、「Spoilしない親子関係」というテーマでお話ししてきました。

親の愛情表現は十人十色だと思いますが、今一度、これを読んでくださった方の愛情表現が”spoil”になっていないか、振り返ってみるのはいかがでしょうか。これを書きながら、私自身も戒めとして、日々過ごしたいと考えています。

 

奥野貴俊
1973年三重県生まれ。東京・三軒茶屋の個別指導学習塾ソラオト共同代表(英語担当)。工学院大学大学院工学研究科修士課程終了(情報学専攻)、2003年英国シェフィールド大自動制御システム工学部博士課程終了(Ph. D)。2005年リオン株式会社勤務(R&Dセンター)。2010年英国アルスター大学Intelligent Systems Research Centre研究員。2014年工学院大学情報学部非常勤講師。学生時代から音響信号処理を専門とし、リオン株式会社ではディジタル補聴器の研究開発に従事。アルスター大では、脳における聴覚信号処理の研究に従事。その後独立し、2014年にソラオトを共同設立。著書に『MATLABではじめるプログラミング教室』(コロナ社)。
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