お得な制度として随分と浸透してきた感のあるふるさと納税。
利用はしているけど、どうしてお得だと言われているのか、実はいまいちよく分かってない。
そんな、あなたにふるさと納税について、制度の内容や、利用する際の注意点についてお伝えします。
制度を理解すれば、より自分に合った活用法がみつかりますよ!
目次
まずはふるさと納税の仕組みをチェック!
ふるさと納税とは税金の使い道を自分で選べる制度
ふるさと納税とは、自分が応援したい都道府県・市区町村へ“寄付”ができる制度です。
各自治体のホームページやポータルサイトで自治体の考え方や寄付金の使い道を確認し、「寄附したい!」と思うところを自分で選びます。
寄付金の使い道は、環境保護や復興支援、教育・子育て関連、まちづくりなど多岐にわたります。
通常であれば、税金の使い道は、自分の意思を直接反映させることはできません。ふるさと納税は、自分で税金の使い道を選べる貴重な制度です。
お得に寄付するには上限額がある
ふるさと納税=お得な制度、という認識が広まっていますが、何がお得かというと、多くの自治体では寄付のお礼に地域の名産品を送ってくれることがお得なんです。
ふるさと納税は自己負担額2,000円を除いた寄付金が所得税・住民税から控除される仕組みになっています。
つまり、「2,000円を負担するだけで各地の名産品がもらえる!」ということで、お得な制度としての認識が広まりました(返礼品がない自治体や、災害支援の寄付などもあります)。
ただし、自己負担額2,000円を除いた額を全額控除されるためには、寄付ができる金額に上限が設定されています。
上限額を超えて寄付することは可能ですが、超えた分に対しての税額控除はないため、自己負担額は高くなります。
そのため、自己負担額を増やさずに控除を受けたい方にとっては、自分の上限額を確認することが必要です。
総務省のふるさと納税ポータルサイトには、寄付金控除額の計算シミュレーションができるエクセルシートが公開されています。また、「さとふる」や「ふるさとチョイス」といった各ふるさと納税ポータルサイトでもシミュレーションができます。
家族構成と給与収入のみの情報で、上限額の目安を簡易シミュレーションできたり、一覧表で確認できたりします。「簡単に知りたい!」という方にはとても便利です。
「もう少し詳細に確認したい!」という方は、「源泉徴収票」を用意し、そこに書かれた金額を指示通りに入力していくことで、よりご自身の実情にあった上限額をシミュレーションすることもできます。
ふるさと納税は、意外と簡単!手続きは3STEPで完了
ふるさと納税を利用するには大きくわけて3つのステップがあります。
【STEP1】寄付金の上限額を確認する
ふるさと納税で2,000円以上の寄付を行った場合、自己負担額2,000円を除いた全額が所得税・個人住民税から控除されます。その控除額の上限は、住民税のおおよそ2割程度です。
前述した通り、控除される金額は、収入や家族構成によって異なります。また、医療費控除や住宅ローン控除の有無によっても変わってくるので、ご自身の上限額をまず確認することが必要です。
【STEP2】寄付する自治体を選ぶ
「応援したい!(=寄付したい)」と思う自治体を探します。
寄付したい自治体へ問い合わせをし、郵送やFAXなどで申込書を送ることができます。また、自治体のホームページやふるさと納税ポータルサイトなどから、直接申し込むことができる自治体もあります。
【STEP3】確定申告orワンストップ特例制度を利用する
基本的には、ふるさと納税を行った翌年の3月15日までに、住所地を所轄する税務署で確定申告を行います。確定申告の際には、寄付を証明する書類(受領書)を添付する必要があります。
ただし、ワンストップ特例制度を利用できるのは、確定申告不要な給与所得者等で、ふるさと納税を行う自治体の数が5つ以内(寄付の回数ではなく自治体の数)の場合に限られます。
確定申告の場合は1月~12月までの1年間で寄付した自治体分をまとめて申告しますが、ワンストップ特例制度を利用する場合は、寄付の都度、各自治体に申請書を提出します。
もっと詳しく!利用しやすいワンストップ特例制度
ワンストップ特例制度を利用できるのは?
ワンストップ特例制度を利用するには2つの条件を満たしている必要があります。
1つ目は、ふるさと納税の寄付先が5自治体以内であることです。
あくまでふるさと納税を行った自治体の“数”で、“回数”ではありません。同じ年に、A市にふるさと納税を2回行っていたとしても、1自治体とカウントされます。
2つ目は、寄付を行った年に、ふるさと納税以外に確定申告をする必要がないことです。
元々、確定申告の必要がある個人事業主の方や給与収入2,000万円超の方は、この制度を利用することはできません。
確定申告とワンストップ特例制度の違いは?
確定申告とワンストップ特例制度の違いはどういった点にあるのでしょうか。
確定申告 | ワンストップ特例制度 | |
申告頻度 | 年に1回 | 寄付した都度 |
申告期限 | 翌年3月15日迄 | 翌年1月10日迄 |
申告先 | 税務署 | 各自治体 |
控除 | 所得税・住民税から控除 | 住民税から控除 |
まず、申告頻度は、確定申告の場合、1年分をまとめて申請するのに対して、ワンストップ特例制度は、ふるさと納税を行った都度申請します。
申告期限は確定申告が翌年3月15日迄、ワンストップ特例制度は翌年1月10日迄となります。
ワンストップ特例制度で申告するつもりだったのに、期限が過ぎてしまった場合には、確定申告をすれば寄付金控除を受けることができます。
その場合、すでにワンストップ特例制度の申請を出していたものも含めて、すべてを確定申告する必要があります。
申告先は、確定申告が住所地等を管轄している税務署なのに対し、ワンストップ特例制度は寄付した自治体それぞれに申告書を送付する必要があります。
そして、確定申告をした場合の控除は、一部が申告した年の所得税から控除(還付)され、残りは翌年度の住民税から控除されます。
一方、ワンストップ特例制度の場合は、所得税から控除はされません。その分も含めた控除額全額が、申告をした翌年度の住民税から控除されるのが大きな違いとなります。
手続きはどうしたらいい?
まずは、「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入します。
申請書は寄付を申し込んだときに自治体から送付してもらうか、ポータルサイトからダウンロードすることも可能です。
次に、個人番号(マイナンバー)・本人確認書類を用意します。
「マイナンバーカード」「通知カード」のどちらを持っているかによって、提出書類が異なるので確認が必要です。
準備ができたら、寄付をした自治体それぞれに申請書と必要書類を送付します。送付期限は翌年1月10日迄です。
ふるさと納税、こんな時はどうなるの?
ふるさと納税は専業主婦も利用できる?
専業主婦の場合、ふるさと納税を利用することはできますが、税制優遇を受けることはできないので、注意が必要です。
専業主婦である妻が、夫に代わって、妻名義で手続きをした場合、納める税金がないので、控除できるものがありません。
所得税・住民税の控除を希望する場合は、必ず所得税・住民税を納める納税者本人の名義で手続きを行う必要があります。
住宅ローン控除があってもできる?
住宅ローン控除とふるさと納税の併用は可能ですが、特に確定申告を利用する場合は注意が必要です。
住宅ローン控除(減税)は、控除額を所得税で控除し、所得税が0円になっても控除額が残っている場合、その額が住民税から控除されます(上限あり)。
ふるさと納税は、ワンストップ特例制度の場合は住民税のみ、確定申告の場合は所得税と住民税で、控除されます。
確定申告を行う場合、所得税から住宅ローン控除とふるさと納税の両方を控除することになるので注意が必要です。
ふるさと納税の所得税控除分を差し引いてから、住宅ローン控除分を差し引くことになります。住宅ローン控除の控除額がまだ残っている場合は、住民税で控除することはできますが、上限があるため、場合によっては、控除できたはずのものが控除しきれず、税制優遇のメリットが小さくなる可能性があります。
医療費控除があってもできる?
医療費控除とふるさと納税との併用は可能です。
ただし、医療費控除を行う場合は、必ず確定申告をする必要があります。仮に、ふるさと納税はワンストップ特例制度を利用するつもりでいたとしても、医療費控除の確定申告をすることで、ワンストップ特例制度は無効になってしまうので注意が必要です。
また、医療費控除の申告を行うと、ふるさと納税の控除上限額もそれに伴い減少します。
年末のかけこみ納税はここに気を付けよう!
ふるさと納税による控除の申込・支払い期限に要注意
その年の所得に対して控除を受けられるのは、受領証明書に記載されている受領日が1月1日から12月31日までのものに限られます。「申込日」ではなく、あくまで「受領日」で判断されるのです。
年内に申し込みを完了していても、入金確認などに時間がかかると、年内の寄付としては処理されない場合があります。特に、郵便振替や銀行振込で支払う場合は、自治体が入金を確認できるまでに時間がかかることもあるので、注意が必要です。
こういった事情を踏まえて、年内受付分とする期限を、支払い方法ごとに期限を設定している場合もあります。
クレジットカード払いの場合、決済が完了した日を「受領日」とする場合が多いため、12月31日23時59分まで申込を受け付けている自治体もあります。年末近くの申し込みにはクレジットカード払いを選ぶ方が安心でしょう。
自治体によっては、早いところで12月中旬には年内の受付を終了してしまうところもあるので、各自治体の受付期限をしっかり確認しておく必要があります。
ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用する場合は特に早めに
ワンストップ特例制度を利用するには、「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を寄付した自治体に翌年1月10日までに送付することが必要です。
本来であれば、寄付を申し込んだ際に申請書の送付を依頼することで、自治体から申請書が送られてきます。ただし、自治体から申請書が送られてくるのを待っていては、送付期限に間に合いそうにない場合、総務省や寄付した自治体のホームページなどから申請書をダウンロードして、郵送することもできます。
もしも、翌年1月10日までに申請書を提出できなかった場合は、翌年3月15日までに確定申告をすることで控除を受けることができます。
確定申告の手間を省きたい場合は、申請書を翌年1月10日までに送付する余裕を持って、申し込みましょう。
ふるさと納税により、一時的に手元の現金が減る
ふるさと納税による税金の控除は、翌年に支払うはずだった住民税が減額されます(確定申告の場合は、一部が今年の所得税から還付)。
つまり、所得税の還付分をのぞき、将来的に払うはずだったお金が減ることになるので、手元に現金が増えるわけではありません。
そのため、ふるさと納税を行う場合、一時的に手元のお金が減ることになります。
特に、年末にまとめてふるさと納税を行う場合などは、手元のお金が一気になくなります。
お得だからと寄付上限額ばかりに気を取られて、家計がまわらなくならないように注意が必要です。
ふるさと納税の分は、ちゃんと控除されている?終わったあともしっかりチェック!
ふるさと納税の申告方法によって、いつ・何が控除されるかは異なります。
確定申告をした場合、一部はその年の所得税から控除(還付)され、残りは翌年の住民税から控除されます。一方、ワンストップ特例制度を利用した場合は、全額が翌年の住民税から控除されます。
所得税の控除(還付)の場合は、指定した銀行口座等にお金が振り込まれるため、控除されたことが実感しやすいのではないでしょうか。
一方、住民税は、これから払うはずだった税金が減額されることになるので、所得税と比べると、控除された実感を持ちにくくなります。
だからこそ、いくら控除されているかを実際に確認することで、制度を利用した効果をより実感しやすくなるし、制度の仕組みをより深く理解できます。
住民税は「決定通知書」をチェック!
ふるさと納税を利用した翌年5~6月に、自営業の方はお住まいの市区町村から、会社員の方は勤め先経由で「住民税の税額決定通知書」が届きます(名称は多少異なる場合があります)。
引用:総務省「地方税分野の主な申告手続等における様式【税目別】」
個人住民税で使用する主な申告書等
給与所得等に係る特別徴収税額の決定・変更通知書(納税義務者用)・様式(3号別表) より一部引用
様式は市区町村によって異なり、なかには「寄付金税額控除◯◯◯円」といった記載をしてくれているところもあります。
そういった記載がない場合は、「住民税の税額決定通知書」の赤枠で囲んだ「市町村・税額控除額⑤」と「道府県・税額控除額⑤」の合計にふるさと納税の住民税控除が含まれます。
まずはこの合計額がふるさと納税で寄付した額から2,000円を引いた金額より多いことを確認しましょう。
「あれ?」と思ったときにはここをチェック!
税額控除額の合計額とふるさと納税で寄付した額から2,000円を引いた金額を比べて「あれ?おかしいな・・・」と思ったら、以下のポイントをチェックしてみましょう。
所得税控除(還付)を合算しているか?
確定申告で寄付の申告をしている場合、ふるさと納税をした年の所得税から控除(還付)された金額を忘れていませんか?
確定申告をした場合は、「住民税の税額決定通知書」で確認した額に所得税控除(還付)された額を合算した額と、ふるさと納税の寄付金から2,000円を引いた額とで比較します。
ふるさと納税以外の税額控除はないか?
「税額控除額」には、配当控除、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)なども含まれます。該当するものがある場合は、それらの控除額を差し引いた上で確認する必要があります。
調整控除の額は?
調整控除は、2007年に国から地方へ税源が移譲したことで、個人市民税・県民税と所得税の人的控除の差額が生じたため、その負担増を調整するための控除です。これはすべての人が対象となる税額控除です。
市町村民税と都道府県民税を合わせて、2,500円程度は少なくとも加算されています。
ご自身の調整控除額を詳しく知りたい方は、お住まいの市区町村のホームページや「住民税の税額決定通知書」の裏面などで計算式を確認して、算出してみてください。
ふるさと納税の寄附金税額控除しか税額控除を申告していない場合も、この調整控除分が上乗せされるため、想定していた金額より控除額は高くなるはずです。
細かい計算が必要なため、「住民税の税額決定通知書」の税額控除額とご自身の想定した額とをぴったり一致させることは難しいかもしれません。
想定額+α(調整控除分)であればOKとするか、正確な金額を確認したい場合は、お住まいの自治体にご確認ください。
想定していた額より少ない場合は、手続きに不備がなかったか確認をしてみましょう。
申告の手続きを忘れていた!どうしたらいい?
税額控除額が想定していた額より少なかった場合、以下のようなケースが考えられます。
- 確定申告をし忘れた
- ワンストップ特例制度の申請書を自治体に送付し忘れた
- ワンストップ特例制度の申請後、ふるさと納税分を含めずに確定申告をした
このような場合も、「還付申告」や「是正の請求手続き」を行うことで、期間内であれば、正しい内容で申告することができます。
確定申告書を提出する義務のない方が、給与等から源泉徴収された所得税額や予定納税をした所得税額が納め過ぎたていた場合、「還付申告」をすることで、納め過ぎた所得税の還付を受けることができます。
還付申告の期限は、確定申告期限とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間となります。
2019年に利用したふるさと納税について、会社員など確定申告をする必要がない方が還付・控除のために申告を行う場合、還付申告期間は2020年1月1日~2024年12月31日となります。
ふるさと納税について申告を忘れていたとしても、この期間であれば、「還付申告」ができるということです。
一方、確定申告をした後に申告内容の間違いがあった場合には、「是正の請求手続き」を行います。是正の請求ができる期間は、法定申告期限から5年以内です。
このように、申告を忘れていた場合や間違っていた場合も、正しい内容で申告をするチャンスがあるので、過去のものも諦めずに確認してみましょう。
ふるさと納税について理解を深めることは、税金の仕組みを知ることにもつながります。
税金の仕組みを知り、制度を上手に活用できれば、家計管理にも大いに役立ちます。
会社にお勤めの場合、各種手続きを会社が代わりに行ってくれることが多く、知らないままでもなんとかなるのが正直なところです。
ふるさと納税という少し身近な制度を積極的に利用することで、税金の知識を深めることができるのであれば、それこそ“お得な制度”と言えるのかもしれません。
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AFP/2級FP技能士/メンタルオーガナイザー
20代前半での父親の看取り介護を機に、“お金”と“心”の整え方を学ぶ。
現在は、お金のことが苦手だった自身の経験をもとに、子育て中の母目線での執筆活動や、働きたい女性に向けて家計管理の仕組みづくりのサポート、マネー講座の講師業を行っている。
ラーゴムデザイン 代表
長谷部敦子の「暮らしとお金のヒント」の他の記事を読みたい