人生100年時代の今だからこそ考えたい、親のこと、実家のこと【暮らしとお金のヒント】

暮らしとお金のヒント

先日、100歳以上の高齢者が過去最多の8万6510人になったというニュースがありました。医療技術の進歩などを背景に51年連続で100歳以上人口は増え続けています。長寿化の流れはとどまるところを知りません。

子育て中の20代30代の皆さんにとって、ご自身の老後をイメージするのはハードルが高いかもしれません。では実家のこと、親の現在や今後のこととなればいかがでしょう?もう少し具体的に思い描くことができるのではないでしょうか。

久しぶりの帰省でご両親と会った時を思い起こしてみましょう。気がかりやちょっとした違和感をもった方がいるかもしれません。あるいは、普段はあえて「親の老後について考えないようにしている」なんて方もいるのでは?

「敬老の日(2021年は9月20日)」にちなみ、今回コラムでは高齢の親のこと、やがて訪れる親亡き後の住まいの問題について考えるきっかけやサービスをまとめてみました。

 

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親の変化を「老い」と考えがちですが…

進学や就職を契機に親元を離れ、一人暮らしをはじめる。結婚して家を出て、新たな家庭を築き上げる。実家を出るタイミングは人それぞれですが、親離れをした後に実家に向かう頻度は少なくなりがちです。

一緒に生活していれば気がついたかもしれない、遠方に住む親の体調の変化。ちょっとした「ど忘れ」「老化現象のひとつかな?」など軽くとらえて発見が遅くなり、病院へ親を連れていったときには認知症が進んでいた……そんなケースもままあります。

「電話やSNSでよく連絡を取っているから、私は大丈夫!」そんな方でも油断はできません。コミュニケーションが十分とれていても、いざ実家に行ったら足の踏み場もないくらいの物の多さに心底驚いた、なんてことがあるからです。

たまにしか帰省できないからこそ、実家に行ったときはチャンスです!
親の言動や立ち居振る舞い、実家の状態をわが目で確認しておくことをおすすめします。

帰省時に確認したいことは「言葉」「行動」「家の中」の変化

まずは、ご両親との会話に注意を向けてみましょう。
「認知症が心配で……」などとは言わずに、さりげなく!がポイントです。

・最近あった出来事
・日常生活のアレコレ(食事や洗濯・掃除の状況/外出の有無など)
・昔から知っている親戚や友人知人のこと

昔のことから最近の暮らしぶりまで。
親にうるさがられない程度に折々タイミングを見計らって聞いてみましょう。

「昔のことはよく覚えているのに、最近のことがうすぼんやりしているようだ」、「人の名前が全然出てこなくなった」「普段からよく話す相手が最近亡くなって気落ちしているようだ」などが会話から読み取れたら、もっと注意してそのあたりをヒアリングしてみてください。

親の行動や家の中の「変化」にも目を向けてみましょう。たとえば、

・出かけるのが好きだったのに、家の外に出ているそぶりが薄い
・ヘアスタイルやファッションがどことなく変だ
・きれい好きだったはずが、台所や冷蔵庫の中が乱雑で汚れている
・庭仕事をしていないためか、雑草が目立ってきた

こんな変化が目に付いたら、気がかりや違和感を単なる「老化」で済ませて遅きに失したとならないよう体調や心境について確認してみることをおすすめします。

親子だからこそ「伝え方」が大事!

あなたが親の言動にいやな変化を感じても、言い方には十分な気配りが必要です!
ストレートに親に受診を勧めるのではなく、親のプライドを傷つけないような言い方を心がけつつ伝えてみてください。

たとえば「多分心配ないとは思うけど、普段離れていて私のほうが心配だから」「かかりつけの○○先生ならいろいろ聞けるから安心じゃない?私も一緒についていくよ」など、親の負担にならないように、大ごととはしない軽い感じで伝えてみてはいかが?

気の置けない、ずけずけとした物言いになりがちな親子関係。だからこそ、互いの人格を尊重する言葉を慎重に選び、伝えることが大事だと思います

非「健康寿命」の期間は案外長い!?

認知症に限らず、年齢を経るごとに健康な生活を送ることが難しくなるのはある意味でやむを得ません、自然の流れですね。

ところで、最近よく言われる言葉に「健康寿命」がありますが、どのような内容かご存じでしょうか?

「健康寿命とは」WHOが提唱した新しい指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間(厚生労働省「e-ヘルスネット」より一部抜粋)です。

ざっくり書くと、介助無しに自立して日常生活を営むことができる人生の時間が「健康寿命」ということ。では逆に、介護が必要な年数をどのように考えればよいのでしょうか?

男女で少し差がありますが、厚生労働省の資料によると、「平均寿命」と「健康寿命」の差は、男性が約9年、女性が約12年(令和2年版 厚生労働白書「図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移」)。介護が必要な年数は思ったよりも長いと言えそうです。

子育てとは違って終わりの見えない介護。
親の遠距離介護で職を辞す人が出てしまうのもわかるような気がします。親の言動に気がかりな点が増えたら、介護にかかわる国の制度や自治体の補助などについて調べることをおすすめします。

介護への備えとして知っておきたい要介護認定&介護保険

核家族化が進んだ現在は、介助する人手を身内に頼り切ることはできません。また仮に身内で解決できたとしても共倒れの危険性が高まりますので、おすすめは出来かねます。
そこで頼るべきは、介護保険制度ということになります。

ただ、ご自身や実家のご両親が元気なうちは縁のない制度ですので、内容を知らない方がほとんどなのではないでしょうか。ここでは深く触れませんが、介護保険制度を利用するには、要介護認定の申請・要介護度の認定が必要になります。審査から認定までひと月程度かかると言われていますので、早めに情報収集をしておくと安心ですね。

制度概要を知る取っ掛かりとして最適なのは、家にいながら調べられる自治体HPです。まず介護保険のしくみや利用方法がまとまった資料を入手することをおすすめします。
窓口までいかなくても自治体HPからPDFファイル形式でダウンロードできるところがあります。ご確認を!

そのうえで、ご両親の要介護認定の申請が必要かもと感じたら、帰省時に平日を含めるようにして実家の管轄の福祉課窓口に出向いて相談するとスムーズにやり取りができるのではないでしょうか。

こんな使い方もできます!「エンディングノート」

親の介護がいよいよ現実的になって子として思うことに「もっと早くに親に話を聞いておくのだった」という忸怩たる思いがあるようです。

「そこまでうちは切羽詰まっていないよ」という方も、状況が急展開しないとも限りませんよね。やはり親の話を聞いておけるうちに聞いたほうが安心だと筆者は思うのです。
とは言え、「今更改まって、何から聞けばいいんだ」となる方は少なくありません。そんな人におすすめなのがツールの活用です。

これからご紹介する「エンディングノート」を下敷きにして親に質問し、子の自分が書き残しておくと親のこれまでの生き方やし好、友人関係などを知ることができ、本人がどのような終末治療や最期を迎えたいのかの判断を迫られた時の大きな助けとなると思います。

「エンディングノート」は終活ツールとして近年知名度が上がってきましたので、ご存じの方もいるのでは?書店や文房具コーナーで書籍を見かける機会も増えてきました。

相続を念頭に置いた本格的な分厚い書籍ものではなく、むしろ親子のコミュニケーションのきっかけになるもの。親を誘って思い出を聞き取り子が書き込む。そんなライトなエンディングノートがおすすめです。

一例
『親ブック Diary(高橋佳子(著)/井田高志 (監修))』

考えてみてください。親について「どんな子ども時代だったのか?」「学生時代に熱中したものは?」「親しい友人は?(今も連絡を取っている?)」などは案外知らないし、親自身も話したがらないのではありませんか。

「終末期の医療をどう考えているのか?」「実家を、誰に、どのように相続させたいのか?」大事すぎて、話すと現実になりそうで…なかなか話せない。でも、本当に親の気持ちを聞かないままでいいんでしょうか。

ファイナンシャルプランナーの私が言うことではありませんが、親の加入保険や財産状況などの把握はもちろん大事ですが、親が話してくれたちょっとした思い出話のほうが看取りをするうえでより役立つかもしれません。
縁起でもないと考えず、聞けるうちに親の話を聞き、書き残しておいてはどうでしょうか。

こんなにバリエーションが増えた!?見守りサービス

介護までいかないまでも、足腰に不自由のある親を実家に残していると、普段の生活で転んだりしないか、トイレやお風呂で不測の事態が起きたらどうしようといった不安が出てきますよね。

実家が遠方の方に役立つ見守りサービス。探してみると結構手軽なものもあるんです。
ご参考までに2つ挙げますが、こうした新たなサービスは変化もめまぐるしいため、ときどきネット検索で探しておくことをおすすめします。

スマホの見守り
■みまもりサービス

電気の見守り
■見守り電気
■離れて暮らす親の見守りに「遠くても安心プラン」

まとめ

子育て世帯の家計相談を受けていると、教育費の次に老後の生活に不安を覚える方々が多いです。ただ、ご自身の老後の暮らしを具体的に、緻密に考えている方はまだまだ少数派といった印象があります。

ご自身のリタイア後のライフプランを考えていくうえで、親の老後~介護と看取り~相続は、「自分はどういう老後・最期を迎えたいのか」を考える重要なきっかけとなります。毎日の生活が精いっぱいで親のこと、実家のことを考える暇がないとお考えの方もいらっしゃるとは思いますが、親が元気でいるうちに「いろいろ話してみませんか?」

<参考サイト>
■読売新聞オンライン>ニュース>社会>100歳以上の高齢者、最多8万6510人…男性は初の1万人超え
■日本経済新聞>100歳以上、過去最多8万6510人 男性は初の1万人超え
■NHKトップ>NHK健康トップ>病名・症状から探す>認知症>認知症の症状>認知症の原因・初期症状セルフチェック 進行を遅らせるリハビリ
■厚生労働省>eヘルスネット>健康寿命
■厚生労働省>統計情報・白書>白書、年次報告書>令和2年版 厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える->本文掲載図表(一覧/バックデータ)>図表1-2-6 平均寿命と健康寿命の推移

 

海老原 政子
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト

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