「年末は家計の総決算!家計簿なしでここまでできる。通帳で振り返る一年」【暮らしとお金のヒント】

通帳で振り返る一年 暮らしとお金のヒント

待ち遠しかったボーナスシーズンの到来です。
街はクリスマス色に彩られ、否が応でも買い物欲が刺激されます。ショッピングサイトをのぞく時間が増えた人もいるかもしれませんね。一方、「今年は思ったよりお金が貯まらなかった」と少し不安になっている人もいるのではないでしょうか。

師走という名を出すまでもなく、12月は一年間の締めくくりの月です。我が家の家計について、「赤字か、黒字か?」を今のうちに確認しておくことをおすすめします。とはいえ、数字をまとめるのが苦手という人は少なくありません。つい忙しさに紛れて、家計の振り返りをしないまま新しい年を迎えがちです。

この記事では、数字アレルギーな方でも大丈夫、家計簿なしで簡単にできる年間の家計収支の調べ方をお伝えします。家計改善のきっかけとなりましたら嬉しいです。

 

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「いくら貯められたか?」を知るためにまず記帳!

あなたがもし「思ったよりお金が貯まらない」と考えているならば、そう判断する根拠を何かお持ちでしょうか。

預金残高がぜんぜん増えていないから?
世帯年収の割に家計のゆとりを感じられないから?
お給料日前は毎月やりくりで苦しいから?

「貯まらない」元凶はコレだった! と貯蓄が増えない原因を突き止めた人はそういないのではないでしょうか。私見ですが、「貯まらなかった」のつぶやきは、しっかり調べての言葉ではなく、なんとなく「貯まらない」と評する人が多い。そんな印象を受けます。あなたはいかがですか?

「今年、我が家はいくら貯めることができたのか?」
実は、これを調べることは簡単です。もちろん家計簿は要りません! 通帳があればよいのです。

預金通帳

通勤やお買い物帰りに、夫婦それぞれの持つすべての通帳を記帳して最後に足しあげるだけ! 本当にそれだけでOKです。

年間貯蓄額を調べるうってつけの方法ですが、こんな方は要注意!
それは、近くにATMがないなどの理由で、ずっと通帳記帳していない人です。
なぜなら、長期間通帳記帳をしないと「おまとめ記帳」となり、入出金の個々の取引金額がわからなくなってしまう可能性があるからなんです。

しかし、入出金データは消えてなくなったわけではありません。結論からお伝えすると、「おまとめ記帳」になっても大丈夫。個別の取引データは金融機関にきちんと保存されています。

おまとめ記帳の期間の取引データが欲しい方は、預金口座を開いた支店窓口に「取引明細がほしいのですが」と申し出ていただくと手に入れることができます。 記帳して「おまとめ記帳」になっていたら、早めに取引データの手配をして、今年一年の貯蓄額を調べられるように準備を整えましょう!

今年の家計収支を具体的に調べてみよう

さっそく年間収支を計算する手順をお伝えしましょう。

たとえば、夫はA銀行と郵便局2つの金融機関にそれぞれ普通預金口座を持っている。妻も同様にB銀行C銀行2つ通帳があり、そのうち1つは貯蓄用口座として引き出さずに定期預金で貯めていっている。こんなご家庭があったとします。

光熱費の引き落としがあったりして通帳の金額は日々変わっていきますので、まず基準を決めます。特段の事情がなければ、末日現在の預金残高が良いでしょう。
この例で、11月末日を調べてみると次の残高だったとします。

(2020年11月31日現在)
A銀行 450,000円
郵便局 150,000円
B銀行 300,000円
C銀行 200,000円 合計110万円……(1)

通帳の良いところはさかのぼって調べられることです。
1年前の2019年11月31日の預金残高も調べてみましょう!

(2019年11月31日現在)
A銀行 220,000円
郵便局 300,000円
B銀行 180,000円
C銀行 140,000円 合計84万円……(2)

今年の預金残高(1)から昨年の残高(2)を引いてみてください。
(1) -(2)で、26万円増えたことがわかります。
(社内預金など勤め先で貯蓄に相当する積立があれば、その分も加算します)

仮に、夫は勤め先の財形貯蓄制度を用いて毎月1万円ずつ、ボーナス月にプラス5万円を積み立てているとしましょう。すると年間で22万円増える計算です。この分も積み上げると、合計で48万円(3)がこの一年間に増えたことになります。

例示したこちらのご夫婦のケースでは、ボーナスは夫のみに支給されており2020年は夏と冬で手取り60万円(4)でした。この一年、慶弔費や家電買い替えなど一時支出はまったくなかったとすれば、貯められたお金(3)とボーナス年額(4)の差の12万円は家計赤字の補填ということになります。概算ですが、約1万円ずつ毎月の家計が赤字だったことが読み取れます。

以上が通帳から年間の貯蓄および毎月の家計収支を確認する手順です。

記帳済みの通帳さえあればほんの5分10分ほどで計算できると思うのですが、いかがでしょう。年末進行で忙しくなるとなかなかこうした振り返りは難しいもの。このコラムをお読みになったらさっそくやってみることをおすすめします。

預金通帳と現金

それほど貯蓄のない我が家、でもやっぱり気になる平均値

筆者の家計相談でよくたずねられることにさまざまな平均データがあります。「みなさん、どれくらい貯めていますか?」「3人世帯でこの食費は多すぎでしょうか?(平均は何円ほどでしょう)」こんな質問ですね。

平均値に対する筆者の答えはシンプルです。
「平均はあくまで平均値。ほとんど参考にはならないとお考えください」と。
それはどうしてでしょうか?

報道などで貧富の差、二極化が話題になることがありますが、貯蓄がない層とたくさんの金融資産を持つ富裕層に世の中が分かれていくと、平均値はどうなると思いますか。

極端な例ですが、あるところに100世帯の村がありました。10世帯の貯蓄合計が10億円、残り90世帯は概ね300万円前後で合計2億7000万円の貯蓄額だったとします。この村の世帯貯蓄の平均値は、12億7000万円÷100世帯=1270万円となりますが、村民の生活感覚からすると平均1270万円より90世帯のほうの貯蓄額である約300万円のほうがしっくりきますよね、きっと。

このように、母集団のブレが大きいと実感から外れた平均値をとる可能性があります。あまり参考にならないと書いたのは、こうしたことを鑑みてのこと。隣の芝生をそれほど気にしないでもよいと思いますよ。

とは言え、やっぱり、気になりますよね。

ということで、当コラムでは、もう少し参考になりそうな貯蓄データをご紹介させていただきます。

総務省の実施する家計調査の中に貯蓄や負債に関する項目があります(※1)。
調査結果の中に、世帯主の年代別の貯蓄データや年収毎にまとめたデータもあります。今回はこちらから一部抜粋してご紹介します。

(1)世帯主年齢と貯蓄現在高(2019年)
40才未満 691万円
40~49才 1,076万円
50~59才 1,704万円
60~69才 2,330万円
70才以上 2,253万円

(2)年間収入別の貯蓄現在高(2019年)
~329万円 1,334万円
329~458万円 1,636万円
458~625万円 1,522万円
625~863万円 1,715万円
863万円~ 2,567万円

出典
(1) ※1「表III-1-1 世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高の推移」より
(2) ※1「表III-2-1 年間収入五分位階級,貯蓄・負債の種類別貯蓄・負債現在高」より

60歳を定年とする会社が一定規模あると考えると、この年を境目に貯蓄現在高が2千万円を超えるのもうなずけます。

(2)の年間収入別の貯蓄現在高が高めに感じられるかもしれません。これは、現役世代も年金受給世代も年収額で集計されていることに起因するものと思われます。

いずれにしても、こうした数値を鵜呑みにして一喜一憂せず、我が家は我が家の貯蓄プランがある、といった気持ちで眺めることをおすすめします。

「手取り年収」から「年間貯蓄額」を引いた金額が「年間の生活費」

貯蓄に関する話題はこれくらいにして、せっかく年間貯蓄額を計算したのですから、計算値からさらに年間の生活費も求めてみましょう!

お金が育つイメージ
計算はこちらも簡単で、次の家計の方程式に当てはめて考えます。

収入-支出=貯蓄

このままだと分かりにくいかもしれませんが、これはどうでしょうか?

収入-貯蓄=支出

「手取り年収」と「年間貯蓄額」がわかると、「年間の生活費」がわかるというわけです(家電買い替えなど、この年の一時支出も含まれるため、ざっくりした数字にはなります)。

「手取り年収」の求め方ですが、まず給与明細から得た手取り額を足す、あるいは平均的な手取り額を12倍します。そこに夏冬のボーナス手取り額を加えることで出せます(共働き世帯は、ご夫婦それぞれの手取り額を合算します)。

「手取り年収」から先に求めた「年間貯蓄額」を引き「年間の生活費」を計算してみます。
結果はいかがでしょうか。

手取りの世帯年収から前半で計算した年間貯蓄額を差し引いて年間の生活費を計算すると「えっ、家ってこんなにお金がかかってるの?」と不思議な気持ちになる人もいます。
それはなぜでしょうか?

多かれ少なかれ、日々お金の出入りが発生しているのが日常です。
朝のコーヒーや同僚とのランチ代、スーパーやドラッグストアでの買い物など3日前のことを思い出すのも困難だという人もいるのではないでしょうか。意識せず、結構いろいろ買物をしているものです。給料日前にお金を引き出した後の預金残高を見て「あれ?これしかないの」なんて感じた経験があるのではないでしょうか。

さらに事情を複雑にしているのが多様化する決済方法です。
キャッシュレスな時代。現金主義の人はむしろ少数派ではないかと思います。筆者もクレジットカードに○○Pay、交通系電子マネーなど複数の決済方法を利用しています。当然、預金口座から引き落としされるタイミングも異なりますので、「今月、いくら使ったか」すぐに把握できなくても無理はありません。

とはいえ、使ったお金はいずれあなたの預金口座から引き落とされます。預金残高という数字は、時差はあるものの、正直でリアルな数字と言えるでしょう。

もし、導き出された「年間の生活費」にあなたが驚いたのだとすれば、生活費をやや過小評価していることになります。

見落とされがちな支出として、年払いや数年毎に発生する支出があります。
こうした費用は、まとめて紙に書き出し金額を一度確認してみることをおすすめします。
そのうえで年間に割り戻して年払い支出として整理してみると、多いと感じられた年間の生活費にも納得がいくかもしれません。

計算結果から「これはまずい!!」と思ったら、まず、レシートやクレジットの利用明細を捨てない、交通費は券売機の印字機能を利用して記録を残すなど意識的に支出の記録を残すようにしてみましょう。
貯まりゆくレシート・明細の枚数や1枚の長さなどから出ていったお金を実感するだけで、買い物行動に変化が生まれるかもしれません。

まとめ

1年間の家計収支を毎年追いかけていく癖をつけると、家計簿なしでも我が家の台所事情はある程度押さえられます。
とくに、通帳を使っての預金残高の推移チェックはオススメです。支出を細かく記録していかなくても「貯められる家計」なのか「赤字を生んでいる家計」なのかがはっきりわかるからです。

年末に向けてイベント支出が続きますが、その反動で「節約しよう!」「来年は貯めよう!」という気持ちになります。ただ、思いだけで節約をはじめても続く確率は低いと言わざるを得ません。
闇雲な節約や家計の現状に合わない無理な積立などに走る前に、通帳を突き合わせ、実際にどれくらい貯められているのか確認する。まずここからはじめてみませんか。

<参考サイト>
※1家計調査報告(貯蓄・負債編)-2019年(令和元年)平均結果-(二人以上の世帯)

海老原 政子
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト

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