ふるさと納税や医療費控除で確定申告する前に知っておきたい税のキホン【暮らしとお金のヒント】

暮らしとお金のヒント

緊急事態宣言の延長をうけて、2021年の確定申告はまる一月、4月15日まで申告・納付期限が延長されました。途中退職した人や、2020年にはじめて「ふるさと納税」をした人など確定申告を予定している人の中には、申告書類に取り組む時間ができたとホッとした人もいるかもしれませんね。

ただ、「まだ先だから」とのんびり構えているとあっという間に4月を迎えてしまいます。せめて、自分は今回確定申告をする必要があるか(申告したほうが得をするか)、確定申告にはどのような書類を集めておかなければいけないか等基本的な知識を持つに越したことはありません。

そこで今回は、そもそも確定申告とはどういうものなのか、基本事項から、その年の所得を確定するうえで欠かせない「所得控除」についてまとめてみました。
難しい用語はなるべく使わずに書いていますので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

そもそも確定申告とは

大多数のサラリーマン・OLにとって縁遠く、とっつきにくい印象があると思われる確定申告。そもそも確定申告はなぜ必要なのでしょうか?

確定申告とは、「1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とそれに対する所得税及び復興特別所得税の額を計算し、申告期限までに確定申告書を提出して、源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金などとの過不足を精算する手続(国税庁HPより引用)」のこと。

確定申告書類

あまり意識されませんが、会社員など源泉徴収されている人の税額は見込みの収入で計算されています。いわば概算金額なので人により本来納めるべき税額より多かったり少なかったりします。そこで、賞与や残業代などを含む給与年収が1円単位まで確定される年末(年明け)の給与支給時に精算する必要があるわけです。

会社にお勤めの人は、自分で税務署に行って確定申告をする代わりに、会社が年末調整を行います。年末調整によって納めるべき所得税(住民税)の計算や精算手続きが済むため、確定申告しないでよいわけです。
ではどういった人が確定申告すべきなのでしょうか?

確定申告しなければいけない人

会社で働いて給与をもらっている人の中にも確定申告が必要な人がいます。
たとえば、次のような方々です。

・複数の会社で給与収入を得ている人
(たとえばA社に週3回勤務し、B社に月末月初だけ勤務している人)
・給与収入が2000万円を超えている人
(一つの会社に勤務する人も対象です)
・不動産所得や事業所得など給与所得以外の所得がある人

会社勤めの人は、得られた収入からその仕事のためにかかった経費を差し引いた雑所得が20万円以下となる場合は「所得税」の確定申告は不要ですが、「住民税」の申告は必要です。雑所得20万円以下であれば手続きを取らなくてよいと勘違いしやすいため、この点に注意が必要ですね。

課税所得の勘違いとしてフリマで得た収入の扱いもあります。
家にあった家具や家電製品、衣服などをフリマで売買して思わぬ収入が得た場合、税金がかかるか気がかりですよね。基本的な考え方として、生活用品の売却による収益(生活用動産の譲渡による所得)は非課税となります。
ここまで読んで慌てた人がいたかもしれませんが、高額な宝飾品の売買や多量に仕入れて売るといった業とみなされる売買ではない限りほぼ大丈夫だと思います。どうぞご安心を。

確定申告したほうがいい人

年末調整は去年したし、確定申告の義務はないけれど、それでも確定申告したほうがお得なケースがあります。得する人とは、つまり、所得税の還付申告ができる人ですね。

どんな人かと言いますと、たとえば
・年の途中で退職した人
・家を買って住宅ローンを組んだ人
・自分や家族の中で医療費がたくさんかかった人
・ふるさと納税をしたのにワンストップ特例を利用しなかった人
・生命保険契約の満期金など一時金をもらった人(の一部)
などです。

年末調整でできる所得控除の申告をしなかった人が、あらためて確定申告書を提出することもできます。たとえば、生命保険料控除証明書が見つからず、年末調整で「生命保険料控除」を申告し忘れた人が、生命保険会社で証明書を再発行してもらってから確定申告をするなどです。

同様に、年末押し迫ってから赤ちゃんが生まれて扶養家族が増えた人も、「会社の申告期限が過ぎちゃったから」と諦めずにぜひ確定申告をしましょう。

実は、還付申告書の提出は、確定申告期間とは関係なく、申告しようとする年の翌年1月1日から5年間できることになっています。とは言え、余分に納めた所得税が還付されるだけでなく、還付申告をすることでその翌年の住民税が下がる可能性があります。
なるべく早く手続きを済ませたほうがよいでしょう。

確定申告書類

ふるさと納税や医療費控除。所得控除にも色々ある

年末調整のある会社員がわざわざ確定申告をするとしたら、ふるさと納税や医療費控除などの還付申告がほとんどのケースではないでしょうか。

還付申告によく出てくるものにどのような所得控除があるか、実際にいくつか挙げてみましょう。

・雑損控除(不動産や自家用車など資産に対する損害があったとき)
・医療費控除(自分や家族の医療費支出ががかさんだとき)
・生命保険料控除(生命保険保険料を支払っているとき)
・地震保険料控除(地震保険料を支払っているとき)
・寄附金控除(ふるさと納税をしたとき※ワンストップ特例を使わない場合)
・配偶者控除、配偶者特別控除
・扶養控除 など

また住宅ローン控除は所得控除ではなく税額控除ですが、こちらに挙げておきます。
・住宅借入金等特別控除
No.1213 住宅を新築又は新築住宅を購入した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 (nta.go.jp)

自宅で盗難があったり台風など災害で大きな被害を受けたときにする「雑損控除」など、その時は「困ったなぁ」となってもうっかり確定申告を忘れているかもしれません。

確定申告したほうがよいと思われる項目があれば、必要な書類など国税庁HPで情報収集して確認してみることをおすすめします。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で、今年の所得税の納付そのものが困難な方がいるかもしれません。
国税庁HPには、納税猶予制度の説明や納税の猶予申請書の雛形がダウンロードできるページがあります。早めにページを確認するようにしてくださいね。

確定申告書類

「収入」と「所得」の違い、課税所得を意識しよう

ところで、どうして還付申告すると税金が戻ってくるのでしょう?

所得税はそもそも、「収入」ではなく「所得」、正確には「課税所得」をもとに税額が計算されます。

会社員(給与所得者)の場合、
(給与所得の金額)=(給与等の収入金額)-(給与所得控除額)
「給与収入」からまず「給与所得」を出します。

その上で、「生命保険料控除」などの所得控除があれば、それらを「給与所得」から差し引いて、「課税所得」を算出するのです。

(課税所得の金額)=(給与所得額)-(所得控除額)

生命保険料控除などの所得控除として申請できるものを年末調整しないでいるとその分「課税所得」は増えてしまいます。

還付申告で、扶養控除や各種所得控除を申請することにより、その年の「課税所得」がより少なくなれば、所得税率が同じであっても納めるべき所得税額は少なくなります。
だから、納めすぎた所得税が還付されるというわけです。

「給与収入」と「給与所得」。
言葉の響きはやや似ていますが、似て非なり、結構な違いがあります。

また、仮に同じ金額の「給与所得」であっても、扶養家族の人数や所得控除の多寡で最終的な「課税所得」は変わります。確定申告をしない会社員の方もぜひ「所得」をもっと意識してみてはいかがでしょうか。

便利で使える!「確定申告書等作成コーナー」

所得の計算方法などをご紹介すると、大事だということはわかるけど、「正直、面倒くさい……」と思う人がきっといることと思います。

でも、大丈夫です。
細かな計算などはパソコンやスマホにまかせてしまいましょう!

たとえば、国税庁HPでは、給与収入を入れると給与所得を計算してくれるページも提供されています。
No.1410 給与所得控除|国税庁 (nta.go.jp)

確定申告書は、「確定申告書等作成コーナー」にアクセスしてパソコンやスマホで作成することが可能です。手計算では間違える可能性もありますが、「確定申告書等作成コーナー」であれば、数字を入力して出力すれば確定申告書がたちどころに作成できます。

ただ税の仕組みをある程度知らなければ、申告書の「どこに」「どの数字を」入力すればよいか見当もつきませんよね。

あなたのお給料からどのようにして所得税が計算されるのか。
年末調整の「生命保険料控除」申告がどのような形であなたの納付税額に影響してくるのか。
生きた税の知識を得るには、確定申告はうってつけと言えるでしょう。

今年は確定申告しない人も、来年は必要になるかもしれません。そのときに慌てないためにも、源泉徴収票などの書類片手に「確定申告書等作成コーナー」で実際に申告書を作ったり、動画配信を視聴してみてはいかがでしょうか。

まとめ

仕事柄、「確定申告書等作成コーナー」はよく閲覧しますが、入力部分だけでなくヘルプ部分や動画解説など年々充実してきている気がします。最近では、ふたばさんという税務相談チャットボットも現れました! AIを進んで取り入れているその姿勢に、感動すら覚えた次第です。

毎年、与党の税制改正大綱が発表される時期や確定申告シーズンになると、断片的な税の情報がニュースサイトや税理士事務所サイト等にたくさんアップされますが、一部だけを取りあげたこうした記事を読み間違った知識として取り込む人も少なくないのではと思っています。

税の知識は、社会人の必修科目と言えます。
折を見て大元の情報元である国税庁のタックスアンサーや「確定申告書等作成コーナー」を確認するようにしてくださいね。

<参考サイト>
■申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限を令和3年4月 15 日(木)まで延長します/国税庁
■確定申告特集/国税庁
■No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法/国税庁
■No.1100 所得控除のあらまし/国税庁
■新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ/国税庁
■No.1410 給与所得控除/国税庁
■国税庁 確定申告書等作成コーナー
■チャットボット(ふたば)に質問する/国税庁

海老原 政子
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト

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