もうすぐ4月。新年度を迎え、ご夫婦のどちらかが単身赴任でもうすぐ家を離れる、あるいは、お子様が大学入学を機にひとり暮らしをはじめるといったご家庭があるかもしれません。
新生活の準備をすすめるうえで心配なのが“先立つもの”、そう、お金ですよね。
新型コロナウイルスは、私たちの暮らしに大きな変化をもたらしました。将来の大きな出費に備える「転ばぬ先の杖」として、マネープランの重要性をあらためて感じた方もきっと少なくないはず。と同時に「マネープランって、どう考えればいいの?」と途方に暮れる方もいるように思います。
そこで今回は、将来の暮らしを支えるために必要不可欠なマネープランの考え方について、さらに後半ではより具体的に教育資金や住宅資金など目的別にまとめてみました。
「不安を不安のままにせず、その正体としっかり向き合う」ことこそが、マネープランづくりの第一歩です。今後の暮らしにかかるお金をご夫婦で考えるヒントとして当コラムがお役に立ちましたら嬉しいです。ぜひ最後までお付き合いください。
目次
今さら聞けない「人生の三大資金」とは
「人生の三大資金」という言葉をよく耳にするでしょう。
そもそも「資金」とはどういう意味なのでしょうか?
手近にあった国語辞典で調べてみたところ、【資金=事業を起こしたり、続けたりするために充当するお金。もとで。】と書かれていました。人生における三大事業として「教育資金(子の自立に必要な知識を得る事業)」、「住宅資金(家族が安心して暮らせる場づくり事業)」、「老後資金(退職後のくらしの基盤を作る事業)」があるというわけです。
カッコの中は筆者が銘打った“事業名”ですが、これらは大変な労力を要するもの。だからこそ失敗だけは避けたいですよね。とは言え、日々の家計をやりくりしながら3つの資金を捻出することは、家計管理と同様なかなかの難事業です。
「じゃあ、来月から○万円ずつ貯めていこう!」と宣言しただけで必要な資金を積み上げられないことは、あらためて書くまでもありません。みなさん、よくご存じだと思います。
では、どのようにマネープランを考えるべきなのでしょう。また、せっかく思い描いたマネープランが“絵に描いた餅”に終わらないために、何に気をつければよいのでしょうか。
コロナ禍のマネープランに必要なものは○○性
将来に備えてお金を貯めたいが、「いくら、いつまでに貯めればよいか?」。
なんとなく毎月○万円ずつ貯蓄しているが、「これだけで足りるのか?」。
先が見通しにくい現状。マネープランに悩めば悩むほど、動きが止まってしまいがちです。
では、一体なぜ悩んでしまうのでしょうか?
私見ではありますが、「一度決めたマネープランを崩してはならない」という思い込みと「でも、そう信じるには何か足りない、安心できない」という疑念のせめぎ合い……これが悩みの根底にあるのではないでしょうか。
絶対という言葉は、そうそう世の中にあるものではありません。
悩みや迷いはあって当然です。しかし、グルグルと思考の迷路にはまって行動が止まってしまっては貯まるものも貯まりません。
「マネープランは仮のもの」と気軽に見直す、柔軟性を持たせましょう!
そのうえで歩みを止めずコツコツと貯蓄を続けていく、これに尽きます。
家計状況や将来の夢や目標が変わればマネープランも変わるもの。
そう考えて、お子様の進学の節目やご夫婦の勤務の変化に合わせて軌道修正しながら目標に近づいていくことができるのではないでしょうか。
さて前置きが長くなってしまいましたが、後半では、具体的に資金の用途別に続けやすいマネープランの考え方をご紹介していきます。
なぜ教育費が思ったように貯められないのか?
お子様の誕生とともに、まず思い描くことが「この子の教育費を果たして準備できるかしら?」という不安ではないでしょうか。
でも、どうぞ安心してください。児童手当だけでも、すべて貯められれば0才から15才の間に200万円前後は必ず貯められますから(第1子、所得制限の対象外と仮定した場合)。
このように言われて安心できればいいのですが、実際はそうではありませんよね。「思ったように教育費が貯められない」という悩みをお持ちのご家庭が多いことも承知しています。
では、なぜ教育費が「思ったように」貯められないのか?
語弊を恐れずにまとめてしまうと、教育費が予定通り積み上がらない要因の多くは、お子様の成長とともに増えていく家計支出に対して、世帯手取り収入の伸びがそれほど高くならないからと言えます。
お子様が生まれた後は、おおむね幼稚園・保育園→小学校→中学校→高校と順調に進学していきます。元来、教育費は計画的に貯めやすく、マネープランは立てやすいのです。
ただ注意点があります。それは、学年によって教育支出にはかなりの波があること。
入学や卒業の年は、それ以外の学年よりも多くお金がかかりますが、この子育て世帯に特有の家計支出の波を考慮せず、一定額を18才まで貯蓄していくマネープランを当初思い描くご家庭が多いことが問題なのではと筆者は考えます。
教育費のマネープランの肝は、貯めどきと貯められない時期、2つに分けてメリハリのある貯蓄計画を練ることです。また、兄弟姉妹がいるご家庭では、対象のお子様一人だけのプランでなく、世帯全体での教育費積立の実行しやすさも考慮して考えるとよいでしょう。
たとえば共働き世帯であれば、貯め時である小学校時代に一気に半分を貯めてしまう。中学や高校在学中は、やりくりしがいのある家計改善の時期として、少額ずつでも貯蓄を続ける。お子様の進路先によっては、今後数年間は貯蓄をあきらめる、妻の働き方を変えるといった決断をするなど、波に合わせて長い目でマネープランを描きましょう。
住宅展示場に行く前に考えることがある!?
続いて、住宅資金のマネープランについて考えてみましょう。
まず住宅資金のための貯蓄計画を立てる前に最低限考えてほしいことが2つあります。
それは、「いつ頃家を買うのか」、「どのエリアに住みたいのか」ということです。
なぜなら、これらが決まれば、物件の概算予算と望ましい貯蓄ペースを推し量ることができるからです。
さらに言えば、今後の家族構成もしっかりご夫婦で話し合われることをおすすめします。間取りなど物件を選ぶ条件に関わることだからです。
逆に言えば、住宅資金の見通しを立てる前に、住宅展示場やモデルルームなどに足を運ぶことはNGです。なぜなら、「物件ありき」の住宅資金マネープランを描きやすくなるからです。
すべての方に当てはまるとは思いませんが、物件ありきのマネープランは、往々にして希望的観測による下駄をはかせたマネープランを生みやすいもの。「これくらいなら家賃並みだし、払っていけるだろう」とか、「間取りは小さいけれど、今のところ子どもを持つつもりはないし、大丈夫なんじゃないかな」とか、都合よく考えがちだからです。
筆者自身のことで恐縮ですが、DINKS想定で初めて購入した駅近マンションで長男を生んだ後にマンションを売却し、賃貸暮らしをしながら土地探しをしました。その後、子育てしやすい郊外に土地を買い、注文住宅を建てたという経験があります。
当時まったく畑違いの仕事をしていたとはいえ、「もっと長い目でライフプランを考えておけばよかった」と、今でも思うのです。
物件選びの重要性もさることながら、住宅資金のマネープランに失敗が許されない最たる理由は、住宅ローンです。
人生最大の買い物と言われるマイホーム。多くの方が金融機関からお金を借りて家を買います。しかも最長35年間もの長期にわたる住宅ローン返済が待っているのです。
住宅ローンを組むことを考えると、ある程度の頭金を用意して毎月返済額を妥当な金額に抑えられるよう、「いつまでに、頭金をいくら貯めるられるか」が初期のマネープランの肝になると思います。
戸建て物件は個別性が高く、タイミングも大切ではありますが、だからこそ、余裕のある資金繰りができるかが大事になってきます。
「借りられる」住宅ローンではなく、「安心して返せる」ローン。
そのためにも、資金準備は早いほうが選択肢を狭めずに済みます。
ご結婚後の早い段階で、ご家族のことや家のことをご夫婦で話し合い、考えをすり合わせておきましょう。もし家を買うか買わないか、今はまだ考えられないのなら、とりあえず「貯めておく」のもアリです。
条件に合致する物件が出てきたら、忘れずに住宅ローンシミュレーションを行います。
その際には、金利の数字や頭金の有無、繰り上げ返済を加味したマネープランを何通りも作ってみましょう!
金利上昇時の返済負担増を確認する、収入減少でも毎月のローン返済が滞る可能性はないだろうか、など机上であれこれイメージすることをおすすめします。
住宅資金マネープランにおいて、購入を決める際に必ず確認してほしいことがあります。
それは、大黒柱が定年をむかえる年に「住宅ローンの残債がいくらになるか」ということです。
晩婚世帯など、定年までに住宅ローンを完済することが難しい方もいると思いますが、定年時のローン残債を意識したマネープランがあるかないかは重要です。お子様が巣立った後の老後資金の積み上げに向けて、貯蓄モチベーションが維持しやすくなると思います。
住宅購入後もマネープランは必ず必要です。
定年前に住宅ローンを完済する計画で借り入れしている方もぜひ、ローンを借りっぱなしにせず節目で見直しましょう。場合によっては、貯蓄する替わりに住宅ローンの借り替えを実行することが資産運用のひとつになり得るからです。
まとめ
マネープランは専門家でなければ作れないものではありません。
むしろ、我が家の家計のエキスパートはあなた方ご夫婦のほうだと言えるでしょう。
ただ時間軸の長さからか、マネープラン作りが難航するケースもあるようです。
そんなときは、大きな紙に家族それぞれの年齢を並べて書いて、1年後、2年後、5年後……と紙面上にご家族全員がどんなふうに年を経ていくのか、その頃の暮らしぶりを思い描くところからはじめてみましょう。
「○年後には次男も中学校か……。それまでに社宅を出なければ!」
「定年まで○年、できれば60歳までに住宅ローンを完済したいなぁ」
など、教育資金や住宅資金のゴールの近さ遠さもリアルに想像できるのではないでしょうか。
マネープランという未来予想図を描くには、将来の家族像や望む暮らしぶり(ライフプラン)を思い描くことが早道です。
辛いだけの節約になりがちな家計やりくり。でも、その延長線上に夢のあるマネープランがあれば、気持ちの持ちようも変わる、そう思いませんか?
我が家みんなの笑顔を守るために、マネープラン作りはおすすめです。難しく考えず気軽に作ってみましょう。どんどん見直していきましょう。
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
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