秋から冬にかけ、新型コロナウイルスの新規感染者数はだいぶ落ち着いており、人流、経済の動きともに活発になってきています。オミクロン株の今後の国内動向は気になるものの、イルミネーションの華やかな街は賑わいをみせています。
とは言え、ボーナス支給前の今は家計がもっとも苦しいときでもあります。「ボーナスが出たらあれをしよう!これも買いたい!」と思いはめぐります。まとまった資金で住宅ローンの繰り上げ返済や自家用車の購入を考えている人もいるかもしれませんね。
今回コラムでは、冬のボーナス事情を垣間見られる調査データを紐解きながら、ボーナスで家計補てんしやすい人の特徴と改善のヒント、まとまった資金で繰り上げ返済をするなどボーナスの賢い活かし方などをまとめました。
目次
2021年冬のボーナスは増えた?減った?(連合の調査結果より)
日本労働組合総連合会(以下、連合)は、業種別一時金の調査結果を毎年夏と冬に公開しています。2021年11月公表データ(※)によると、冬ボーナス(年末一時金)の組合員1人あたりの加重平均は66万4,731円で、前年同時期実績と比べると約4万円増えたとのこと。今回の集計結果によると、業種すべてでプラスとなっています。
※第2回回答集計結果
調査結果をもう少し詳しく見ていきましょう。
金額ベースで高いのは、セラミックス連合(889,569円/組合員)やJEC連合(874,549円/組合員)、構成人数の多い製造業でも704,281円で前年比約2万6千円アップという回答を得ています。一方で、長引くコロナ禍が影を落とすサービス連合は、前年のようにゼロ回答ではなかったものの53,842円とたいへん厳しい状況が続いています。
みなさんのご家庭では、冬のボーナスはどれくらいになりそうでしょうか?
待ちに待ったボーナスが支給されたら、どのように使うご予定でしょうか?
ボーナスで赤字補てんした人は預金残高の増減を必ずチェック!
ボーナスと言えば……何が思い浮かびますか?
この言葉に続く単語として「赤字補てん」が脳裏をよぎった人は少なくないはずです。
少しずつ貯蓄を切り崩し、手取り給与で足りない生活費をまかなってきたご家庭にとって、冬のボーナスは家計収支のマイナスを取り戻す絶好の季節です。
家計相談の現場で、預金残高が6月と12月に2つの山を描く一方で、長期的なトレンドでは“右肩下がり”になるご家庭はそう珍しくありません。筆者は、赤字補てんが悪いとは言いませんが、補てん後の預金残高には注意が必要だと考えます。
なぜなら、補てんしてなお世帯の預金残高が減っていく状態は、収入が変わらぬ限り貯蓄ゼロになる危険性大だからです。今年の家計赤字が次年度の赤字を呼ぶ、まさにジリ貧状態!?何とかして解消したいところです。
ご本人も事情はよく分かっています。次のボーナスまでに家計収支をトントンに持っていきたいところだけれども「どこから手をつけたらいいかがわからない」、そういう方が少なくないのでは?
漠然と考えても行動につながらないため、まず、赤字幅が月にならして何万円程度なのか、この一年間の預金残高推移を調べてみましょう!
家計支出の気づかぬ大穴は、不定期に出ていくお金
たとえば、去年の冬ボーナス支給時点より、今年の世帯の預金残高が24万円減っていたとすれば、月にならして2万円ほど恒常的に家計が赤字の状態だと言えます。この分の家計支出を最低でも抑えたいですよね。
赤字補てんの度合いにより家計改善の緊急度は変わりますが、家計赤字が恒常化しているご家庭で支出が膨らむ要因に挙げられるのが、知らず知らずに使っているお金が多いこと!そして、手取り収入に占める固定費が高めなこと、この2つです。
不定期支出になりがちなお出かけや旅行費用がかさむご家庭であれば、使ったお金の9割程度で年間予算を組み、吟味してお金を使うようにする。夫婦の趣味費用がかさんでいるなら、思い切って夫婦それぞれの小遣いを定額化してみる。コンビニやランチ支出も積もり積もれば大金になります。立ち寄る回数を減らしたり、一回の上限額を設けるなどして支出を意識するようマイルールを設けてもいいかもしれません。
貯蓄の一定割合を投資に振り分け、時間を味方にしよう!
ボーナスで家計の赤字補てんをするご家庭がある一方で、リモートワークで時間的にも経済的にもゆとりが出たご家庭の話もうかがいます。ボーナスというまとまった資金、それ自身にしっかり働いてもらうため、資産運用をしたいとお考えの方もいるのではないでしょうか。
ここでは深く触れませんが、外貨建て個人年金保険に加入する、株式投資をはじめるなど元本が確保されない、リスク性資産を持つのであれば、前提条件として最低限の制度や株式投資に必要な知識を理解する、生活資金に影響のない金額で運用スタートする、この2点を守ることをおすすめします。
投資というとむやみに怖がる方がいますが、時間を味方につけて、少額ずつ、回数を分けて投資することでリスクは下げることはできます。子育て世帯がリタイアするまでにはたくさんの時間が残されています。仮に失敗してもその経験は糧になりますので、検討してみてはいかがでしょう。
なかでもおすすめは、税制優遇のある制度です。
たとえばNISAやiDeCoなどですよね。
「今はじめるなら、どっちがいい?」と疑問に思う人がいますが、老後資金に的を絞るのか、教育資金などその手前で必要になるお金なのかでどちらからやるべきか変わってくると思います。
それぞれどんな制度なのか?どんな人が制度を利用できるのか?また年間の上限金額は?など納得できるまで調べてくださいね。よく知らないままはじめてしまうと、後々お金が必要になったときに後悔するかもしれません。
ボーナスと住宅資金。繰り上げ返済や借り換えの注意点
資産運用しないまでも、同様の効果が得られることに借入金を減らす方法があります。住宅ローンを組んでいる人で、「投資はちょっと……」という方は、ボーナスを原資にして住宅ローンの繰り上げ返済やより条件のいい金融機関への借り換えを検討してもよいのではないでしょうか。
ただ、ライフプラン的に注意が必要な人もいます。
お子さまが2,3年先に大学に進学する世帯や世帯主が定年するまで残り5年を切っている、そのようなご家庭は、手元資金をいくら残すべきか、しっかりシミュレーションしましょう。不測の事態もある程度見込んだ、安心できる額の手元資金を確保したうえで住宅ローンを繰り上げ返済(借り換え)すると良いですね。
まとめ
現役世代であれば、今後かかる教育費やリタイア後の生活に備えて、世帯の金融資産は、去年の年末時点より増えていくのが望ましい姿です。ボーナスからほとんど貯蓄できていないご家庭はやはりなんらかの家計の見直しが必要です。
とは言え、見直すにも毎月家計の赤字幅がわからないと改善の糸口が見えません。年間の家計赤字額から割り戻して計算する方法であれば、家計簿は不要です。預金通帳から調べることができます。ボーナス支給でほっと一安心せずに去年と今年の預金残高の差に注目し、まずは家計収支をトントンに戻すことからはじめてみましょう!
まとまったお金で運用をはじめる人は、投資知識の収集と生活資金と運用資金の線引きを守ること。住宅ローンを組んでいる人は、運用せずに借入元金を減らすのも一案です。「すぐにボーナスの使途が決められないよ」という方は、いったん定期預金に資金移動して使いすぎを防ぐよう一工夫してみましょう。
まとまった資金が手に入る年末は、次のボーナス支給までに家計を整える好機です。
賢く“取らぬ狸の皮算用”をしましょう!
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
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