65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人、2025年には約675万人と5.4人に1人程度が認知症になると予測されています。(「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」より)
最近では、「認知症になったら相続はどうなってしまうのか」と、ご相談に来られる方も増えてきました。
認知症になってしまうと、本人の意思表示が必要となる行為(法律行為)が無効になってしまうため、遺言書が作成できなかったり、遺産分割協議ができなかったり、、、と様々な影響が出てしまいます。
今回は、被相続人(相続する側)および相続人(相続される側)が認知症になった場合にできなくなること、その対策についてお伝えいたします。
目次
《被相続人(相続する側)が認知症になった場合できなくなること》
①遺言書作成ができない
認知症の方が書いた遺言書は法律的には無効となります。そのため、認知症になると、遺言書が作成できません
②相続対策ができない
認知症になると、法律行為が無効となるため財産処分行為や新規契約、名義変更など(法律行為を前提とした対策)ができなくなります。
●不動産
節税対策、名義変更、価値増加のための運用の契約、物件売却(自宅含む)、管理や立替
●生命保険
契約、保険金請求、死亡保険金受取人変更、名義変更
●証券会社
売買取引指示
●生前贈与
など
③預金の管理、引出し、振込ができない
認知症になると、法律行為が無効となるため財産処分行為や新規契約、名義変更など(法律行為を前提とした対策)ができなくなります。
《相続人(相続受け取る側)が認知症になった場合にできなくなること》
①遺産分割協議ができない
遺産分割協議もすべての相続人と合意するための法律行為であるため、認知症になってしまうとできなくなってしまいます。また、遺産分割協議は相続人全員での合意が必要となるため、認知症の方を外して協議することもできません。
②相続放棄ができない
相続放棄とは、相続によりかえって負債を背負ってしまうような場合、相続を拒絶するための手続きです。これも法律行為であるため、認知症の方は行うことができません。
遺言書の作成以外の行為は、「成年後見人」という法定代理人を申し立てることにより代理人が行うことができます。(家庭裁判所に申立が必要になるため、費用と時間や労力が必要です)
ただし・・・
遺言書作成だけは本人が遺さなければ意味がありません。
ですので、この中での一番の問題は遺言書が作成できなくなることです。
◎認知症発症後の遺言書で揉めた事例 |
認知症の方が書いた遺言書であっても、誰かが効力を否定するまでは、事実上有効を前提に機能します。そのため、認知症の親と同居している子どもが、親の認知症に乗じて、その子どもに都合の良い内容の遺言書を書かせたのではないかと争うことがあります。
この場合、遺言書の効力を否定したい相続人が、裁判を起こして遺言書が無効であることを説明しなければなりません。すでに認知症本人は亡くなっている為、これは中々大変な作業です。
このようなトラブルを避けるためにも、遺言書だけはご両親がご健在のうちに書いてもらいましょう。
認知症になってしまったあとでは対策できることはかなり限られます。
健全な状態であれば、できる対策はたくさんあるため認知症になる前の段階で、専門家交えて今後について検討していただくのが得策です。
遺言書作成や相続対策などお困りの際は、ミラリーガルにお気軽にお問合せください
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