アロマテラピーを毎日に活用する方法を、ビューティアロマセラピストの高橋美穂子さんに教えていただくシリーズ。1回目は、新しい日常の冬を健やかに過ごすために、アロマテラピーを活用し感染症対策について、そして2回目は、アロマテラピーを使いながら睡眠の質を上げる方法をご紹介いただきました。
3回目のテーマは、入浴法です。昔から「冷えは万病のもと」と言われ、昨今では「温活」という言葉が注目されるようになりました。体を温めて血の巡りをよくすることは健康面だけではなく美容面でも非常に大切で、オフィスでは下半身が冷えないようひざ掛け用のブランケットを常備しておくことは当たり前、美意識の高い方は水などの飲み物もすべて常温で飲むようにしたり、さらに女優さんやモデルさんに関しては徹底して冷たいお料理を控えている方もいらっしゃいますね。
また近年では入浴で体を温めることの重要性が注目され始めたことでサウナやスーパー銭湯などの入浴施設の人気が高まり、withコロナ生活となった昨年は「リラックスしたい」という需要も急増して今まではシャワーで済ませていた人も湯船に浸かるようになったりと、自宅での入浴習慣も見直されるようになりました。
前回の記事では、感染症に負けない身体作りに欠かせない規則正しい生活習慣のひとつとして睡眠について紹介しましたが、入眠前の正しい入浴も睡眠環境を整える上で非常に大切です。今回はこの冬を元気に過ごすために睡眠の質を高めるための入浴法と、その効果を高めるのに役立つアロマテラピー活用法について紹介します。
目次
入浴とアロマテラピー
睡眠の質を高めるためには体温を上げることが大切です。また、入浴の目的は体を温めることに加えて心と体の緊張やこわばりを緩めることも大きな役割を担います。
ただし、41度以上の熱い湯船は交感神経を優位にしてしまうため、入眠前の入浴は40度程度がベスト。ぬるめのお湯でも10〜15分ほどの全身浴で体の芯までしっかりと温まります。就寝の90分前までには入浴を済ませておき、心身をほぐしてリラックス状態を高められたら入眠準備はバッチリです(睡眠時におすすめのアロマについては、2回目のコラムをご覧ください) 。
それでも寝つくまでに時間がかかったり、なかなか体の芯まで温まらないという時は入浴時にもアロマテラピーを取り入れてみてはいかがでしょうか。植物の香りが脳へダイレクトに刺激を与えて交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズにしてくれるだけでなく、老廃物の排泄やお肌の保湿など入浴がもたらす様々な作用に対して効果的にサポートすることができます。
今回は天然塩に精油を混ぜるだけで簡単に作ることができる「アロマバスソルト」のレシピと共に、天然塩と精油それぞれが持つ特長を活かした目的別の活用法について掘り下げて紹介していきます。
天然塩の基本知識:3つの天然塩の特長は?
入浴がもたらす心身への効果は、加温効果やリラックス効果に加え、体全体の血液循環を高めてその日に溜まった老廃物の排泄を促すデトックス効果、そして入浴剤に含まれるミネラルを吸収して肌に栄養と潤いを与えるスキンケア効果などがありますが、これらの目的に合わせて天然塩と精油を使うことでさらに入浴効果を高めてくれるのが「アロマバスソルト」です。天然塩は様々な種類がありそれぞれの特性も異なりますので、ここでは基本的な特長を簡潔にまとめています。
<しっかり体を温めたい時に>
「ヒマラヤ岩塩」
ヒマラヤ山脈で採掘される塩の化石。主成分は塩化ナトリウム。温泉と同じ天然ミネラルが豊富に含まれているのが特長で、抜群の発汗作用があります。特に冷え性の方にはピンク岩塩がおすすめです。
<デトックス効果を重視する時に>
「エプソムソルト」
ソルトという名前が付いていますが塩分は含まれておらず、精製した硫酸マグネシウムが主成分。代謝に関係する酵素を活性化させ、老廃物の排出を促します。死海の塩やヒマラヤ岩塩よりも水に溶けやすい特長があります。
<スキンケア効果を重視したい時に>
「死海の塩」
皮膚疾患の治療でも使われます。主成分は塩化ナトリウム。マグネシウムをはじめとしたミネラル分が豊富に含まれているのが特長。マグネシウムには、保湿作用やバリア機能を高める作用があります。
プロ直伝!タイプ別アロマレシピ
脳が覚醒してなかなか寝つけない時は、リラックスする香りをかぐことで副交感神経を優位にして興奮状態の脳を休息状態に切り替えることができます。
まずお試しいただきたい精油は、鎮静作用をもたらす基本の精油ブレンドとして2回目のコラム「快眠アロマ:基本編」でも紹介したラベンダーとオレンジです。さらに今回のコラムでは、脳が覚醒している原因にフォーカスした目的別の応用編を紹介します。当てはまる項目がありましたらラベンダーの代わりに以下の精油をチョイスしてみてください。
<考え事が頭から離れない時>
「クラリセージ」
クラリセージの花や葉から抽出した香り。他の精油に比べ、神経バランス回復作用や血圧降下作用のある酢酸リナリルの含有量が非常に高いのが特長です。そのため、鎮静作用が非常に高く集中力を減退させるため、勉強や仕事、車の運転中などの芳香浴には向きません。使うシーンを正しく選べば、感情的な緊張感から解放されたい時のレスキューアロマとして大いに役立ちます。
<精神状態が不安定な時>
「プチグレン」
ビターオレンジの木の葉や小枝から抽出した香り。クラリセージの次に副交感神経を優位にする酢酸リナリルの含有量が高くラベンダー以上の鎮静力をもたらすと言われています。抗不安作用のあるリナロールも多く含むため、気分が落ち込んだり自信を失いかけている時など神経疲労がピークの時にオススメです。ネガティブな感情を慰めて気持ちを新たにリフレッシュさせてくれるのに役立ちます。
<ホルモンバランスが乱れがちな時>
「ゼラニウム」
ゼラニウムの葉から抽出した香り。葉をクシュッと握るとバラに似た良い香りが漂うことからローズゼラニウムとも呼ばれます。特長となる化学成分はホルモン調節作用のあるシトロネロールやゲラニオール。これらはバラにも含まれている成分で、ホルモンのバイオリズムによっても好き嫌いが分かれます。とりわけ生理が始まる10日前くらいから良い香りと感じる方が多く、PMSなどの不快な症状にも役立ちます。
<心と体のこわばりが気になる時 >
「マージョラム」
マージョラムの花や葉から抽出した香り。副交感神経強壮作用のあるテルピネン-4-オールを豊富に含み、血管を拡張して血圧を下げることでリラックス効果を高めます。また、鬱滞除去作用や静脈強壮作用のあるγ-テルピネンやα-テルピネンを含むため、不安や緊張などのストレス起因による胃腸の不調や肩がパンパンに張ってしまっているなど心身のこわばりを緩めたい時に役立ちます。
もし菌やウイルスを体内に取り込んでしまっても潜伏期間中に感染症状を発症する人と発症しない人がいますよね。発症はせず抗体だけできることを不顕性感染・無症状感染とも言いますが、 これがまさに、免疫力が大きく関わってくるわけです。
免疫力を高めるためにも、そして心のゆとりや豊かさのある生活のためにも、ぜひ質の高い睡眠習慣のお供としてお役立てください。
実践!アロマバスソルト作り
基本のアロマバスソルトの作り方は同じです。上記の中から自分にぴったりの天然塩と精油をお選びください。天然塩は種類を混ぜてもOKですが、精油に関しては香りの個性を生かすためにもいずれか1種類にとどめておきましょう。さらにオレンジスイートとブレンドすることで香りの奥深さがぐっと増します。
<材料(1回分)>
お好みの天然塩 大さじ2
お好みの精油 2滴
オレンジスイート油 3滴
<作り方>
お好みの天然塩と精油をよく混ぜて完成です。
※ローズやラベンダー、カレンデュラなどお好みのドライハーブを混ぜていただくこともできます。
<使い方・注意事項>
・レシピは1回分ですが、まとめて作りたい場合は1週間分程度の量が理想です。
・完成したアロマバスソルトはガラス製の瓶などの密閉容器に入れて保管し、早めに使い切ってください。
・直射日光の当たる場所や高温多湿を避け、冷暗所に保管してください。
withコロナ時代のアロマテラピーについて3回にわたり紹介させていただきました。身の周りの生活空間を清潔に保つことはもちろん、睡眠や入浴など今まで当たり前だった生活習慣の中にこそ、心や体を健やかに保つためのヒントがたくさん詰まっています。さらにアロマテラピーを活用していただくことで、何気ない日常の中にこそ必要な心の豊かさや安らぎをもたらすお手伝いができれば幸いです。是非、皆さんのお気に入りの香りを見つけて彩り豊かな毎日をお過ごしください。
高橋美穂子
英国最高峰の国際アロマセラピスト資格(IFA/IFPA)を取得したビューティアロマセラピスト。ニールズヤードパートナーシップ認定講師として資格取得対応の講座を開講する他、教育機関での講演活動(東京学芸大学附属世田谷中学校、法政大学、他)、商業施設でのセミナー実績(伊勢丹新宿店、京王百貨店、メルセデスベンツ麻布AMGパフォーマンスセンター、他)、プロダクトの香り監修(花王 フレア フレグランス アーユス)、NHK・ラジオ・セラピスト専門誌などメディアへの出演も多数。ミスユニバースジャパン2014千葉大会審査員。
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