連載最終回:まずは両親が「自分を愛する」時間を作ろう!<子どもが「自分を愛する力」を育むために親ができることVol.4>

ママとベビーの手 【コラム】暮らしをワンランクアップ

このコラムでは、小学生2人の子育てをしながら、学童保育施設3校舎を運営し、一人ひとりの才能を引き出し・活かすためのワークショップ、自己肯定感アッププログラム、キャリア教育プログラムを提供している赤井友美さんに、子どもが「自分を愛する力」自己肯定感を育むために親ができるポイントを伺いご紹介しています。連載もこれで最終回!

第1回目は「自分を肯定する感覚」自己肯定感について、
第2回目は「自己理解が大事」であること、感情の価値を認知して、感情に関わる言葉がけについて、
第3回目は子どもたちが自分を愛する力を育むため、お母さんお父さん自身が自分を愛する力のための「共感」と「評価・判断を保留する」ということについて教えていただきました。

最終回の今回は連載のテーマである「自分を愛する」をテーマにお届けします。

 

目次

まずは大人から

行動遺伝学によると、自尊心・自己肯定感は遺伝4割、環境6割という割合で影響を受けるのだそうです。
とすると、家庭も含めた様々な「環境」により自尊心や自己肯定感は大きく変動するということですよね。

そして、これまでの様々な研修やワークショップでの経験から、やはり多くの人は「親からの影響を強く受けている」と私は思っています。

例えば、

  • 両親共働きで寂しかった。自分は家にいてあげたい(誰か家にいて欲しい)
  • 子育てをしていて、つい「自分の親はどうしていたかな?」と思い出したり、親に聞いてしまう。
  • 自分の実家の料理と比較して、相手の味付けに一言言ってしまい喧嘩した

等は子育ての中でも結婚後のお話でもよく聞く話です。
これらのことからも、一人一人には育った自分の家庭の文化や価値観が染み付いていることがわかるかと思います。

これは今、子育てをしている私たち大人にも同じ事が当てはまります。私たちが意識していなくても、家庭や学校などの価値観や文化は子ども達に確実に影響を与えています。

子どもは言葉も行動も(それは真似しなくても良いのに・・・というものも含めて)人のそばにいるだけでどんどん吸収していきます。
だからこそ、子どもが関わる家庭、学校、地域などのコミュニティにいる皆さんの自分を愛する力(自己肯定感)が子ども達に影響を与えますし、自分を愛する力が高い人が子ども達の周りに一杯いること、その背中を見て育つことが何よりの環境になります。

しかし、過去のデータからしても、自分を愛する力(自己肯定感)が低いのは日本の特徴でもあります。
では、私たち大人はどうしたら良いのでしょうか?

 

ダブルメッセージ

第2回で感情を認知する、知る
第3回で評価・判断を止めて、共感する
をお伝えしました。

しかし、子どもの話を共感的に聞きましょう!
「宿題しなさい!」等を言いたくなりますが評価判断は少しストップ!
と言われても
・私の話も聞いてもらっていないのに・・・
・私ばっかり頑張らないといけない
という気持が沸いてしまうこと、ありますよね。

兄弟がいて保育園お迎え以降は戦場、寝かしつけしてたら自分まで寝てしまいがっくり、ワンオペで誰にも頼れなくてしんどい・・・等、それどころじゃない!そんな余裕ない!!!ってありますよね。

これって何が起きているのでしょうか。
思考と感情と本当にある願いを分解してみましょう。

【思考・表現】私の話も聞いてもらっていないのに・・
【感情】悲しい、がっくり、やる気が起きない
【本当の願い】私の話も聞いて欲しい、もっと気持ちよくやりたい
例えばこんな分解ができそうです。
【思考・表現】私ばっかり頑張らないといけない
【感情】嫌!ムカつく!
【本当の願い】他の人にもやってほしい!手伝って欲しい!
人によって多少違うかもしれませんが、こんな人が多そうです。
(これは子どもが小さいときに私がよくおちいるパターンでした)

このどちらも【思考・表現】と【本当の願い】にズレがあるのに気が付かれましたか?
これをダブルメッセージといいます。周りに表現する言葉や行動が、本当の願いと違う状態です。

例えば、「なんでもないわよ!」って怒りながら吐き捨てるように言ってる人を人生の中で一度や二度見かけたことありますよね。

どう考えても「何かあったな」って周りも分かるのに「なんでもない」と言葉で言っています。これもダブルメッセージなのです。

本当の願いを言わないのは、我慢であったり、きっとやってくれないだろう・分かってもらえないだろうという諦めだったり、様々な理由があると思います。

しかし、このダブルメッセージ、周りにはどんな影響を与えているのか考えて見ましょう!

怒っている女性

ダブルメッセージを使う人と関わる際は「相手に気を使う能力」「空気を読む能力」が必要とされます。確かにAIではなく、人間だからこそできる事でもあります。
しかし、ダブルメッセージの難しさは、受け取り手にとっては「予測を間違ってしまうと相手の機嫌を損ねてしまう」リスクがあり、発信者にとっては「本当に分かり合える時が来ない可能性が高い」という事です。

なぜなら、一人一人の経験から作られる思考回路も価値観も違うので、全てを言わずして予測したり理解するのは難しく、長年連れ添ってきた家族や夫婦でないと本当に分かりあうのが難しいからです。

私たち日本人は給食、掃除はもちろん、運動会などの行事など多くのことを小学生の時から皆と一緒に行いますし、協調性を育むことを大事にしているため、「周りに迷惑をかけない」「頑張ることは素晴らしい」「多少の我慢は必要(多くを望まない」)等を当たり前に思っている事が多くなりがちです。
だからこそつい自分のことを置き去りにしてしまい、本当の願いを言わずに1人で頑張って溜めこんでしまいがちですが、それが「分かり合えない環境」を作り出している可能性があるのです。

ダブルメッセージは「空気を読む能力」は上がるのですが、理解しあえた!という体験よりも当たった!外れた!という体験を積み重ねてしまう可能性が高く、「相手と理解するには当たり外れがある。相性が大事」「相性が悪い人とは理解しあえない」といった経験にもなります。
これは、多様性やグローバルに活躍する子ども達にさせたい体験でしょうか?

自分にも子どもにも共感する、自分も相手も大事にする

自分の足で、道を切り開いていく人。
日本の協調性は活かしつつ、多様な文化や背景を持つ人とも分かり合い、協働できる人。
自分の力を活かし、チャレンジし、失敗してもまた次の山に自ら登ろうとする人。
そんな人に育って欲しいし、自分自身もそうありたいですよね。

自分を愛する力(自己肯定感)を育むために、まずはお母さん、お父さんが自分に意識を向ける、自分を愛する時間を持ってください。
余裕がなかったり、感情に飲まれてしまうと、自分の意識を向けるのではなく、発散にエネルギーが割かれています。

日々100%のエネルギーを使い切ってしまう、疲れ切ってしまうという方も多いと思います。自分のために飲み物を入れる、お風呂にいつもより少し長く入る等、なんでも構いません。頑張りすぎてしまう自分を労わる時間として「自分のための時間」を少しだけでも確保してください。

そこでできた余裕で、
・子どもの話を共感的理解で聞いてみる。出来なくっても感情だけでも共有してみる。
・自分自身が感情的に揺れたときも、自分の思考・表現と感情、本当の願いのどれかだけでも自分で意識してみる。1つずつ増やしていき自己理解・自己共感できるレベルを増やしていく。
・誰かと話をしている時は、ダブルメッセージになっていないかな?と意識して、本当の願いを伝えるようにする。
・無意識でやっていることに対し「これは続けたいこと?」「子どもたちに必要な力?」という質問を投げかけてみる。

毎日1回でも構いません。意識していけば誰でも必ずできるようになります。
本当は言いたいことや願いがあるのに「なんでもないわよ!」と言ってしまうのも思考の習慣として身についてしまったからです。
なので、逆も可能なのです。

筋トレもマラソンも諦めて1歩も1回もやらないのと、毎日1回でも1歩でもやるのでは、100日後大きな違いになります。
諦めずに、ぜひ続けてください。

もし自分で1人だと難しい、言葉よりも体感して学びたいという場合はワークショップに参加するのも良いかもしれません。

私の組織でも定期的に開催していますので、頑張らなくても気持ち良く他者と関われる感覚、感情に飲まれない感覚をぜひ体験してください。
そして、多くの子どもたちが「日本の大人って素敵だな」「自分を活かして、いろんなことにチャレンジする人がたくさんいる」って思う社会になったらいいなと思っています。

 

赤井友美
赤井友美
株式会社4smiles代表取締役、一般社団法人子供教育創造機構 理事.
東京都生まれ。(株)リクルートに新卒入社し、約12年間でIT部門、広報、人事などを経験。その途中、中学生向けキャリア教育プログラムを新規事業として起案・立ち上げを経験し、教育の世界に足を踏み入れる。その後、教育系NPO法人設立準備に参画し、初代理事に就任。2度の出産をきっかけに人材育成にますます興味が移り、2012年に一般社団法人子供教育創造機構を設立。翌年リクルートを退職し、東京都中央区に民間学童施設「キンダリーインターナショナル」を仲間と共に設立。
根底にある思いは「一人ひとりが自らの才能を生かして主体的に生きること」「才能の多様性が活かされる文化をコミュニティで育むこと」
現在は小学生2人の子育てをしながら、学童保育施設3校舎を運営し、一人ひとりの才能を引き出し・活かすためのワークショップ、自己肯定感アッププログラム、キャリア教育プログラムを、東京・九州・東北を行き来し、各地で提供している。
http://learningcreation.org/

■子どもが「自分を愛する力」を育むために親ができること をまとめて読む

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