9月1日は「防災の日」ですね。毎年この時期に、家の中の備蓄食料や非常用持ち出し袋の点検をするご家庭もあるのではないでしょうか。
私事ですが、数年前の台風上陸時に我が家は何日間もの停電に見舞われました。まさに「天災は忘れた頃にやってくる!?」。突然のことに、慌てて近くの家電ショップに懐中電灯や乾電池を買いに行き急場をしのいだ苦い経験があります。遅まきながら、想定しにくい災害だからこそ日頃の心がけと準備が大事だと実感した次第です。
このコラムでは、日常生活の中でできる災害への備えに加え、ファイナンシャル・プランナーならではの切り口で、今できる「災害への備え」をまとめてみました。ご参考になりましたら嬉しいです。
目次
災害時に備えて火災保険と自動車保険を点検しよう!
職業柄、「災害への備え」と聞いて最初に思い浮かぶのが「損害保険」です。中でも「火災保険」や「自動車保険」の特約には台風被害時に役立つものが複数ありますが、案外知らない方が多いなあという印象があります。
自動車保険は別として、一般的には火災保険の補償内容を契約時以降見直していない方が大多数ではないでしょうか。ご自宅や自家用車の万が一の際、証券を探したり約款を読むところから始まるなんて、考えてみるとぞっとする光景ですよね。
以下、災害時に確認すべき事項をまとめましたので、今のうちに加入する損害保険の補償内容を点検しておきましょう!
1)火災保険で確認すべき補償とは
住まいが突然住めなくなるリスクは経済的に大きな打撃となります。持ち家・賃貸を問わず何らかの火災保険に加入している方が大部分だと思います。
ただ、火災保険の多くは、さまざまな特約がセットされたパック商品のようなもの。あらかじめセットされているため、いざ台風被害を想定した場合に、どの補償が有効なのか迷う方もいることと思われます。
台風被害を具体的に考えてみましょう。
たとえば、河川の氾濫や高潮、土砂崩れ、竜巻で瓦屋根や窓ガラスが破損してしまった場合、火災保険の補償は受けられるのでしょうか?
台風被害に備えるためには、火災保険に「水災」や「風災」がセットされているかを確認します。
「水災」補償は、台風・暴風雨・豪雨などによる水害を補償するためのもの、一方「風災」補償は、原因となる台風・暴風雨・豪雨は同じですが、突風被害などを補償するためのものになります。
ご加入中の火災保険の保険証書や加入時のパンフレット、損害保険会社HPなどで、上記があなたの契約に付帯されているか今一度確認しておきましょう。
私見ですが、拝見させていただく損害保険の保険証書は、生命保険のそれより大くくりな記載しかないことが多い印象があります。手元の資料でご確認が難しい場合は、保険会社HPをのぞいてみることをおすすめします。
HPの中に補償される/されない事例を具体的にまとめて掲載している会社が複数あります。こうした事例をあらかじめ読んでおくと、自宅に被害が発生した際に素早く行動がとれると思います。
2)自動車保険に車両保険をつける?つけない?
突然の土砂崩れになすすべもなく、流されていく家屋や路上の車……。ショッキングな報道映像を目にした方も多いと思いますが、お仕事で車を使われる方など日常生活に車が欠かせないという方は、自家用車の万一の被害にも気を配る必要があるのではないでしょうか。
自家用車の損害に対する備えを考えるなら、「車両保険」です。
「いざとなれば、もう一台中古車ぐらいは買える」というご家庭であれば、保険料との兼ね合いで保障を選んでよいと思いますが、「車両保険は保険料が高いから」という先入観で切り捨てている方も見受けられます。
車両保険には一般型とエコノミー型の2種類があり、保険料の面を考慮しても選択肢として残すべきケースはあるように思います。情報収集するだけでもしておきませんか?
型の違いによる補償内容の違いは割愛させていただきますが、エコノミー型の車両保険は、河川洪水で機械式駐車場ごと水没する等の台風被害も保険金の支払い対象となります。新車購入時などにエコノミー型の車両保険をつける、免責金額を高くして一般型とするなど割安に車への補償を得る選択肢はあります。貯金の少ない人ほど契約更新時にしっかり見直すことをおすすめします。
3)生命保険の点検
東日本大震災にかかる保険金の支払い実績をまとめた資料(生命保険協会)によると、約505億円近くの災害死亡保険金が支払われたと書かれています。
命に代えられることではありませんが、生命保険による遺族保障はリスクヘッジとして多くの場合有効です。
普段から認識している方は数少ないようですが、病気に対する死亡保険金額と事故や災害で亡くなった場合の保険金額が異なる契約もあります。「災害割増特約」がご契約中の保険に含まれているかどうか、確認しておいてもよいかもしれません。
また、別居しているご両親などが実際にどのような保険に入っているか知らない方もいることと思います。本来、帰省時などに直接コミュニケーションできるほうが望ましいのですが、お金まわりの話は親子では難しい方も多いようです。
2021年7月に「生命保険契約紹介制度」が新設され、保険契約があるかご親族等が名寄せできるようになりました。この制度では、ご本人が亡くなった場合のみならず、認知判断能力が低下している場合に、法定相続人、法定代理人、3親等内の親族などからの照会を受け付けるそうです。「あのとき母さんが『保険があるから大丈夫なのよ』なんて言ってたかも」という方に、こうした制度はメリットがあるのではないでしょうか。
自然災害はいつ起きるか分かりません。日頃の意識と備えが重要ですね。
持ち歩きに便利な防災アイテム2つ
ここまで保険についてお話ししてきましたが、ここからは、日常生活の中での災害への備えについて考えていきましょう。
とは言っても、筆者は防災のスペシャリストというわけでうぁありませんので、外出先での被災に備えて、普段から持ち歩いておくとよい情報やアイテムをご紹介します。
いろいろありますが、実際に便利だなと感じたものは次の2つです。
1)お薬手帳アプリ
紙の手帳タイプは昔からありましたが、日常的に持ち歩くものではないですよね。ですが、スマホがこれだけ普及してくると、スマホ内で持ち歩けるようにしておくことが即災害への備えになることも。
「お薬手帳アプリ」をダウンロードして記録しておけば、診察時にお医者さんに正確に伝えることができます。服薬アラーム機能つきのアプリもあるので、サプリメントの服薬などに普段使いをして手元に情報を持っておくとよいのではないでしょうか。
2)モバイルバッテリーや電源ケーブル
スマホやノートPCなどに必要なものが電源です!
平時でも、カフェにコンセントなど電源があるところが増えています。モバイルバッテリーや電源ケーブルを通勤バッグに1セット入れておくだけでいざという時の安心感が違います。
そのほか、健康保険証など必要な情報をスマホで写真に撮って残しておくのも一案です。
防災用持ち出し袋を我が家に合わせてカスタマイズしよう!
小さな赤ちゃんのいる子育て世帯や障がいがあるご家族を抱えた世帯などに実践していただきたいことが、「非常用持ち出し袋」のカスタマイズです。
災害が起きた時に、飲料水や食料など成人健常者向けの支援物資は比較的入手しやすい傾向がありますが、一方で属人的に個別に必要な物資やアイテムはご自身で備えておく必要があります。
具体的に例示して考えていきましょう。
小さな赤ちゃんがいるご家庭では、粉ミルクや哺乳瓶、用具の消毒液、紙おむつなど特有の必要な生活用品があります。また、仮に手に障がいがあるご家庭であれば、持ち手に合わせたスプーンやフォークなどその方に必要なアイテムがあるのとないのでは避難生活時の生活しやすさが随分違ってくるのではないでしょうか。
「今、我が家が避難生活をするとしたら何が必要か?」
「手に入りにくく、彼(彼女)にとって重要な持ち出し品はあるか?」
こういったイメージで持ち出し袋や備蓄品を再点検してはいかがでしょうか。
備蓄品について補足です。
「ローリングストック」という言葉をご存知ですか?
「ローリングストック」とは、日常的に非常食を食べて、食べたら買い足すという行為を繰り返し、常に家庭に新しい非常食を備蓄する方法のこと(内閣府HPより)。
つまり、普段の食材が備蓄につながっているということ。特別な何かを別に用意するのではなく、日常の中で非常時への備えを意識して暮らすことの大切さをこの言葉は物語っているような気がします。
今日のお買い物にこの考えを取り入れて食材を選んでみてはいかがでしょう?
普段の生活のなかで災害に備えるために
日常生活の中でつい後回しにされがちな「災害への備え」。
長引くコロナ禍の中、それは災害だけにとどまりません。
何かあったときに役立つオールマイティーの最強カードは「現金」です。
普段から大金を持ち歩く必要はありませんが、全国どこからでもおろせる預金口座に、ある程度の預金=緊急予備資金をプールしておくのも一案です。
当座の生活資金がつくれそうにないのであれば、生活資金の融資を受けるためにどこへ行けばどんな融資が受けられ、必要な書類は何かなど、普段からお住まいの自治体HPでチェックしておくと、他の人に先んじて次の一手を打つことができます。情報も備えのひとつです。
防災の日を前に、ご家族で点検や話し合いをしてみてくださいね。
<参考サイト>
■火災保険の「水災」補償とは
■台風による損害 -自動車保険の自然災害ガイド-
■東日本大震災に係る保険金のお支払件数・金額について(平成25年3月末時点)
■生命保険契約照会制度の創設
■できることから始めよう!防災対策 第3回‐内閣府防災情報のページ
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
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