いきなりですが、お勤め先の年末調整手続きはもうお済みでしょうか?
ずぼらな筆者が人様のことを言えた義理ではありませんが、もしかしたら「生命保険料控除証明書」を慌てて探した方もいらっしゃるかもしれません。
今回コラムでは、「生命保険料控除証明書」にまつわるトピックスや今さら聞けない生命保険料控除の新旧制度の使い分けなどをまとめています。
目次
年末調整で使う「生命保険料控除証明書」。紛失したら再発行が可能です。
毎年の年末調整に合わせ、10月頃に保険会社から「生命保険料控除証明書」が郵送されます。大切な書類です。すぐ出せる場所に保管してほしいのですが、中にはどこにしまったかを失念し、「家中探しても証明書が出てこない!?」こんな方がいるかもしれません。
もしもあなたが証明書を見つけられなかったら、どうしますか?
「仕方ないなぁ」と、その年の年末調整は生命保険料控除を使わず、諦めてしまいますか?
「生命保険料控除証明書」が手元にないときは、保険会社に再発行を依頼できます。コールセンターに電話して依頼方法を確認する場合は、あらかじめ保険証券を手元に用意し、契約者番号をすぐ伝えられるようにしておくとスムーズですね。
また、年末調整の提出期日に証明書の到着が間に合わなかった場合でも、来年確定申告(還付申告)をして生命保険料控除の適用を受けることができます。今年分だけと言わず、過去5年間であれば、必要な証明書を用意してさかのぼっての申告が可能です。保険にずっと加入しているのに生命保険料控除を使っていなかった方は、この機に確定申告することを考えてみましょう。
「生命保険料控除証明書」が電子ファイル形式で再発行できるかも!?
「生命保険料控除証明書」に限らず、控除を証明する書類は必ず原本(紙)を提出しなければならない!そう思われている方がいるかもしれませんが、そうではありません。
控除証明書等の電子的交付が現在は認められているからです。
電子ファイル形式の証明書は、紙の証明書とは違い、手元に届くまでにそう長い時間かかりません。お勤め先の年末調整が電子化されている場合や、個人事業主などがe-Taxを利用して確定申告する場合はそのまま使えます。また、紙形式での提出が必要な場合も、ダウンロードした電子ファイルを活用してご自宅や会社のプリンターから証明書を印刷することができます。
保険会社の中には、インターネット上の契約者向けマイページから電子ファイルをダウンロードできる会社があります。急いで「生命保険料控除証明書」の再発行を受けたい場合は、まず保険会社HPを確認してみましょう。
新旧制度で異なる生命保険料控除。併用できるか?
生命保険料控除はずいぶん前からある、所得控除の中では“古株”の制度です。長いだけに制度の変遷があり、契約日によって新旧2つの制度に分けられています。具体的には、2011年12月31日以前に結んだ生命保険契約と2012年1月1日以降に締結したものでは、適用される計算式や控除額などが異なります。
いまさらな豆知識ですが、概要を簡単にまとめておきます。
<旧制度>
「一般生命保険料」と「個人年金保険料」が対象。
控除限度額:所得税10万円/住民税7万円
【所得税の生命保険料控除額(旧制度)】
(年間の支払保険料等・・・控除額)
25,000円以下・・・支払保険料等の全額
25,000円超 ~ 50,000円以下・・・支払保険料等 × 1/2 + 12,500円
50,000円超 ~ 100,000円以下 ・・支払保険料等 × 1/4 + 25,000円
100,000円超・・・一律 50,000円
※「一般生命保険料」「個人年金保険料」それぞれに上記計算式を適用
<新制度>
「一般生命保険料」、「個人年金保険料」、「介護医療保険料」が対象。
控除限度額:所得税12万円/住民税7万円
【所得税の生命保険料控除額(新制度)】
(年間の支払保険料等・・・控除額)
20,000円以下・・・支払保険料等の全額
20,000円超 ~ 40,000円以下・・・支払保険料等 × 1/2 + 10,000円
40,000円超 ~ 80,000円以下・・・支払保険料等 × 1/4 + 20,000円
80,000円超・・・一律 40,000円
※「一般生命保険料」「個人年金保険料」「介護医療保険料」それぞれに上記計算式を適用
ときどき勘違いしている方がいますが、新制度と旧制度の契約が両方ある場合、どちらか一方の制度だけしか選べないということはなく、それぞれの契約毎に新旧制度を適用(併用)できます。
たとえば、旧制度の個人年金保険と新制度の一般生命保険控除、新旧制度の一般生命保険料控除を使うといった具合です。注意点は、新旧併用の限度額と旧制度(新制度)だけ使った場合では控除額が変わるということ。
<例>
その年の新制度が適用される一般生命保険料の支払額は6万円。旧制度の支払額は10万円のケースで考えてみます。
1 新生命保険料だけ申告:3.5万円(6万円×1/4+20,000円)
2 旧生命保険料だけ申告:5万円(10万円×1/4+25,000円)
3 両方の適用を受ける:4万円(1+2=8.5万円→限度額=4万円のため)
このように、新制度の保険契約は入れずに旧制度分だけ記入して年末調整したほうが控除額はより高くなるケースがあります。複数の保険契約がある方はきちんと計算してから年末調整の書類を書くようにしましょう。
また、保険契約に含まれる特約保険料のうち生命保険料控除の対象外となる特約保険料分は計算に入れられません(ex.「傷害特約」)。実際に支払った保険料より小さくなる場合がありますので、保険会社の手引きを確認しながら書類に記載することをおすすめします。
途中解約した保険の「生命保険料控除証明書」が手元にある人もいるかもしれませんが、現在有効な保険契約でなくても、該当の年に保険料の支払いがあれば、生命保険料控除の対象となります。申告漏れのないようご注意くださいね。
年間の支払い保険料が気になったら、保険の見直しどきかも?
家計相談でも、ご家族それぞれに死亡保険や医療保険、がん保険契約がある人が珍しくありません。「生命保険料控除証明書」はほぼ契約の数だけ送られてきますから、それらを足し合わせ、「我が家はこんなに保険料を支払ってきたのか!」と支払い額に愕然とする人もいるのではないでしょうか。
自動車保険など短い年数で更新を重ねる損害保険とは異なり、俗に「人生で2番目に高い買い物」と呼ばれる生命保険。保険料を金融機関の自動引き落としで支払う人の中には、家族構成に変化があったにもかかわらず保障の見直しを逃しているケースもあるのではないでしょうか。
毎年決まって届く「生命保険料控除証明書」は、単に年末調整に必要な書類というだけでなく、今年一年間にどれくらいの保険料を支払ってきたかを知る資料と言えます。
結婚後に生命保険の見直しを一度もしていないご夫婦や、今年子どもが巣立ち夫婦二人の生活になった世帯などは「保障が適正ではない」、「今後無駄な固定支出となる可能性が高い」ため、この機に保険を見直すことをおすすめします。
<参考サイト>
■国税庁>税の情報・手続・用紙>税について調べる>所得税(確定申告書等作成コーナー)>控除証明書等の電子的交付について
■国税庁>法令等>質疑応答事例>所得税>旧生命保険料と新生命保険料の支払がある場合の生命保険料控除額
■SOMPOひまわり生命>よくあるご質問(Q&A)
■明治安田生命>ご契約のお客さま>「生命保険料控除制度」改正について >8. 生命保険料控除証明書の電子発行
■オリックス生命保険株式会社 ホーム >ご契約者さま > 生命保険料控除証明書に関するご案内 > 生命保険料控除制度について>適用限度額と計算方法
■第一生命>第一生命からのお知らせ>生命保険料控除証明書の(再)発行>「生命保険料控除制度」改正についてのお知らせ:各保険料控除枠の分類
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
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