本業以上の収入を副業で得ている人から、昼間会社勤めをして、休日や夜のプライベートでネットオークションなどでお小遣いを得ている人まで、「副業」と言っても内容や規模は人それぞれです。
確定申告時期が近づき、「私は確定申告をしなくちゃいけないのかな?」「いくら売り上げたら確定申告が必要なのか?」など気がかりを抱える人もいるかものではないでしょうか。
今回コラムでは、女性が副業として選びやすいフリマ収入やアフィリエイト収入を得たケースや曜日ごとに違う会社でパート勤務をしている人などを想定し、会社員になじみの薄い所得や確定申告の基礎知識をまとめました。思い当たることがある方だけでなく、これから働きだそうという方や副業をやりたい方も予備知識としてぜひご一読を!
目次
自分で稼いだお金だからこそ、不安や心配が生まれる!?
少し前までは、副業が禁止されている会社や、家業であるなど特別な事情がある方しか許可をとれない会社など、副業(兼業)しにくい職場環境の方が多数いらっしゃいました。もちろん、副業禁止の職場は現在もあると思いますが、社員が副業することに対する会社の風当たりは弱まりつつあると思われます。
みなさまのお勤め先はどのような状況でしょう?
新型コロナウイルスの影響下、テレワークをする会社員が増えています。インターネットを介して仕事をすることが普通になった今、女性が外に働きに出ず、在宅でPCやフリマアプリ等を使って自力でお金を稼ぐ人もいます。時間や場所に縛られずに多様な働き方ができることは、子育て世帯にはプラスに働くほうが多いのではないでしょうか。
ただフリーランスや自営業の場合、得た収入の多くが給与所得ではないと考えられます。このため「所得」という考え方や、一年間の所得を確定申告して所得税(住民税)を納めることに対して不安や心配があると思われます。
「収入」と「所得」の違いは何だろう?
そもそもの話、さまざまなところで目にする「収入」と「所得」。その違いって何でしょうか?
「収入」とは、事業でいえば「売上」にあたるものです。
「売上」イコール「所得」ではありません。ふつうはその「売上」をあげるために「経費」がある程度かかったはず。それを差し引いたものが「所得」となるのです。
物販で考えてみましょう。
1箱1,000円で仕入れた化粧品を3,000円で売った場合、「売上」は3,000円ですが、仮に100円の資材(段ボール、包装紙)に入れ、お客様宅まで500円の宅配料金がかかったとする。また、ネットショップ経由だったので、ネットショップの手数料が販売代金の1割200円かかりました。
この場合「所得」は、
販売代金3,000円-(仕入れ1,000円+資材100円+宅配料金500円+手数料200円)
=1,200円
ということになります。
給与も同様にして、「給与収入」と「給与所得」の2つがあります。
でも、自営業の方のように領収書をいちいち集めていませんよね。「経費」はどうなっているのでしょう?
領収書がなくても年末調整や確定申告が可能なのは、「年収○○万円のサラリーマンの場合、経費は○○円認めます」といった具合に、一定ルールで経費(「給与所得控除」)を計算する仕組みなのです。
不動産を買う時に住宅業者にきかれたかもしれませんが、額面収入(源泉徴収票の支払金額欄に書かれた金額のこと)、こちらが「給与収入」です。でも、手取り収入が「給与所得」となるわけではありませんよ。源泉徴収される前の「給与収入」から「給与所得控除」を差し引いた金額が「給与所得」となります。
手元に入ってくるお金の種別を考えて受け取る方はいないと思われますが、「給与所得」のほかに「雑所得」や「事業所得」、「不動産所得」、「配当所得」など所得には複数種類があります。
1月から12月までの収入を所得毎に分けて計算して足し合わせた合計所得金額に、一定の税率をかけて所得税(住民税)を計算し納付するための一連の書類仕事が確定申告になります。
副業が20万円以下なら確定申告が不要って、ホント?
「所得がいくらだったら、確定申告しなければいけないのか?」
ここですよね、実際にご自分の場合はどうなのかが気になるはずです!
具体的な働き方でみていったほうがわかりやすいため、架空の人物を例に説明することにします。
A子さんは、昼間は会社員です。週末や夜に副業でアフィリエイトやライティングをして報酬をもらっています。もう一人のB子さんはというと、曜日別に2つの会社を掛け持ちでパート勤めしています。俗にダブルワークをしているという意味でこの二人は同じように見えますが、実は所得の種類が違います。
A子さんは会社から「給与収入」を得つつ、「雑収入」として報酬や執筆料をもらっています。所得はそれぞれ「給与所得」と「雑所得(「事業所得」となる場合あり)」となります。B子さんの場合は、どちらも「給与収入」ですので所得としては1種類、「給与所得」のみです。
「会社員の場合、副業が20万円以下の人は確定申告しなくていいんだよ。」
友人などからそう教えてもらった人がいるかもしれませんが、この20万円って具体的にはどんな数字を差すのでしょう?わかりますか?
先ほどのA子さんの場合は、「雑所得」が20万円以下か20万円超かにより確定申告の要・不要が分かれます。ただし、所得となっていることに注意が必要です。
所得とは、おおざっぱに言うと、入ってきた「雑収入」からその収入を得るために使った経費をひき算できます。たとえば、現地に行って取材して原稿を書いたのだとしたら、自宅から取材先まで行く交通費やインタビュー録音のために買ったICレコーダー代金などの経費を引くことが可能です。
では、B子さんの場合はどうなるのでしょう?
B子さんは2社から給与をもらっていて、お給料の多い1社で年末調整をしてもう1社でしていないのだとすれば、そちらの会社から1月から12月の一年間で20万円を超える金額の給与をもらっていたとすれば、すなわち確定申告が必要になります。額面の「給与収入」で判断されるというわけです。
B子さんの所得が20万円を超えなくても注意が必要です。住民税は、ダブルワークの収入も合わせた金額で再計算、課税されるため、住民税の申告が必要になるからです。
確定申告をすれば、同時に住民税の申告もしたことになるため、心配な人はまず国税庁のHP(タックスアンサー)あるいは住所地を管轄する税務署の税務相談窓口で確認することをおすすめします。
フリマで稼いだお金は副業収入?それとも家計の臨時収入?
専業主婦の場合、当然ながら給与収入はありませんから副業でお金を稼いだ場合、それが何らかの所得としてカウントされるのかどうか、ここがスタート地点となります。
フリマアプリでよく家の中で不要になった家電や衣服など生活品の取引をしているC子さんがいます。無事に売買が成立し、手数料などを差し引いて1万円が手元に入ったとしたら、この1万円は副業の収入でしょうか?それとも家計の臨時収入として課税対象外の収入になるのでしょうか?
結論から言えば、日常生活で出た不用品を誰かに売った(譲渡した)場合は、所得税の課税対象外です。ただし、「生活がちょっと苦しいから、OL時代に手に入れた指輪を売った」など貴金属の場合は要注意です! 1個(組)の価額が30万円超の物の販売は、日常生活品とはみなされないため、利益幅によっては確定申告が必要になるかもしれません。
もう一つ、注意すべき点があります。
フリマアプリに限らず、実際のフリーマーケット出店者にも言えることですが、衣類や化粧品、生活雑貨などを、頻繁に、大量に取引している人の場合、「それって、家庭内の不用品売買じゃなく仕事、物販としてやっていますよね」と、税務署に【業】として判断される可能性が大きいです。業としてのフリマ収入であれば、たとえ売り物は日常生活品であっても、「雑所得」や「事業所得」として確定申告する必要が出てきます。
副業を事業所得として申告するメリット
ここまで、収入があり儲けが出ている副業についてまとめてきましたが、コロナ禍が長引く中で事業赤字が出ている副業をされている方もいるのではないでしょうか。儲けが出ない=所得がない事業をしっかり確定申告をするメリットがあることをご存じでしょうか。
ここでは詳しく書きませんが、事業所得がマイナスの場合、「所得がないから…」と考えず、青色申告で所得のマイナス分をしっかり確定申告することで事業損失(純損失)の繰り越しができます(翌年度以後3年間控除可)。事業所得がプラスであった場合も、「青色申告特別控除」という大きな金額の所得控除(最高65万円)があります。
複式簿記や貸借対照表・損益計算書等の提出、関連帳簿の保管など事務がたいへんかもしれませんが、会計ソフトを利用するなど敷居を下げる便利ツールが多々あります。試してみるのも一案です。
ただし、青色申告で申請するためにはあらかじめ手続きが必要です。新規開業者は業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。所轄の税務署相談窓口でご確認ください。
まとめ
ちょっとしたお小遣い稼ぎにフリマアプリを活用する人。元在籍会社から業務請負契約で仕事を受注しているフリーランスの人。インターネット上にお店を構えてドライフラワーブーケを売るネットショップオーナーなど、小さな規模で副業を行う人ほど税に対して苦手意識が強いのではないでしょうか。
税を理解するにあたり所得という考え方がわかると、確定申告の要不要の判断もしやすいですし、確定申告書の作成もスムーズです。ハードルが高めな確定申告ですが、複雑な事業内容でなければパソコンではなくスマホから作成できる範囲が拡がるなどデジタル化への対応も進み、必要書類が手元にあれば申告書作成はかなり簡単になっています。
住宅ローン減税しかり、税制は猫の目のように細かな変更が毎年あります。まずは情報収集からスタートしましょう!
令和3年の確定申告は令和4年2月16日からですが、初めて確定申告する方は、余裕をもって国税庁の「確定申告書等作成コーナー」をチェックすることをおすすめします。
※令和3年分の確定申告書等作成コーナーは、令和4年1月上旬公開予定
<参考>
■国税庁>税の情報・手続・用>紙税について調べる>タックスアンサー(よくある税の質問)>所得税>No.1400 給与所得
■国税庁>税の情報・手続・用>紙税について調べる>タックスアンサー(よくある税の質問)>所得税>所得の種類と課税のしくみ
■ホーム税の情報・手続・用紙>税について調べる>所得税(確定申告書等作成コーナー)>確定申告が必要な方
■auカブコム証券>コラム>会社員の副業、確定申告は必要?
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
(「千葉 家計相談」で検索)