年末にかけて注目度が高まるふるさと納税。仕組みがよくわからず利用を躊躇する方もいれば、毎年寄付を続けている方もいるでしょう。利用状況はさまざまですが、TVCMが放映されるなど認知度は徐々に上がってきたように思います。
このコラムでは、ふるさと納税の基礎知識をお伝えするとともに、全国の受け入れ状況やこの仕組みを使った興味深い自治体の取り組みをご紹介します。
ふるさと納税の上限額までゆとりがある方。今年こそふるさと納税を活用してみたい方は、ぜひご一読を!
目次
自治体を寄付で応援。お礼の品がもらえるふるさと納税
「ふるさと納税」という語から、自分の住む自治体ではなく故郷へ税金を納める制度なのでは、と勘違いする人がいるかもしれません(認知度は高いので、もうないかもしれませんが)。
「ふるさと納税」では、応援する自治体へ寄付を行います。寄付した人が所定の手続きを踏むことで、納めるべき所得税・住民税から寄付金額の一部が控除される仕組みで、【寄附金控除】を使います。
専業主婦やパート主婦など納税しない方にとってメリットはありませんが、高所得者、つまり高額納税者にとっては利用価値のある仕組みとなります。節税にはなりませんが、返礼品など自治体から送られる特典分だけ得をする制度と言えるでしょう。
「さとふる」「ふるさとチョイス」「楽天ふるさと納税」などポータルサイトも増えました。ポータルサイトでは、自分で自治体HPを見てまわる必要もなく、複数の自治体にひとつのサイトから寄付できます。中には、寄付額に応じて連携ポイントが還元されるサイトもあり、ネット通販並みの充実度と言えます。
ふるさと納税を利用しやすい環境は整ってきましたが、一点だけご注意を!
それは偽サイトが出回りやすいということ。筆者は見たことがないのですが、中には寄付金額の割引や値引きなどが謳われるサイトもあったようです。利用する前に必ず運営会社やアドレスバーのドメインをチェックするようにしてくださいね。
ワンストップ特例制度で確定申告不要に!
ふるさと納税制度が新設された当初は確定申告が必須でした。ところが、年末調整しか知らない多くの会社員にとって、確定申告は相当ハードルが高かったようです。筆者の周りでも「ふるさと納税してみたいけど確定申告がね……」と二の足を踏む方もいました。
なかなか浸透しないふるさと納税に業を煮やしたのか、平成27年度税制改正で「ふるさと納税ワンストップ特例制度」がつくられました。この特例を使うことで、確定申告なしで寄附金控除が使えるようになったのです。
ワンストップ特例制度とは、確定申告をしない代わりに、寄付した自治体へ「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」というものを提出します。自治体数に上限(1年度5団体以内)があるなどの制約はありますが、書類を書いて送り返すだけですのでかなりハードルが下がったのではないでしょうか。
余談になりますが、給与所得者が寄附金控除で確定申告する程度であれば、今やスマホで確定申告も可能でしょう、それほど難しい手続きではありません。書類を書く手間や返信切手代がもったいないとお感じの方は確定申告してみるのも一案です。
寄付したお金の使われ方を指定できるメリットも!
記事冒頭、「自治体を寄付で応援。お礼の品がもらえるふるさと納税」と書きましたが、返礼品以外のメリットというか意義がふるさと納税にはあります。それは、「自分の意思で自治体を選び、税の使いみちを選ぶことができる」ことです。
自治体によっては、ふるさと納税で集まった寄付金をどのような事業に使うか明記さている、どの事業に寄付するか選択できる自治体があります。子育て事業や、貧困家庭の就学支援などあなたが使ってほしい事業を指名し、税の使いみちに直接関与できるのです。
後述しますが、災害支援や自治体によるクラウドファンディングとしてふるさと納税が使われることもあります。ぜひポータルサイト等で各地の取り組みをご覧になってみてください。
ふるさと納税受入額は6年で17倍ほど急増!
ここまでメジャーになってくると全国のふるさと納税額も気になりますよね。
総務省資料によると、ふるさと納税の受入額は平成26年度は389億円弱でしたが、昨年度(令和2年度)は6,725億円と17倍を超える規模、かつ、過去最高金額となっています。
規模が拡大する中、自治体の設定した返礼品の種別や割合が問題視されたこともありました。泉佐野市が国を相手取り起こした訴訟、いわゆる「ふるさと納税訴訟」です。ただ報道をきっかけにふるさと納税した方がいたとすれば、言葉は悪いですが、ある種広報につながった事案と言えるかもしれません。
せっかくですので、都道府県別の受入額も見てみましょう。
同資料によると、北海道が受入額、受入件数ともに最多で、続いて鹿児島県、福岡県となっています。ご当地のおいしい返礼品狙いといったところでしょうか。筆者の家でも肉や魚介、餃子などをよく申し込んでいますので共感できる県が多いですね。
ふるさと納税返礼品。勝手ランキング!
グルメな話題が出たついでに、誠に勝手ながら筆者チョイスの返礼品をご紹介してみましょう。
第1位:北海道紋別市の「ホタテ」
おおきなホタテが驚きの1kgです。
以前、我が家でカニをいただいたことはありますが、こちらも一度食べてみたいです。
第2位:福岡県新宮町「イチゴ」
あの、あまおうが届きます!
大人も子どもも……イチゴ嫌いな人はあまりいないのでは?
第3位:新潟県胎内市「お米」
新潟県産コシヒカリ新米5kgが6カ月連続の定期便で届くとのこと。
実用的でありがたい、王道返礼品という気がします。
上記は、とあるポータルサイトからピックアップさせていただきましたが、ポータルサイトによって掲載される自治体は異なります。秋の夜長に探してみるのも楽しいのではないでしょうか。
自治体の面白い取り組み事例
続いてやや趣を変え、筆者が興味深く感じた2つの取り組みをご紹介します。
(1) 自治体が行うクラウドファンディング
ガバメントクラウドファンディング®と呼ばれることもあります。
またクラウドファンディングとは、資金調達したい人(団体)がインターネットなどを介して広く出資者を募ることを指し、「クラファン」と略して話す人もいます。
ふるさと納税の仕組みを使って資金(寄付金)を集める自治体が最近目に付くようになりました。たとえば、さいたま市立病院ドクターカー事業への支援を募る埼玉県さいたま市の事例もが挙げられます。また単独の自治体ではなく広域で連携し、新型コロナウイルス対策への支援金を募るプロジェクトもあります。気になる方は「自治体 クラウドファンディング」と検索してみてください。
(2) 災害支援
大規模災害により被災した地域の自治体は、現地支援や人命救助など優先すべきことが山積するため、資金がほしくてもふるさと納税の受付や返礼品発送にかける人的資源が残されていません。そうした事情を汲み取り、遠く離れた自治体が被災地域へのふるさと納税事務を肩代わりする事例がありました(熊本地震時の茨城県境町)。被災した自治体に変わってふるさと納税の受付をするので「(災害)代理寄付」と呼ばれています。こうした支援のやり方があることを知っていただけたらと思い、今回ご紹介させていただきました。
災害支援に活用されはじめた「ふるさと納税」。今夏の豪雨で被災した地域では現在も支援を募っています。気になる方は「災害支援 ふるさと納税」とネット検索してみてください。
まとめ
認知度が上がるにつれて動く金額も大きくなった「ふるさと納税」ですが、高額所得者の多い首都圏では、本来納められるべき税収が少なくなり、このまま進むと自治体の運営にも影響が出るのではといった危惧を抱く人も……。地元での子育てを思い、あえて「ふるさと納税はしないよ」と言った知人がおりますが、税の使いみちを考えての決断だなと感心しました。
ふるさと納税の恩恵がクローズアップされがちですが、お住まいの地域のインフラ運営や施策実施にどのような影響をもたらすのか、そうした意識も頭の片隅に残しておいていただければと思います。
<参考サイト>
■総務省 ふるさと納税ポータルサイト
■ふるさと納税に関する現況調査結果 (総務省)
■消費者庁>政策>政策一覧(消費者庁のしごと)>消費者政策>消費者被害防止に向けた注意喚起等>ふるさと納税の偽サイトに気を付けましょう!
■ふるさと納税訴訟、泉佐野市が逆転勝訴 最高裁判決(日本経済新聞記事)
■ふるさとチョイス
■さとふる
■楽天ふるさと納税
海老原 政子 (「おゆみの相談室」代表)
大学卒業後、SE、インテリアコーディネーターなど仕事に明け暮れる生活から一転、出産1年後に未経験ながら国内生保に再就職。営業活動するなかでライフプランの重要性に目覚める。ファイナンシャルプランナー資格を取得後に独立。現在、働くママのキャリアチェンジ前後の家計相談や保険の見直し、住宅ローン相談を行う。マネーセミナー講師やコラム執筆実績も多数。子育て中の主婦の目線を活かした家計改善アドバイスが好評。
<保有資格>
ファイナンシャルプランナー(二級FP技能士/AFP)、住宅ローンアドバイザー(住宅金融普及協会)
「エムプランニング」WEBサイト
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